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特集記事: 2008年1月31日 [ 「いい病院2008」 1月31日 掲載 ]

治療の現状と展望「最新の慢性透析療法」世界に誇れる透析技術で患者のQOLを守る
西沢 良記先生写真

【特別寄稿】

社団法人日本透析医学会 理事長
大阪市立大学大学院 医学研究科長・医学部長

西沢 良記

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現在わが国では慢性透析患者数は26万人以上で、年間増加数は約1万人となっている。そうした中、最長透析歴39年、10年以上の透析歴者が全体の25.3%となり長期透析が可能なことなどから、わが国の透析技術は世界に誇れる高いレベルにあることがうかがいしれる。

「CKD:慢性腎臓病」という新たな概念

血液検査や尿検査、あるいは画像検査で腎障害が3カ月以上持続する場合や腎機能である糸球体ろ過率が60ml/分/1.73平方メートル体表面積以下を持続する場合には、CKD(chronic kidney disease)あるいは慢性腎臓病といい、一つの疾患ジャンルとして国際的にも注目されています。

腎機能不全になれば自力では生きていくことが困難で、血液透析、腹膜透析あるいは腎臓移殖の治療を受けることが必要になります。国際的には血液透析が70%、腹膜透析が10%、腎臓移殖が20%ですが、我が国では血液透析が95%、腹膜透析が4%、腎臓移殖が1%と血液透析が主流を占めています。

革新的な我が国の透析技術

血液透析とは患者さんから1分間に200cc以上の血液をダイアライザーの中の1〜2万本の束ねられた中空糸へ流通させます。この中空糸の外側は高純度に精製された透析液が1分間に約500cc流れており、ここで血液と透析液の間で老廃物や水・ミネラルの交換がなされ、血液は新鮮な血液となって体へ戻されます。ちょうど腎臓で血液から老廃物や余分な水とミネラルの排せつが行われるのと同じ機能ができることになります。

この高純度の透析液の精製や特殊な中空糸の膜成分などを含めた我が国の透析技術は国際的に最高レベルを誇っております。2006年末の「我が国の慢性透析療法の現況」報告において、慢性透析患者数は26万4473人となり、年間増加数は6708人となっています。このうち10年以上の透析歴者は25.3%と4分の1に達し、最長透析歴は39年と長期透析が可能なほど我が国の透析技術は熟成しつつあるといえます。

慢性透析患者数の年次推移

世界に誇れる我が国の透析療法

フランス、ドイツ、イタリア、日本、スペイン、イギリス、米国の7カ国で実施された世界的な観察研究として血液透析患者の調査(注1)があります。これは1996年から2001年までの第I相調査では各国における無作為抽出された311施設につき各施設の治療法や検査結果、入院の有無、患者のQOL(生活の質)のデータ収集がなされています。この結果報告では1年間の死亡率はヨーロッパで15・6%、米国21・7%に対して我が国では6・6%と驚くほど良好な成績がでており、年齢、性別、人種、合併症などの種々の補正をした死亡の危険度は我が国を基準にしてヨーロッパは2.84倍、米国は3.78倍と他の先進諸国の透析状況と比較していかに我が国の透析療法のレベルが高いかがご理解いただけると思います。このような国際的な調査はさらに継続され、透析患者を含む慢性腎臓病の治療成績や予後の規定因子などに関するエビデンスは世界共通のものになります。

今後の活動と期待

以前より日本透析医学会の活動の一環として種々の技術改善や改革、予防法・診断法・治療法の適正化や普遍化さらには新規手法の取り入れなど多大な努力を積み重ねてきております。また、我が国の他の関連学会との協力・協調と任務分担を積極的に行い、日本透析医会、日本腎臓学会、日本糖尿病学会などとの組織的な共同活動を開始しております。

さらに、長年実施している全国統計調査(注2)は全例調査として世界的にも例のない壮大かつ非常に学術的に価値の高い調査であり、この調査の充実と統計から生まれる果実を今後もより強力に社会へ還元できるようにしていきたいと考えております。

注1「透析医療の国際アウトカム研究:DOPPS」 注2「わが国の慢性透析療法の現況」

西沢 良記

社団法人日本透析医学会 理事長
大阪市立大学大学院 医学研究科長・医学部長

昭和45年9月大阪市立大学医学部卒業。同50年3月同大学大学院医学研究科内科系専攻内科学2課程修了。同年9月米国カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校医学部内分泌科。平成12年4月大阪市立大学大学院教授。同14年4月同大学医学部附属病院副院長。同18年4月から現職。同6月日本透析医学会理事長。

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