椎間板ヘルニアなど腰痛に悩む人は多いが、手術を心配して受診していない人が少なくない。そうした中、切開せずにレーザーで椎間板ヘルニアを治療するPLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)が注目を集めている。
人間の体を支える背骨(脊椎)は、その部位によって頸椎・胸椎・腰椎・仙骨・尾骨に分けられ、24個の椎骨から成り立っている。椎骨と椎骨の間には椎間板と呼ばれる軟骨があり、この部分がクッションの役割を果たしている。椎間板の中心部には髄核というゼラチン状の物質があり、その周りを線維輪という組織が取り囲んでいる。椎間板ヘルニアは、老化や強い外圧で線維輪が損傷し、髄核が線維輪から脱出したり、髄核に押し出された線維輪の一部が後方に飛び出したりすることで神経や脊髄を圧迫する病気だ。
腰痛の代表的疾患である腰椎椎間板ヘルニアの治療には、まず薬物療法や牽引などの保存療法が選択されるが、それでも改善しない場合は外科的治療が必要となる。手術ではラブ法(腰椎椎間板ヘルニア摘出術)が一般的だが、最近、保存療法と手術の中間に位置する治療としてPLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)が注目を集めている。
PLDDはX線透視下で椎間板に中空の針を刺し、針の中にレーザーファイバーを通して、レーザー光を照射する治療だ。ヘルニアで脱出している髄核ではなく、線維輪の中にとどまっている髄核の一部を熱で焼き、蒸散させて空洞を作る。すると椎間板内部の圧力が下がり、ヘルニアが引っ込んで、神経を圧迫しなくなるという仕組みだ。局所麻酔による治療で、傷や痛みもほとんどない。治療は1時間もかからずに完了し、原則的に日帰り、あるいは1泊2日の短期入院で帰宅できる。ただし、椎間板の状態によっては適応外となるので注意が必要だ。また患者の何割かは症状が改善せず、再発する可能性もあるが、その際には再度レーザー光を照射することで改善が期待できる。一般的に椎間板ヘルニアの完治は難しいが、いずれの治療も再発の可能性があることを考慮すると、低侵襲なPLDDを試してみる価値は十分あるだろう。
【文/小林 恵美】