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特集記事: 2008年1月31日 [ 「いい病院2008」 1月31日 掲載 ]

正しい認識と理解が重要「生物学的製剤によるリウマチ治療」原因に直接作用し関節の破壊を防ぐ

西岡 久寿樹先生写真

【特別寄稿】

聖マリアンナ医科大学 教授
難病治療研究センター長

西岡 久寿樹

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関節の腫れやこわばりで激しい痛みに悩まされる関節リウマチ。進行すると軟骨や骨などが破壊されて変形してしまう。そうした中、症状を悪化させる原因に直接作用する「抗サイトカイン療法」が、関節リウマチの最新治療として注目を集めている。

サイトカインとは

サイトカインは最近の研究から、種々の病気を起こしたり、症状の進行に関わるタンパク質であることがわかってきています。その中でもTNFと称されるサイトカインは、リウマチの炎症に関わる数多くのサイトカインを誘導し、関節の腫れや骨破壊に直接関わっていることが明らかにされました。

こういったTNFの役割に注目して、それらを標的とした抗体治療として、インフリキシマブが、さらにTNFが標的とする細胞上にある受容体を標的としたエタネルセプトという2種類の薬剤がここ10年近くの間に相次いで欧米において関節リウマチの患者さまに対して用いられるようになってきました。

日本でもここ数年の間にようやくインフリキシマブとエタネルセプトの使用が承認されました。昨年末までにインフリキシマブが1万7千人の患者さまに、エタネルセプトは1万2千人の関節リウマチの患者さまに用いられてきました。その結果、関節リウマチの治療に強力な効果を挙げています。

インフリキシマブの働き

どのような患者に抗サイトカイン療法を行えばよいか

従来の考え方では、抗サイトカイン療法を用いる患者さまの多くは、これまでのリウマチ治療剤に対して効果が低い方や、どちらかといえば進行してしまった患者さまに用いるというのが一般的な傾向です。特に日本では未だ発症早期の関節リウマチの患者さまにこういった抗サイトカイン療法を行うには、専門医の間ですら意見が分かれるところです。

しかし、多くの患者さまは発症して1年以内に、足が腫れたり痛みが非常に強くなってきたと訴えてこられます。

この早期の段階から「抗サイトカイン療法」は非常に効果的であることが、欧米の多くの臨床研究で明らかにされています。

また私たちの経験でも、発症してから特に2年以内の患者さまに抗サイトカイン療法を行うことは、非常に効果的で、早い時期に症状が収束でき、患者さまからQOL(生活の質)が著しく向上したという多くの声を聞くと、やはり優れた効果があると実感しています。

もちろん、ある程度進行した患者さまにも有効性は認められていますが、骨破壊がかなり進行してしまった場合には外科的治療やリハビリテーション療法などとともに、より積極的な治療が必要だと思われます。

抗サイトカイン療法の問題点と対策

抗サイトカイン療法にも問題点がないわけではありません。まず、抗サイトカイン療法を保険診療で行っても、年間にして50万円近くが患者さまの自己負担となります。

生物学的製剤を安定した品質で供給するためには、その製造過程にかなりの金額がかかるのも理由のひとつです。また、抗サイトカイン療法に手慣れた専門の医師でも、かなりその治療手技には手間がかかります。さらに、感染症などの副作用のモニターなどを、絶えず行っていかなければなりません。

現在のところ、日本では欧米のように抗サイトカイン療法が外来で「手軽」に行えるという状況には程遠いというのも、大きな問題点でしょう。

いずれにせよ、私たちリウマチ専門医は2010年をひとつのめどに、関節リウマチの制圧を目標にしていますが、こういった抗サイトカイン療法が日本でも数多くの患者さまに用いられてきたことにより、大きな進歩を遂げています。

今後、錠剤化などを試み、より安価なサイトカイン標的治療薬の開発も進め、より安全性の高い、かつ患者さまに負担をかけないリウマチ診療の構築も急務でしょう。

西岡 久寿樹

聖マリアンナ医科大学 教授
難病治療研究センター長

昭和43年三重大学医学部卒業。同52年からカリフォルニア大学サンディエゴ校リウマチ科研究員。その後、東京女子医科大学教授などを経て平成3年から聖マリアンナ医科大学教授。同11年同医科大学難病治療研究センター長を兼任。

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