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特集記事: 2008年1月31日 [ 「いい病院2008」 1月31日 掲載 ]

内視鏡新時代。小腸の検査・治療に新しい可能性「ダブルバルーン小腸内視鏡検査」早期に発見できれば、その場で切らずに治療
 
山本 博徳先生写真

【特別寄稿】

自治医科大学
内科学講座消化器内科学部門 教授

山本 博徳

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小腸は、口や肛門から遠い上に全長が6mと長いため、入口から出口まで直接観察することができなかったが、「ダブルバルーン内視鏡」がそれを可能にした。その仕組みや検査の特長を紹介する。

開発のきっかけは 「虚しさ」

2つのバルーンを持つダブルバルーン内視鏡(DBE)は、開発までに約5年を要して2003年秋から実用化、現在では全国の100を超える医療施設で活用されている。

このスコープを考え始めたのは1997年。プッシュ式の小腸内視鏡検査に立ち会ったときに「なんと虚しい検査なんだろう」というやりきれない思いを抱いたのがきっかけである。長時間の検査、一生懸命に病変を探そうとするドクター、それに耐える患者の姿。検査方法の限界や非合理性を感じ、「なんとかできないか」という強い思いから研究を始めた。

プッシュ式と呼ばれる検査は、長いスコープ(内視鏡)を行けるところまで押し込んでいくやり方で、この方法だと十二指腸の先せいぜい50cmから1mまで入るのが限界。プッシュ式自体は手軽で有用性の高い検査である。しかし、ドクターはその先に病変があると思えば探そうとがんばるから無理をする。無理がかかれば患者さんは痛くてつらい思いをするというわけだ。無理をしながら1~2時間粘ってもお互いに満足のいく結果が得られないでいる状況、それがとても虚しかった。

小腸は6mなのにスコープは2m

発想の原点は「小腸を縮める」こと。腸はアコーディオンのように伸びたり縮んだりする臓器である。伸ばしてしまうことに問題があるわけで、伸ばさないようにすれば進んでいくはずだと考えた。

当時の内視鏡挿入は”腸を直線化すること”が常識だったが、その常識にこだわる必要があるのかと疑問を持った。腸は曲がったままでいい、縮めてやれば先に進めるのではないかと。小腸は5~6mの長さを持っているが、1.4mくらいまでは縮めても大丈夫だという確信があった。問題はどうやって縮めてどう奥へ進めていくかという点であった。

この課題を解決するために考え出されたのが2つのバルーンとオーバーチューブである。オーバーチューブ(透明なホース)の中にスコープを入れ、それぞれの先端についているバルーンを相互に膨らませて、小腸が動かないように固定したり、引っ張って腸を縮めたりしながら、少しずつ奥へ奥へと進んでいく(図1)。

ダブルバルーン内視鏡検査のイメージ

腸を固定するためにバルーンを使っているのは、体に負担をかけないよう配慮した点である。やわらかいバルーンを膨らませて小腸の内側を固定するため、腸の粘膜を傷つけることが少ない。

縮めては進み、また縮めては進み……と繰り返して進んでいき、小腸を1.4mまで縮めることができるのでスコープの長さは2mで足りる、ということになる。

異常があればその場で治療

検査は鎮静剤を使うが、意識のある状態で行う。肛門側から行う場合と口側から行う場合があり、平均して1~2時間かかる。小腸内全域を詳しく検査できるだけでなく治療もできる。ポリープをとるだけであれば1~2日程度の入院で済む。

患者さんにとってなにより喜ばれることはお腹を切らずに済むことだ。傷跡が残らないし癒着の心配もない。そして「何かあったときはまた切らなくてはならない」と思い悩む精神的プレッシャーからの解放と、そこから得られる安心感は大きい。

高まる評価と需要 課題は診療点数

ダブルバルーン内視鏡による検査は年々増え続けている。自治医科大学では、平均して1週間に10件の検査を行っている状況だ。

代表的な病気は原因不明の慢性の潰瘍ができるクローン病で、食生活の欧米化が影響していると考えられている。そして内視鏡の適用範囲が広がったことも件数が増えた要因のひとつである。ポリープや狭窄・出血等、これまでは開腹手術しか治療方法がなかったものまで内視鏡で対応できるようになっている。

ダブルバルーン内視鏡は、海外でもかなり普及しており、ヨーロッパを始め、アメリカ、ロシア、中国、韓国、台湾、インド等、40カ国以上にも及ぶほど、その評価は高い。

しかし、これだけドクターと患者双方から評価され、有用性の高さも認められているにも関わらず、国内での採用施設はいまだ100~200施設にとどまっている。その理由は保険診療点数。小腸内視鏡検査の診療点数は約30年前から据え置かれたままで、ダブルバルーン小腸内視鏡検査にもこの点数が適用されている。ディスポーザブル(使い捨て)のバルーンとオーバーチューブを使う検査ゆえ赤字検査となっているのが実態だ。この問題がネックとなり、ダブルバルーン小腸内視鏡検査を導入する医療機関が増えていかない。点数の引き上げは自己負担増となり患者にとって不利益になる面もあるが、適正な点数が設定されることで多くの医療機関への普及が進めば、結果的には国民のメリットになると感じている。

時間はかかるかも知れないが、診療点数の引き上げには尽力していきたいし、受診できる病院がひとつでも増えるよう切に願っている。

山本 博徳

自治医科大学
内科学講座消化器内科学部門 教授

1984年自治医科大学医学部卒業
1990年から米・メイヨークリニックおよびテキサス大学にて臨床留学
2007年自治医科大学内科学講座(消化器内科学部門)教授、フジノン国際光学医療講座教授
日本消化器病学会専門医・評議員
日本消化器内視鏡学会専門医
日本内科学会指導医
日本消化器内視鏡学会指導医・学術評議員
医学博士

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