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特集記事: 2008年5月27日 [ 週刊朝日 2008年6月6日号 掲載 ]

専門医による高度な初期診断が重要 バセドウ病・橋本病の診断と治療
高見 博先生写真

【特別寄稿】

日本甲状腺学会 理事
日本甲状腺外科学会 理事長
日本内分泌外科学会 理事長
帝京大学外科主任教授

高見  博(たかみ ひろし)

***

多岐にわたる甲状腺疾患

甲状腺は首の前の「のど仏」の下にあります。蝶のような形をして、薄っぺらいので、普通の人は外から触ろうとしても触れません。甲状腺ホルモンを分泌し、体の新陳代謝を促しています。ですから、成長期には重要なホルモンといえます。

甲状腺ホルモンは、ヨードを含んでいるわかめや昆布などの海草類に多く含まれ、甲状腺で甲状腺ホルモンが合成され、貯蔵されます。普通は脳内の下垂体により、甲状腺ホルモンの分泌は適量に維持されています。

甲状腺の病気で最も多いのは、橋本病(慢性甲状腺炎)、ついで甲状腺腫瘍、バセドウ病などで、女性に多くみられます。また、甲状腺の病気は、甲状腺腫と甲状腺機能異常が中心となります。今回、テーマにしましたバセドウ病と橋本病はともに、これら二つの異常を持っています。

●バセドウ病について

バセドウ病の甲状腺腫は軟らかく全体に腫大しており、甲状腺機能異常は機能亢進症になり動悸や脈が速くなります。主な症状は図1で示しましたが、疲労感、動悸、多汗、手指震戦、体重減少などの症状が主体で、甲状腺腫を自覚する人は罹患者の半数以下です。

バセドウ病による症状

年齢により症状の出方も少し違い、甲状腺腫は若い人に多く見られます。体重減少は高齢者に多く見られます。若い人は新陳代謝の亢進により多食するため体重が減少しにくいのです。眼球突出は若い人に多く、もしこのような症状があるときには、バセドウ病の治療医から専門の眼科医を紹介してもらうのが良いです。

最近では健康診断で甲状腺ホルモンの測定が行われるようになり、また、国民の認識も高まってきたため、初診時のバセドウ病の症状も軽症化しています。それでも、巨大な頸部腫瘤で来院される方もしばしばおられます。

治療法は表1に示していますが、あくまで、抗甲状腺薬が第一選択です。それで治らない方や、うまく治療が進まない方にはアイソトープ治療が良いです。しかし、日本では行うことができる施設が限られています。手術は最後の手段と考えます。手術は若い女性が多いこともあり、低侵襲性小切開法が良いのですが、高度な技術を要し、もしも合併症でも起こすようなら最悪ですので、あえて推奨は致しません。

 

抗甲状腺薬

アイソトープ
(131I治療)

手術(甲状腺切除)

作用機序

・甲状腺ホルモンを合成する酵素の働きを抑えて、甲状腺ホルモンの産生を減らす

・放射性ヨードで、ホルモンの合成を減少させる

・甲状腺の大部分を切除することにより甲状腺ホルモンの合成を減少させる

長所

・自宅での内服ですむので患者さんの負担が少ない

・手術やアイソトープ治療後に起こりうる手術合併症や永続的な機能低下症にならない

・確実、簡単、安全な治療法である

・再発が少ない

・早期に確実な結果が得られる

・大きな甲状腺腫には適している

短所

・副作用の頻度が高い

・長期内服でも治癒しない人が多く、治癒までに時間がかかる

・再発が多い

・妊娠、授乳中は禁忌

・甲状腺機能低下症になることが多い

・特別な施設が必要である

・反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症を起こす危険がある

・外科医の技術が結果に影響する

表1  バセドウ病の治療法の特徴

 

●橋本病について

橋本病は中年以降の女性に多く見られると思われていましたが、それは中年以降に次第に甲状腺腫が硬く大きくなるため、そう思われていたわけです(図2)。甲状腺機能は低下症ですので、大まかにはバセドウ病の反対の症状と考えていただいてよいです(図3)。

バセドウ病の腫瘍

 

橋本病による症状

 

最近、健康診断で甲状腺ホルモン、自己抗体の測定がされるようになったため、年齢に関係なく、また腫瘤の大きさの程度に関係なく橋本病が多く見つかるようになりました。約1/3の患者さんは機能低下症の症状があり、治療が必要ですが、それ以外の患者さんは定期的な検査のみで十分です。治療は甲状腺ホルモン剤を長期的に服用する必要がありますが、時には機能が正常化することもあります。

甲状腺専門医による診断が大切

最近は超音波検査(エコー)や甲状腺ホルモン・自己抗体の測定などが盛んに行われ、かつ鋭敏であるため、橋本病というだけで治療不要な患者さんが内服を処方されている場合があります。このため、きちんとした良心的な専門医にかかることをお勧めします。

高見  博

日本甲状腺学会 理事
日本甲状腺外科学会 理事長
日本内分泌外科学会 理事長
帝京大学外科主任教授

1970年、慶應義塾大学医学部卒。慶應義塾大学講師(非常勤)、東京大学大学院外科講師(非常勤)、日本外科学会理事、日本内分泌学会理事、国際内分泌外科学会理事、アメリカ内分泌外科会員、日本外科学会指導医・専門医、日本甲状腺学会専門医

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