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特集記事: 2008年6月17日 [ Web単独掲載 ]

経皮的椎体形成術 圧迫骨折の最新治療
齋田 幸久

【特別寄稿】

聖路加国際病院 放射線科部長

齋田 幸久(さいだ ゆきひさ)

***

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)と脊椎(せきつい)圧迫骨折

日本では1千万人以上の方が骨粗鬆症を発症していると言われています。骨粗鬆症の方にとって、全身の体重がかかる股関節や背骨は骨折しやすい部位です。しりもちをつくなどのちょっとしたことで胸から腰にかけての背骨が上下方向に潰れることがあります。姿勢は前屈みとなり、背丈は縮んでしまいます。

こうした背骨の骨折が不安定でうまく治癒しないと、激しい痛みを生じ、寝たきり生活を余儀なくされることがあります。

切開しない経皮的椎体形成術

これらに対し、今までは骨の上下を金属で固定する手術が一般的でしたが、新しい手術方法として経皮的椎体形成術(Percutaneous vertebroplasty)が開発されました。背中から針を刺し、骨セメントを潰れた椎体(背骨)内に注入するという方法です。骨セメントは数分のうちに固まり、内部からしっかりと骨を固定することができます。

全身麻酔を併用しないので数時間後には歩行が可能であり、痛みの消失をすぐに体感することもできます。欧米では広く行なわれている治療法ですが、残念ながら日本では保険適応が遅れているため、まだ限られた施設でしか実施されていません。

当院では、この5年間に500例を越える経皮的椎体形成術を行い、80%から90%の例で、著明な除痛効果と生活活動の改善を得ています。治療を行う対象は痛みのある骨粗鬆症に伴う圧迫骨折が主ですが、痛みを伴うがんの転移の場合も適応としています。

術前画像診断と合併症

CTやMRIによる術前の詳細な画像診断によって、治療すべき椎体の選択、針の方向と本数、セメント注入量など、十分な治療計画を練りあげます。この画像診断は合併症予防のためにも重要です。

合併症としては、針で血管を傷つけることによる出血、セメント逸脱による脊髄圧迫、静脈内流出による肺塞栓症、感染による骨髄炎などがあげられますが、起こる確率は全体を合わせて1%未満と決して多くはありません。

今後の課題

現時点では、骨粗鬆症における圧迫骨折に対してこの治療を行ったうちの20%近くで再発することが問題となっています。今後とも、骨粗鬆症そのものの治療法の進歩や生活指導の確立とともに、椎体形成技術の改善にも積極的に取り組んでいきたいと思っています。

齋田 幸久

聖路加国際病院 放射線科部長

日本医学放射線学会 専門医
日本消化器集団検診学会 指導医
日本インターベンショナルラジオロジー学会 指導医
東京医科歯科大学医学部 臨床教授

1973年 東京医科歯科大学医学部卒
1978年 ニュールンベルク市立病院放射線部 助手
1980年 ミュンヘン工科大学附属病院 放射線科 助手
1982年 筑波大学臨床医学系 講師
1995年 筑波大学臨床医学系 助教授
2004年 国立病院機構 水戸医療センター 放射線科部長
2005年 聖路加国際病院 放射線科部長

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