最新の医療機器の開発や医療技術の向上により、耳鼻科領域においてもより低侵襲の治療が普及しつつある。そうした治療の進化・高度化が、患者への肉体的・精神的負担を軽減する耳鼻咽喉科の最新治療を実現している。
早期社会復帰が可能な鼓膜形成術
近年、耳鼻咽喉科の疾患に、患者の肉体的負担が少ない、新たな低侵襲の治療法が普及し始めた。その口火を切ったのが、「接着法による鼓膜形成術」である。
接着法の鼓膜形成術は外傷や慢性中耳炎などで穴のあいた鼓膜を修復するための顕微鏡手術で、その穴による聴力の低下や細菌感染による耳だれなどを予防できる。耳の後ろの耳後部から採取した組織片(結合織)で穴を塞ぎ、フィブリン糊(生体接着剤)で、ずれないように固定するだけでよい。痛みもほとんどなく、日帰り手術で済む。穴のあいた鼓膜は、移植した組織片を介して数カ月で再生する。その間、外来で定期的に経過を観察し、丈夫な鼓膜の再生が確認できたら治療は終了だ。穴が小さく、耳だれが生じていないケースが適応対象となる。
低侵襲治療で広がる日帰り手術
中等度の慢性副鼻腔炎(蓄膿症)に対する内視鏡下副鼻腔手術も、いまや低侵襲手術として定着してきた。従来の上唇の裏を切り、上顎骨を削る根治手術とは異なり、鼻の穴に内視鏡を挿入し、モニター画面に映し出された患部=副鼻腔を見ながら手術する方法だ。
手術する内容も大きく違う。従来の根治手術は慢性副鼻腔炎で汚れた粘膜を徹底的に除去するが、内視鏡下副鼻腔手術は副鼻腔と鼻腔との連絡路である自然孔を広げ、自律的な換気機能を回復することが目的となっているため、病変部のみの除去だけで済む。それだけ侵襲が少ないことから局所麻酔で済み、日帰り手術を行う病院・クリニックもある。
ただし、内視鏡下副鼻腔手術を受けた後も、鼻腔や副鼻腔の炎症は残るため、抗生物質の服用などが必要となる。つまり、内視鏡下副鼻腔手術は薬による治療で改善されなかった副鼻腔粘膜の自力再生をはかる手術といえるだろう。
このほか、咽喉領域では軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群に対する治療として、口蓋垂の一部をレーザーで切除して気道を広げるLAUP(口蓋垂軟口蓋形成術)なども、体に負担の少ない低侵襲治療として普及している。
耳鼻咽喉科では、以上の手術以外にも治療の低侵襲化が進んでおり、患者への負担を大幅に軽減している。
【文/松沢 実】








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