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特集記事: 2008年1月31日 [ 「いい病院2008」 1月31日 掲載 ]

正しい診断と治療が重要「多彩な症状を持つ甲状腺疾患の最新の診療」適切な治療で症状の大幅改善
 
高見 博先生写真

【特別寄稿】

日本甲状腺学会 理事
日本甲状腺外科学会 理事長
日本内分泌外科学会 理事長
帝京大学外科主任教授

高見 博

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甲状腺には重要なホルモンを作る役割があり、異常が起こると全身にさまざまな症状が現れる。自律神経失調症や更年期障害などの病気と間違われることも少なくないが、専門医による適切な診療が行われれば、症状を改善させることが可能だ。

”甲状腺とは”ホルモンとその調節

甲状腺は首の気管の前、いわゆる”のどぼとけ”の下にあります。蝶のような形をして、左右に分かれ、3cm程度の大きさです。正常な甲状腺は軟らかくて薄く、裏側に副甲状腺が4個あります。甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を盛んにする働きがあるため、細胞の活動が活発になり、全身の活力が上がります。 甲状腺の病気の中で最も多いのが橋本病、次いで甲状腺腫瘍、バセドウ病などです。甲状腺の病気はいずれも女性に多く、約90%が女性です。

 

  ●橋本病(慢性甲状腺炎)

 

橋本病は圧倒的に女性に多く見られます。自己免疫疾患(本人の体質)ですが、遺伝などの不安を感じる必要はありません。橋本病の多くの方は甲状腺機能が正常に維持されています。機能が低下すると、むくみ、食欲減退、便秘、眠くなる、寒がり、無気力、皮膚の乾燥などの症状が出てきます。このような方は甲状腺ホルモン剤を少し飲むだけで体調がよくなります。甲状腺の腫大はほとんどの方にあり、甲状腺機能が正常なら治療は不要です。進行すると甲状腺機能低下症になりますが、そういう方は橋本病の一部です。健康診断などで甲状腺の病気を指摘されることもありますが、多くは橋本病で、治療不要のことが多く、自然に治ることもあります。

(図)橋本病

 

  ●バセドウ病

 

甲状腺ホルモンが過剰に作られる病気です。代表的な症状は、動悸、甲状腺腫、眼球突出ですが、これらが常に揃って表れるわけではありません。まず内服薬治療から始め、次いで放射性ヨード治療で甲状腺の細胞を破壊していきます。放射性ヨード治療は副作用、合併症はなく、再発もしないです。最近、手術は減ってきておりますが、早期に治すことができます。

 

  ●甲状腺腫瘍

 

他の腫瘍と違って、腫瘍は20歳代の若い方からも発症するのが特徴です。腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)に分けられます。良性のほうがはるかに多く、大半は手術をしないで経過を見ていくようにしています。悪性と診断されても、きちんと手術を受け、進行していなければ、多くは治すことができます。良性か悪性かは超音波検査でほぼわかりますが、確認するためには穿刺吸引細胞診を行います。

一般的に良性腫瘍の方では、甲状腺ホルモン剤を内服し、3~6カ月すると腫瘍が小さくなり、消失することがあります。腫瘍が大きい場合、悪性の可能性が否定できない場合、美容上の問題がある場合などを除き、手術は通常は行いません。

(図)甲状腺良性腫瘍

悪性腫瘍にはいくつかの種類があり、中でも乳頭がんが約85%と圧倒的に多くを占めています。きわだった症状は現れませんが、進行するとのどに圧迫感があったり、声がかすれたり、気管・食道などに浸潤することもあります。診断が確定されると、原則的に手術が必要になります。

(図)甲状腺悪性腫瘍


普通に行われている甲状腺手術は、首の傷が数センチかそれ以上と大きく、甲状腺周囲の組織を大きく剥離し、筋肉も切離することが多いため、術後の痛みや不快な症状が出ます。しかし、最近になって良性腫瘍では低侵襲性手術が行われるようになり、傷は小さく、術後の経過も格段によくなっています。

しかし、いくら低侵襲性といっても体に傷をつけるのですから慎重に行わなくてはなりません。首の傷も一部の瘢痕化しやすい方を除けば、2年程できれいになります。手術はできるだけ行わず、行うならきちんとした手術(傷も形成外科的にきれいに縫ってもらえます)を行うところを探してください。

重要なことなので、あえて前文と重複しますが、甲状腺疾患は、最近の健康診断などでよく指摘されます。しかし、多くは治療不要であったり、手術不要であったりする場合が多くあります。特に手術は一度行うと、再手術は困難ですので、初回に確実な手術が必要です。

高見 博

日本甲状腺学会 理事
日本甲状腺外科学会 理事長
日本内分泌外科学会 理事長
帝京大学外科主任教授

1970年、慶應義塾大学医学部卒
慶應義塾大学講師(非常勤)
東京大学大学院外科講師(非常勤)
日本外科学会理事
日本内分泌学会理事
国際内分泌外科学会理事
アメリカ内分泌外科会員
日本外科学会指導医・専門医
日本甲状腺学会専門医

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