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特集記事: 2008年1月31日 [ 「いい病院2008」 1月31日 掲載 ]

迅速な対処が重要「脳卒中の予防と最新治療」前触れ症状を見逃さず適切な対応を
 
小川 彰先生写真

【特別寄稿】

岩手医科大学 医学部長

小川 彰

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わが国の死亡原因第3位を占める脳血管疾患。中でも脳梗塞(こうそく)は、毎年約8万人もの死亡者を出している。そうした中、脳梗塞急性期治療として、血栓を溶かす新薬tPAが保険適用になり、治療が大きく進化したことなどから注目を集めている。

増加する脳卒中

人口の高齢化を背景に脳卒中患者は増加の一途をたどっています。脳卒中はがん、心臓病とともに日本人の3大死因の一つで3番目に位置しています。ところが、入院して治療されている数(入院受療率)からみると、がんの1.5倍、心臓病の3.5倍の患者さんがいます。

そうした中、死亡数は少なくなってきているものの、半身麻痺や意識障害、言葉がしゃべれないなどの症状のため入院を余儀なくされている不幸な障害者が増加しています。また、脳卒中は元気に働いている方が突然発症し、さまざまな障害をきたすため、家族にまで影響し家庭崩壊に至っている例も少なくありません。

脳が強く障害されると機能は改善しない

脳は基本的には再生しないので、一度、大きな脳卒中発作を起こし、脳が広く障害されてしまうと機能の改善は望めません。しかし、脳卒中の治療は日々進歩しており、早期に適切な治療を行えば社会復帰できる方も少なくありません。脳卒中の前触れである軽い症状の段階での治療が必要です。

前触れの段階での治療が肝要

前触れをいち早くとらえて、大事に至る前に治療することが肝要です。しかし、脳卒中の前触れ(特に脳梗塞の前触れ)には重症感がないことが問題です。例えば、食事時に突然ご飯茶碗を落としてしまった。「あれ、左手がしびれて動かない」と言っているうちに症状はなくなってしまった。「どうしたの?たいしたことはないわね」と放置されてしまいます。これで治療のチャンスを失ってしまうのです。このような、一時的な症状を「一過性脳虚血発作」といい、とても重要な前触れの症状なのです。これは脳の血管が詰まりかかっていることを示しています。この段階で脳の血流を正常化する手術や薬での治療で大きな発作を防ぐことができます。「一過性脳虚血発作」を見逃さず専門医を受診してください。

強力に血栓を溶かす期待の新薬が登場

大きな発作に襲われても、全く駄目と悲観する必要はありません。2005年から強力な血栓溶解薬であるtPAが保険認可され、日常の臨床で使えるようになりました。しかし、突然血管が詰まってから脳が回復不能の障害に陥るまでの時間は早く、強力な薬が登場したとはいえ、治療のチャンスはわずかです。発作発症後3時間以内でなければ、期待の新薬といえども効果はありません。効果がないだけではなく、遅れて使うことはダメージを受けた脳に血流を再開することになり、出血によって、むしろ悪影響を引き起こしてしまいます。まさに時間との勝負なのです。大きな発作に襲われたら1分1秒でも早く専門病院に搬送してもらうことが肝要です。

若い人にも発症するクモ膜下出血

クモ膜下出血は脳卒中の中でも比較的若い人にも起こる致死率の高い病気です。しかし、比較的軽症で外科治療を受ければ社会復帰が可能でもあります。「突然」、「過去に経験したことのない激しい頭痛」がキーワードです。突然の激しい頭痛をきたしたらクモ膜下出血の可能性は高く、すぐに専門病院を受診しましょう。クモ膜下出血は脳動脈瘤の破裂によっておこります。遺伝病ではありませんが、近親者にクモ膜下出血を有する方では発症率が高いことも知られています。動脈瘤が破裂する前に見つかれば手術治療が推奨されており、近親者にクモ膜下出血のある方は、脳ドックなどでの精密検査が必要です。

脳卒中予防には生活習慣病の治療が必要

脳卒中の主なものは脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血で、これを3大脳卒中と呼んでいます。特に脳出血は高血圧性脳出血と呼んでおり、高血圧が主な原因です。いずれの脳卒中も高血圧や糖尿病、高脂血症が大きなリスクファクターです。また、内臓肥満、軽度でも高血圧、糖尿病、高脂血症を併せ持つことを「メタボリックシンドローム」といい、脳卒中予備軍となります。このような生活習慣病の適切な治療が恐ろしい脳卒中を予防します。

最後に

恐ろしい脳卒中にならないために、生活習慣病などの予防に努め、軽い前触れの症状に気をつけ、予防的治療を受けること。なってしまったら1分でも早く専門病院を受診することが重要です。

小川 彰

岩手医科大学 医学部長

1974年岩手医科大学医学部医学科卒業。
1985年国立仙台病院脳神経外科医長、臨床研究部脳神経研究室長。
1991年米国バロー神経研究所(アリゾナ大学)留学。
1992年岩手医科大学脳神経外科学講座教授。
1996年岩手医科大学サイクロトロンセンター長(~2005年3月)。
2006年より現職。

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