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特集記事: 2008年1月31日 [ 「いい病院2008」 1月31日 掲載 ]

心身のサポートが大切「現代の不妊症治療」正しい認識を持ち納得の治療を
 
【監修】 医学ジャーナリスト 牧野 賢治
 
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普通の性生活を2年続けても妊娠しない状態である不妊症は、現在約47万人もの人が治療を受けていると推計されている。原因は女性にあると思われがちだが、実際は男女それぞれにあり、治療には原因の追求が重要となる。

 

さまざまな不妊の原因

結婚後、普通の性生活を営んでいるのに、2年経っても子どもができない状態を「不妊」という。妊娠は非常に複雑かつ微妙な過程を経て実現するため、不妊の30%以上は原因不明といわれるが、それ以外は女性側と男性側それぞれに原因がある。

最近は女性の社会進出や性体験の低年齢化、晩婚化などを背景とした不妊症が増えている。とりわけ、ストレスや過労、睡眠不足、極端なダイエットなどによる月経周期の乱れが原因で不妊となる女性が目立つ。

女性側に認められる不妊の原因は、(1)ホルモンがうまく働かないことから生じる排卵障害や卵巣機能不全による不妊がもっとも多い。これに(2)卵管閉塞などの卵管性不妊や、(3)子宮粘膜下筋腫、子宮の先天性形態異常などの子宮性不妊、(4)子宮内膜症などが続く。

男性側の不妊の原因は、精子の数が少ない乏精子症(ぼうせいししょう)や、精子に元気がない精子無力症、精液中に精子が1つも認められない無精子症など造精機能障害が大半を占める。ほかに精管の一部が欠ける閉塞性無精子症などの精路通過障害や、勃起不全などの性行為障害による男性不妊もある。

女性が不妊治療を受けるときは、まず婦人科で不妊の原因を突きとめるさまざまな検査が行われる。婦人科を受診する際は、2~3カ月間の基礎体温の記録を持参すること。女性の月経は月経期→卵胞期(らんぽうき)→排卵期→黄体期(おうたいき)を1サイクルとして通常、約28日間で周回するが、月経開始から排卵直前まで体温は低いまま推移し、排卵直後から月経開始日の直前まで体温は高温となって推移する。基礎体温が低温と高温の二相性(にそうせい)を描けば排卵は正常とされ、おおよその排卵日の見当もつく。基礎体温の測定とその記録は、不妊症の検査の中でもっとも重要なもので、不妊の原因となるさまざまな障害や病気を推しはかる目安となる。

重要なのは不妊の原因が卵管閉塞や子宮内膜症などの器質的な障害や病気にあると診断されたら、まずそれを解消する適切な治療を受けることだ。治癒したらすぐ妊娠することも少なくない。

その他ホルモンがうまく働かない排卵障害や卵巣機能不全による不妊が疑われる場合には、まず排卵誘発剤のクエン酸クロミフェンや、卵胞の発育を促す卵胞刺激ホルモン等の投与が行われる。

女性の妊娠メカニズム

妊娠の成立と女性の月経周期はホルモンを介して密接に関連している。具体的には脳の視床下部(ししょうかぶ)と、そのすぐ下にある内分泌組織=下垂体(かすいたい)、そして卵巣の3つの組織の働きにコントロールされているのが月経周期で、その月経周期の月経期にまず視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌される。これが下垂体から卵巣へとホルモンを介して作用し、卵巣はその中に詰まった原始卵胞(げんしらんぽう)を成熟卵胞へ発育させて卵胞期へ移行する。

卵胞が発育するに従い、卵胞からのエストロゲン分泌量も次第に増え、それが一定量に達すると「卵胞が十分に発育した」という信号が視床下部へ伝えられる。視床下部はその信号を下垂体に送り、下垂体から黄体化ホルモンが一時的に大量分泌されると卵胞は卵子を排出して排卵となる。

排卵された卵子は卵管で精子と合体して受精卵となり、細胞分裂を繰り返して小さな細胞の塊(胚)となる。一方、排卵後に卵胞は黄体となり、黄体からエストロゲンとプロゲステロンが分泌される。この影響で分泌変化を起こした子宮内膜に胚が着床し、胚の成長によって妊娠が成立する。

妊娠が成立するには月経期→卵胞期→排卵期→黄体期という月経周期が、正常にめぐっていることが不可欠であり、女性が本来持っている月経周期のリズムを取り戻し、妊娠しやすい体をつくらねばならない。

妊娠のメカニズム

進歩する現代の不妊治療

現代の不妊治療は、人工授精や体外受精、顕微授精に代表される。月経周期を整え排卵誘発剤などの投与を受けても妊娠しない場合、人工授精や体外受精、顕微授精に切り換える。卵管が閉塞している場合や、原因不明の不妊症などの場合も、同様だ。

人工授精は排卵の時期を見はからって、精液を子宮内に注入する方法だ。多数の精子を「受精の場」である卵管に送りこむので、精子の数が少ない乏精子症や、精子の運動性が低い精子無力症、性交障害、または女性の子宮頸管の異常などに不妊の原因がある場合に適している。

人工授精は超音波断層法で卵胞の発育を観察し、排卵の時期を見定めて行う。絨毛性(じゅうもうせい)ゴナドトロピンなど排卵させる薬を併用することもある。

体外受精は卵巣から取り出した卵子と、あらかじめ採取した精子をシャーレの中などで受精させ、体外で培養した後、胚または胚盤胞を子宮に戻す方法だ。卵管閉塞による不妊症の治療法として始められたが、いまやさまざまな原因の不妊に広く行われている。

体外受精は十分に発育した卵子を数多く採取したほうが確率的に有利なので、卵胞の発育を促す卵胞刺激ホルモンと、排卵を促すヒト絨毛性ゴナドトロピンの排卵誘発剤が用いられる。卵子は細い針で吸引・採取され、培養液の入ったシャーレの中で、あらかじめ採取されていた精子と受精が行われる。受精卵が数個に分裂して胚になったのを確認してから子宮の中へ戻す。移植する胚の数は3個以下だ。最近は受精後5~6日培養し、胚盤胞という状態まで育ててから移植することも増えてきた。この場合、移植するのは2つまで。採卵後、2週間ぐらいで妊娠しているか否かが判明する。

体外受精の妊娠率は病院やクリニック、年齢などでいろいろ異なるが、全国平均で20%前後だ。費用は健康保険が適用されないので自費負担となり、1回につき25~50万円ぐらいかかる。

顕微授精は採取した卵子に精子を直接送りこむ方法だ。卵子に直接穴を開け精子を注入して受精させる。乏精子症や精子無力症、あるいは無精子症でも睾丸の中に精子が存在する場合に適しているが、最近は精子の状態がいいのに体外受精でも受精しなかった場合などにも行われている。

【文/松沢 実】

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