治療と検査の最新医療情報トップページ 前立腺がん 早期発見のためのPSA検査 脊椎脊髄(せきついせきずい)疾患治療 バックナンバーはこちらから

特集記事: 2007年12月18日 [ 週刊朝日 2007年12月28日号 掲載 ]

信頼できる病院選び-消化器内視鏡専門医特集

寄稿者丹羽先生写真

 【特別寄稿】

日本消化器内視鏡学会 理事長
丹羽 寛文(にわ ひろふみ)

***

消化器内視鏡診療の現状

消化器には口より肛門に至る消化管[食道、胃、十二指腸、空・回腸(小腸)、結腸・直腸(大腸)]とそれに付属して消化、吸収に関連する肝、膵(すい)、胆道(胆のう、胆管、総胆管)などがある。消化器内視鏡には消化管の内面を観察する消化管内視鏡と、腹壁に小穴をあけて挿入し肝の表面などを観察する腹腔(ふくくう)鏡があるが、広く使われているのは消化管内視鏡で、通常消化器内視鏡とはこれを指す。

消化管内視鏡には、口から挿入し(鼻から挿入できる機種もある。現在の機種はスクリーニングには良いが、精密検査には若干の問題があり、治療には使えない)、食道、胃、十二指腸を観察する上部消化管内視鏡と肛門から挿入し直腸、結腸を対象とする下部消化管内視鏡がある。

上部、下部消化管内視鏡とも、現在では電子スコープが広く使われ、一部ではファイバースコープが使われている。電子スコープとは、超小型のテレビカメラで、臓器の内面をテレビ画像として観察するもので、本体先端にシリコンチップを土台とした電子の眼CCD(電荷結合素子を使用した固体撮像素子)が組み込まれている。この眼に光が当たるとチップ内の数十万の区画『画素』の中で光が電気信号に変わる。この電気信号を順序よく取り出して画面を作っていく。電子スコープは大勢の人が同時に同一画面を見ることが可能で、治療などの共同作業、学生の教育などに威力を発揮する。一方ファイバースコープはガラス線維の透光性を利用したもので、本体内に、細いガラス線維が数十万本束ねられ、その両端面が相対応するように配列され、一方の端面にレンズで結像させると、反対側の端面に画像が伝達される。これを拡大して観察する。また十二指腸内に挿入した十二指腸専用の内視鏡を通して極く細い特殊な内視鏡を使って胆道、膵(すい)管の検査も可能である。なおファイバースコープ、電子スコープの実用化前(昭和30年代から昭和45年ごろまで)には、本体先端に組み込んだ超小型のカメラで胃内面を30コマ程度撮影し、写真で診断する胃カメラが広く使われた。このため、胃カメラという用語が内視鏡の代名詞として今でもしばしば使われ、この名前を耳にされた方も多いと思う。

消化管内視鏡の主目的は胃潰瘍や胃がんなど各種疾患の診断であるが、最近ではさらに治療にも広く使われている。例えば早期の胃がん、食道がん、大腸がんなどでは、その多くが内視鏡的に切除可能で、一部の領域では外科手術に完全に取って代わっている。

診断にあたっては単に観察するだけでなく、色素を散布して細かい情報を得たり、拡大観察して表面の性状を詳しく検討したり、電子スコープでは特殊な方法で明るさの変化のある所を電気的に強調したり、血液中のヘモグロビンに近い色調を強調して僅かの発赤部を認識しやすくしたり(IHb色彩強調)、適性距離の画像で表面情報を詳しく把握できる適応型画像強調などの手法が使われ、最近では短い波長の光が粘膜表面の性状をよく反映することから、この波長域の光を使うNBIなどという特殊な方法も応用されるようになった。

また生検といって観察下に直接病変から一種のハサミを使って組織を採取し顕微鏡で検討する方法も広く行われている。もちろんこれらの方法を駆使して診断するには多数の症例の経験が必要で、診断ひいては治療方針の決定には内視鏡所見を詳細に把握、分析、検討し総合的に考えていく必要がある。さらに内視鏡的治療は高度の熟練を必要とし、その習得、教育が目下の急務になっている。

写真1

診断の一例をあげてみよう。写真1は早期胃がんで、上方からと右側から来る襞が突然切れたり、急に細くなったりしている。これに囲まれた浅い陥凹部が早期胃がんで、専門の医師はこのような所見を詳細に検討し、種々考慮して、がんと他疾患との鑑別を行い、がんであればその広がり、浸潤の深さ、リンパ節転移の有無などを判断していく。見てすぐに分かるというわけではなく、総合的に判断していくことが重要なのである。時に写真2のような潰瘍の治った跡(瘢痕)が、早期のがんに極めて紛らわしいことがしばしばある。専門医にはこのような判断が的確にできることが求められている。

写真2・3・4

治療の例を挙げてみよう。写真3はクリップを使った止血法で、出血部位を内視鏡的に挿入したクリップで挟み止血している所である。また写真4は大腸ポリープに対しスネアという器具を使って頭部のすぐ下の茎部を絞約し、高周波電流で切っている所である。また小さい早期胃がんであれば写真5に示す EMR(内視鏡的粘膜切除術)という方法で切除できる。左上は病変の所見、中は色素を掛けて表面の状況がよく判るようにした状態、右で高周波電流を用いて病変の周辺をマークし、下左で粘膜下に食塩水を注射し膨隆させ、スネアを掛け、中でポリープ切除に準じて切除し、右で切除した病変を回収している。回収した病変は顕微鏡標本で詳細に検討し、これで治療を終了してよいか、追加の切除が必要か否か検討していく。

