線維筋痛症は「中高年の女性を中心に好発する全身の筋組織を中心とする結合性組織の疼痛(とうつう)を主症状として、うつ状態や不眠・疲労感などに加え過敏性大腸炎や膀胱(ぼうこう)炎などの多彩な症状を呈する疾患」と定義されていますが、ドライアイ、ドライマウスなどの結膜系の障害まできたす広範囲な疾患であるということがわかってきました。厚生労働省研究班の調査では全国で150~200万人の患者さんがいると推定され、8割以上が女性です。
多くの患者さんを診ていると臨床的にいくつかの共通する痛みがあり、米国リウマチ学会(ACR)が1990年に作成した漢方でいうツボのようなところを18カ所押して、11カ所以上の痛みの存在により診断します。
日本では私たち厚生労働省研究班で、進行度に合わせたステージ1からステージ5の5段階に分けたものを作成しています。これらを組み合わせれば早い時期から進行期までの診断がつきます。
患者さんが訴える症状は痛みのほかに精神神経症状も強く、まずカウンセラーによる面談を行います。その情報をもとに、担当医を精神科領域の医師、我々のようなリウマチの専門医、神経内科医など大きく分けていき、場合によってはリエゾン的に診るというケースもあります。
治療薬は、心因性の症状にはある種の抗うつ薬がよく効きます。激しい痛みには日本では正式に用いることはできませんが、プレガバリンが痛みの緩和に有用で、米国で認められています。
現代のように複雑な社会機構ではストレスが多くなり、当然、線維筋痛症の患者さんは増えてきます。今後、多くの臨床医、研究者が、線維筋痛症の患者さんのケアに取り組んでくれることを期待しています。
西岡 久寿樹
聖マリアンナ医科大学教授
難病治療研究センター長
昭和43年三重大学医学部卒業。
同52年からカリフォルニア大学サンディエゴ校リウマチ科研究員。
その後、東京女子医科大学教授などを経て
平成3年から聖マリアンナ医科大学教授。
同11年同医科大学難病治療研究センター長を兼任。