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特集記事: 2008年5月20日 [ 週刊朝日 2008年5月30日号 掲載 ]

抗サイトカイン療法~より積極的なリウマチ治療へ~

聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター長  教授 西岡 久寿樹

【特別寄稿】

聖マリアンナ医科大学 教授
難病治療研究センター長

西岡 久寿樹(にしおか くすき)

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関節の痛みや腫れ、変形に苦しめられる関節リウマチに対して、従来は骨や関節の破壊を遅らせるといった防御的な治療しかできなかった。そうした中で登場した、病状そのものの進行を抑えることが可能な抗サイトカイン療法に期待が集まっている。

関節リウマチを引き起こすサイトカイン

サイトカインとは、細胞間の情報伝達を担う分子の一つで、関節リウマチを引き起こす物質です。その中でもTNFと称されるサイトカインは、リウマチの炎症に関わる数多くのサイトカインを誘導して、関節の腫れや骨破壊に直接関わっていることが明らかにされています。

こういったTNFの役割に注目し、それらを標的とした抗体治療に使用するインフリキシマブと、TNFが細胞上の受容体と結合するのを阻止するエタネルセプトという2種類の薬剤が、欧米においてここ10年近くの間、相次いで関節リウマチの治療に用いられるようになりました。

日本でもここ数年でようやくインフリキシマブとエタネルセプトの使用が承認され、治療に強力な効果を挙げています。昨年末までにインフリキシマブが1万7千人、エタネルセプトが1万2千人の患者さんに用いられました。

抗サイトカイン治療を行うタイミング

抗サイトカイン療法は、これまでのリウマチ治療剤に対して効果が低い方や、病状の進行してしまった方に用いるのが一般的な傾向です。特に日本では、発症早期の関節リウマチに対する抗サイトカイン療法の是非について、専門医の間ですら、未だ意見が分かれています。

しかし、発症して1年以内の段階からの抗サイトカイン療法が非常に効果的であることは、欧米の多くの臨床研究で明らかにされています。また、私たちの経験では、特に発症してから2年以内の患者さんへの抗サイトカイン療法が非常に効果的でした。早い時期に症状が収束でき、多くの患者さんからQOL(生活の質)が著しく向上したという声も聞かれます。

もちろん、ある程度進行した病状にも有効性は認められていますが、骨破壊がかなり進行してしまった場合には外科的治療やリハビリテーション療法などとともに、より積極的な治療が必要と思われます。

インフリキシマブの動き

治療の課題と今後の展望

抗サイトカイン療法にも問題点はあります。生物学的製剤を安定した品質で供給するため、その製造過程にかなりの金額が必要となるのです。そのため、保険診療でも年間50万円近くが患者さんの自己負担となります。また、手慣れた専門の医師でも、治療手技には多くの手間がかかります。さらに、感染症などの副作用のモニターを、絶えず行わなければなりません。現在のところ、欧米のように抗サイトカイン療法が手軽に外来で行える状況には程遠いといえます。

私たちリウマチ専門医の目標は2010年をめどにした関節リウマチの制圧です。現在では、抗サイトカイン療法が日本でも数多くの患者さんに用いられてきたことにより、それに大きく近づいています。今後は錠剤化などを試みつつ、安価なサイトカイン標的治療薬の開発を進めるなど、より安全性が高く、患者さんに負担をかけないリウマチ治療の構築が急務でしょう。

西岡 久寿樹(にしおか くすき)

聖マリアンナ医科大学 教授
難病治療研究センター長

1968年三重大学医学部卒業。
1977年からカリフォルニア大学サンディエゴ校リウマチ科研究員。
その後、東京女子医科大学教授などを経て1991年から聖マリアンナ医科大学教授。
1999年から同医科大学難病治療研究センター長を兼任。

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