近年、大腸がんによる死亡数・死亡率はともに著しく増加しており、特に女性では、がんによる死亡原因のトップとなっている。そうした中、大腸がんの早期発見に力を発揮する大腸内視鏡検査が期待を集めている。
背景
厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計」によると、脳血管障害、虚血性心疾患と並ぶ3大生活習慣病の一つである悪性新生物”がん”は、1981年からわが国における死因の第1位となり、2004年には死亡数32万315人、人口10万対死亡率253.9となり現在ではわが国における総死亡の約3分の1を占めるに至っている。その中でも、食生活の欧米化のためか、男女とも胃がんは減少しているのに大腸(結腸および直腸)がんの増加が著しく、1980年には人口10万対死亡率が男性17.5(胃がん69.9)、女性12.2(34.1)であったのに対し、2003年には男性22.8(34.5)、女性13.5(13.2)と、特に女性では全”がん死”のトップに躍り出ている。
便潜血テストによる大腸がん検診
以上のような状況のなかで、便潜血テストをスクリーニング法とする大腸がん検診(以下便潜血検診)が、国の公的事業として推進されている。わが国では胃がん、子宮がん、乳がんなどさまざまな”がん検診”が行われているが、便潜血検診は海外におけるいくつかの大規模な無作為比較対照試験によって、最も信頼性の高いがん検診の一つと高い評価を受けている。
便潜血テストは受診者にとって全く苦痛がなく安全な検査法であるが、がんがあっても陽性にならない場合(偽陰性=見落とし)が少なくないのが最大の問題点である。
便潜血テスト偽陰性大腸がん
わが国の大腸がん検診において使用される便潜血テストの方法は、最も診断性能が高いとされてきた、ヒトの血だけに特異的に反応する免疫学的方法である。開発された当初は理想の大腸がん検診法と宣伝された免疫学的方法であるが、経験を重ねるうちに免疫学的方法でも陽性にならない、言葉を代えれば”出血していない”大腸がんの存在が明らかになってきた。
そうした中、我々は免疫学的便潜血テストの限界を明らかにするために、後で詳しく述べる内視鏡検診によって発見された大腸がんのうち、内視鏡と便潜血テストが同じ日に実施された247例を対象に、免疫学的方法のひとつであるRPHA(逆受身赤血球凝集)法の診断性能を検討した。
結果は、進行がんの可能性が高い、病巣の最大径が2cm以上の症例でもRPHA陽性率は67%(68/102)、1cmから2cmでは26%(28/109)、内視鏡的治療の対象となる1cm未満の大腸がんでは、わずか3%(1/36)に過ぎなかった。
我々の大腸内視鏡検診
大腸がんによる死亡減少効果が確かめられている便潜血検診であるが、内視鏡的治療の対象となるような小さな大腸がんを発見するためには、力不足と言わざるを得ない。小さな大腸がんを発見するのに最も有力な検査法は、現時点では内視鏡である。以前は受診者の苦痛が極めて大きく、検診に使うなど考えられなかった大腸内視鏡であるが、検査技術の改良および細径スコープの普及、硬度可変スコープの出現など機器の進歩によって、熟練した医師が実施すれば、一般健常人対象の検診に使っても支障のないほど苦痛の小さい検査法となった。
我々の施設では1983年4月から、理想の大腸がん検診を目指して、人間ドック受診者を対象に直腸から盲腸まで内視鏡で観察する大腸内視鏡検診を開始した。当初は、あまりにも非常識と各方面から危惧された我々の大腸内視鏡検診であったが、大腸がんの増加と歩調を合わせるように年々受診者が増加して、2007年4月をもってついに25年目に突入、2007年3月までの延べ受診者数は11万8453人に達した。発見された大腸腫瘍は、2003年3月までの20年間の集計ではポリープ(腺腫)1万3883例(発見率14.85%)、がんは早期219例(0.23%、平均年齢55.8歳、36~78歳)、進行59例(0.06%、平均年齢59.5歳、38~88歳)であった。
大腸がん検診の先進国である欧米では、例えば英国やドイツでは5年に一度、米国では少なくとも一生に一度、無症状者の大腸内視鏡受診を推奨していると聞く。以上の理由により、大腸がんの好発年齢といえる60歳前後の方は、たとえ症状がなくても是非一度、大腸内視鏡検診を受診していただきたい。
光島 徹
医療法人鉄蕉会幕張事業部 部長
フランクスクリニック 院長
1974年熊本大学医学部卒業。同年同大学放射線科入局。76年国立がんセンターレジデント(放射線科)。83年亀田総合病院消化器内科部長、健康管理センター長。91年同幕張事業部統括院長。2002年同幕張事業部長。










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