写真5

さらに大きい病変に対しては、最近ではESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という手技が行われる。図6上段左でがん病変の周辺をマークし切除範囲を明確にし、ついでグリセオールという薬物を注射し、病変周囲を含めて膨隆させる。次に右のごとく高周波電流を用いて全周にわたって周辺にカットを入れ、直接観察下に下段左上のごとく高周波電流を利用したナイフで粘膜下層を剥離していき、下のごとく完全に遊離させ、右のように病変を含めた組織を摘除する。切除部は一時的に潰瘍を形成するがかなり早く治癒する。直径10cmにも及ぶ大きい病変の摘除も可能であるが、適応としてリンパ節にがんが飛び火していないことが必要で、術前に十分その状況を把握できるだけの高度な診断能力を必要とし、手技的にも複雑で高度の熟練が必要で摘除には長時間を要する。急速に普及している方法なのでその教育、訓練が当面の急務である。

写真6

日本消化器内視鏡学会の取り組みと専門医制度

日本消化器内視鏡学会は、内視鏡を扱う医師を会員とし、内視鏡機器の開発・改良、内視鏡を使った研究の発表、その促進、専門家としての教育、会員相互の連携、諸外国との交流を密にすることなどを目的とし、年2回の学会議、教育セミナーの開催、各地方支部主催の学会議、セミナーを定期的に行い、和文、英文誌を発行し、現在約3万人の会員を擁している。

本学会は昭和34年に日本胃カメラ学会として設立され、昭和36年に日本内視鏡学会、さらに昭和48年以来対象とする臓器の関連から日本消化器内視鏡学会と改名し現在に至っている。

特に力を入れているのが、高度な実力を持つ内視鏡専門医の養成で、学会時の教育プログラム、各種セミナーを通じて十分な専門教育を行い、さらに学会が認定した指導施設での教育、習練によって内視鏡専門医の養成に努め、高度の技能を有する方を消化器内視鏡専門医として認定し、インターネットでその氏名を公表している。

専門医の認定基準は、まず基礎となる内科学会、外科学会のいずれかの認定医の資格を持ち、5年以上継続して本学会の会員で、本学会の認定指導施設に於いて5年以上研修し、必修とした学会セミナーを受講し、かなりの数に及ぶ所定の上部消化管内視鏡検査、下部消化管内視鏡検査、治療内視鏡の件数を満たし、消化器内視鏡に関する十分な経験ならびに技能を持ち、さらに学会での研究発表、論文の発表もあって十分な実力があると判定された方のみを受験有資格者として、この方々を対象に毎年1回学術試験を行い、その合格者を消化器内視鏡専門医として認定している。従って消化器内視鏡専門医の資格を有する方は高度な知識、技能を持つ内視鏡医として公的に認められた方々で、毎年500人前後の方が専門医として認定されている。

もちろん認定後も一層の研鑽を義務付け、5年ごとの更新制度も設け、十分な実力の保持、涵養に努力している。

なお指導施設の認定は、教育に必要な各種内視鏡機器を十分備え、週間検査件数が十分あって、指導医1人以上が勤務、専門医が2人以上常勤して、十分な教育体制がとられ、さらに専属のコメディカルスタッフがおり、病理部門が独立しているかまたは依頼できる専門施設が決まっていることが条件となっている。なお指導医とは8年以上継続して本学会会員で、専門医資格取得後さらに3年以上指導施設またはこれに準じる施設において消化器内視鏡による診療、研究活動に従事し豊富な学識と実績を有すると認定された方々である。

丹羽 寛文 (にわ ひろふみ)
日本消化器内視鏡学会 理事長

1954年東京大学医学部卒。医学博士。 元防衛医科大学校副学校長、病院長、教授。
世界消化器内視鏡学会名誉理事長。 聖マリアンナ医科大学客員教授。

バックナンバーはこちら(医療新聞社サイトへ)

このコーナーの運営は、医療情報サイト「治療と検査の最新医療情報:全国病院・医院選び」(http://www.jmnn.jp)を運営する株式会社医療新聞社が行っています。

朝日新聞社は、このコーナーの運営、情報提供の内容、並びにこのコーナーの利用を通じて行われたお客様と各病医院の情報提供については、一切責任を負いません。

「治療と検査の最新医療情報:全国病院・医院選び」の各コーナーでは、株式会社医療新聞社が情報提供した医療機関情報を掲載しています。

株式会社医療新聞社は、サイト運営者として信頼性の高い情報を提供するよう努めていますが、各医療情報の内容について、保証するものではありません。本サイトご利用に際しては、利用者の皆様ご自身が、本サイト及び本サイトにおいて提供される情報やサービスのそれぞれの有用性等を判断し、ご自身の責任でご利用下さい。

「治療と検査の最新医療情報:全国病院・医院選び」の運営についての各種お問い合わせは、下記までお願いします。

株式会社医療新聞社
TEL 03-5337-2551