痔そのものを切らない画期的な治療法
痔は日本で非常に多くの人がかかっている病気です。発症する場所が場所なので、治療を嫌がって悪化させる方もいます。痔の中でもっとも多い症状が痔核(いぼ痔)です。従来の治療法は、主に痔核を切除するもので、肛門に傷をつけるため、術後に痛みを伴いました。
それに対して、痛みの少ない治療法として1993年に開発されたのがPPH(自動吻合(ふんごう)器を用いた直腸粘膜脱または内痔核手術)です。これは、痔核の原因となる循環障害と直腸粘膜の緩みだけを治療し、痔核には手を加えないという治療法です。
手術には専用の自動吻合器を使用します。麻酔をかけた後に、緩んだ直腸粘膜を切除・縫合し、肛門の外に出た痔核を中に戻します。同時に血流も遮断するため、痔核は次第に小さくなります。手術にかかる時間は20分程度で、直腸粘膜は痛みを感じる神経が少ないため、術後の痛みも抑えられ、術後3~4時間で退院できます。
PPHは優れた治療法ですが、処置を誤れば、糞便の大腸菌が傷口から侵入することによる敗血症など、合併症を引き起こす危険もあります。女性の場合は直腸と膣の間の壁に穴が開く直腸膣瘻(ちつろう)も深刻です。
体への負担を減らし日帰りでの治療を可能に
PPHは技術や工夫次第で体への負担をさらに軽減できます。通常、切除した箇所は多少出血があり、追加縫合が必要です。しかし、当院では主に双極型電気メスで凝固させて止血します。これは、腹腔鏡下手術などに用いられる手法で、縫合する場合より出血を抑えられます。
短い手術時間に加えて、縫合を極力せずに出血を抑えることで、手術を腰椎麻酔でなく、局所麻酔のみで行うことができます。局所麻酔なら、高齢者の方などでも安心して手術を受けられる上、その日のうちに歩いて帰ることも可能です。
また、痔を検査する際、内視鏡で早期がんを発見することもあります。痔で来院される方の中には大腸がんを発症している場合もあるのです。当院ではそのような場合、がんの治療も積極的に進めます。こうしたことは4,000例以上に及ぶ腹腔鏡下手術の経験があるからこそ行えると思っています。
医療の根源とは、患者さんのため、体に優しくリスクの少ない治療を追求することにあると考えています。そのために医師も常に新しい技術を学んでいく必要があるわけです。よい治療を受けるためには、患者さんも何を重視するか決めた上で、色々な情報を真剣に調べて医師を探していくのが望ましいと思います。
[取材/鈴木 健太]
イケ忠☆診療部in藤が丘 院長
昭和大学医学部卒業後、昭和大学藤が丘病院に30年勤務。
現昭和大学外科客員教授。
平成19年にイケ忠☆診療部in藤が丘を開院。
4000症例以上手掛けた腹腔鏡下手術の経験を基にPPHを行い、400症例以上の痔を治療している。







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