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特集記事: 2008年1月31日 [ 「いい病院2008」 1月31日 掲載 ]

創傷治癒のための「湿潤治療」もう傷は消毒しない・乾かさない
夏井 睦先生写真

【特別寄稿】

石岡第一病院 傷の治療センター
センター長

夏井 睦

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傷の治療の新しい考え方

最近、ケガやヤケドの治療が変わってきたことをご存知だろうか。「消毒して乾かす」治療から「消毒せず乾かさない」治療への変化である。それが「傷のうるおい治療(湿潤治療)」であり、筆者が10年ほど前に始めた治療法だ。従来から行われていた傷の治療とは正反対だが、論より証拠、痛みが驚くほどなくしかも早く傷が治るのだ。特に鎮痛効果は劇的で、火傷もすりむき傷も痛みがすぐに治まってしまう。従来の治療でなぜ傷が痛かったかというと、消毒と乾燥自体が痛みの原因だったからである。

まず消毒薬であるが、これはタンパク質を破壊することで細菌を殺す薬剤だ。ここでタンパク質が細菌特有の物質なら何の問題もないが、実はタンパク質は人体を作る最重要物質でもあるのだ。だから、消毒薬は人体細胞にとっても毒性をもち細胞を破壊するが、人体細胞と細菌では物理的強度がまるで違っていて、細菌のほうが桁違いに丈夫なのである。このため、傷を消毒すると細菌は死なないのに人間の細胞だけ死んでしまい、消毒すればするほど痛みが増し、傷が治らなくなってしまう。まさに有害無益である。同様に、傷を乾かせば傷表面の細胞が干乾びて死んでしまう。人間のあらゆる細胞は乾燥状態では死滅してしまうからだ。これで、消毒と乾燥がいかに有害かをご理解いただけたと思う。

では、傷はどう治療したらいいのだろうか。実は、消毒せずに乾燥を防ぐだけで傷は勝手に治ってしまうのだ。なぜかというと、人体にはもともと傷を治す機能が備わっているからだ。すりむき傷や火傷の傷口は滲出液でジュクジュクしてくるが、実はこの滲出液は傷を治す生理活性物質の宝庫であり、このジュクジュクを逃さないように傷口を覆ってしまえば、傷はひとりでに治ってしまう。これが湿潤治療の原理である。

具体的な治療方法は簡単だ。すりむき傷でもヤケドでも水道でよく洗い、白色ワセリンを塗った食品包装用ラップで傷を覆い、絆創膏でラップが動かないようにとめるだけ。あとは、暑い時期なら一日三回くらい、寒い時期なら一日一回、ラップを剥がして傷周囲の皮膚をよく洗い(洗わないとアセモができてしまう)、ラップを交換するだけでいい。すりむき傷なら数日でツルツルの新しい皮膚が再生するはずだ。白色ワセリンは薬局で購入できるし、ラップは台所にあるもので十分。ラップを消毒する必要もない。また、湿潤治療のための治療材料のうちハイドロコロイド被覆材など数種類が薬局で購入でき、これも強力な治療効果を持っている。

このような湿潤治療であるが、現在ではまだ一般的治療ではなく、一部の先見性のある医師が個人として行っているに過ぎない。その詳しい情報は筆者のホームページ「新しい創傷治療http://www.wound-treatment.jp/」で公開しているので、参考にしていただきたい。

夏井 睦

石岡第一病院 傷の治療センター センター長

1984年東北大学医学部卒業。日本形成外科学会認定医。
2001年10月1日、インターネット・サイト「新しい創傷治療」を開設。
2003年4月特定医療法人慈泉会 相澤病院 傷の治療センター長として赴任。
2007年7月石岡第一病院 傷の治療センター長に赴任。

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