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特集記事: 2008年4月30日 [ 週刊朝日 2008年5月9日号 掲載 ]

骨密度の測定で骨折を予防 骨粗鬆症の予防と治療特集

中村 利孝先生写真

【特別寄稿】

日本骨粗鬆症学会 理事長
産業医科大学医学部 整形外科教授

中村 利孝(なかむら としたか)

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骨粗鬆症(こつそしょうしょう)と骨折の危険性

骨粗鬆症は骨の強度が低下し、骨折の危険性が増大した状態です。世界保健機関(WHO)の報告では、欧米と日本を合わせると7,500万人以上が骨粗鬆症と診断され、年間890万件の骨折が発生しています。骨粗鬆症の骨折によって引き起こされる日常生活障害の程度は、糖尿病、肺がん、肝硬変などに次ぎ、高血圧や乳がんより大きいというデータもあります。

実際、高齢化の進む我が国では、骨粗鬆症による骨折は、脳血管障害、老化による虚弱状態とともに、介護費用を増大させる3大疾患の1つになっています。

健康な骨は、体を支え運動するために必要で十分な強度があります。骨の強度の約70%は骨密度に、残りの30%は密度以外の要因、いわゆる骨の質により維持されています。骨の質には構造や材質などが関連していますが、骨密度と骨の質が適正な範囲内にあれば、骨は健康で、簡単には骨折しません。骨密度は骨密度測定装置で測定でき、骨の質の変化は骨代謝マーカーで評価できます。

骨の健康管理に定期的な検査を

女性の骨密度は閉経期のころから急速に低下し、20歳から40歳までの健康成人女性の平均値(YAM)の70%を下回ると、骨粗鬆症として治療が必要になります。また、骨の健康管理はYAMの80%を目安として、これより低下している方では、日常生活で骨折の危険因子を増加させないように気をつけるのがよいでしょう。

骨代謝マーカーは閉経期から増加します。骨代謝マーカーが閉経前の健康女性の範囲内より高くなると、骨密度が低下しやすく、骨強度も低下します。骨密度と骨代謝マーカーの検査は骨粗鬆症診療を行っている医療機関で受けることができます。50歳以上の女性では、全身の健康管理の1つとして、2~3年に1度は、これらの検査をお受けになるのがよいでしょう。

背骨の側面像

骨折予防とライフスタイル

最近、WHOでは低骨密度と年齢のほかに、(1)骨折の既往、(2)大腿骨頚部骨折の家族歴、(3)喫煙習慣、(4)過度の飲酒、(5)ステロイド剤の使用、(6)関節リウマチなど骨粗鬆症になりやすい疾患にかかっていることの6つが、世界に共通する骨折の危険因子であることを明らかにしました。骨の健康には、カルシウムとビタミンDの十分な摂取と運動により、骨密度を維持することが重要です。

しかし、骨折の予防には骨密度とともに、WHOの指摘する骨密度以外の危険因子にも注意を払う必要があります。骨密度以外の骨折危険因子は、骨の質を低下させてその強度も低下させていると考えてよいでしょう。

実際、これらの骨折危険因子があると、同じ骨密度でも骨折危険性は増加します。例えば、WHOの検討では、65歳の日本人女性で、骨密度がT値(*)でマイナス2.0(若年成人の約75%)の方の10年間の骨折危険率は、危険因子が0個の方は8.4%ですが、1個あると12%、3個あると24%、6個あると53%になると推定されています。

骨密度と骨の質を維持し、骨折の危険率をなるべく少なく保つライフスタイルを維持することが、骨折予防の第一歩であることをご理解いただければと思います。

* T値=YAMと比較して偏差値の何倍差があるかという倍数のこと

中村 利孝(なかむら としたか)

日本骨粗鬆症学会 理事長
産業医科大学医学部 整形外科教授

1973年9月東京大学医学部卒業。同整形外科で卒後研修をうける。80年12月ニュージーランド・オークランド大学ミドルモア病院整形外科レジストラー。87年4月東京大学医学部整形外科講師、96年6月より現職。同年から99年までWHO(世界保健機関)のtemporary adviser。2007年4月より日本骨粗鬆症学会理事長、日本整形外科学会理事。

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