慢性腎臓病(CKD)は、慢性的に腎機能が低下している状態で、新たな国民病として正しい理解が求められている。日本透析医学会理事の水口潤先生より特別寄稿を頂いた。
新たな国民病慢性腎臓病(CKD)とは
慢性腎臓病(CKD)とは、原因を問わず尿の異常、エコー・CT検査などにより発見される腎臓の形の異常、あるいは腎臓の働きの低下(正常の6割程度)が3カ月以上持続する状態です。
CKDは、透析療法や腎移植を必要とする末期腎不全患者の予備軍となるだけでなく、心血管系疾患の発症および死亡の重要なリスクファクターとなります。腎臓の働きが正常の5~6割以下に低下した場合にその危険性が高くなりますが、日本での20歳以上の人口におけるCKD患者数は、6割以下に低下した患者では1926万人(人口の18.7%)、そのうち5割以下に低下した患者は418万人(人口の4.1%)となります。
わが国の慢性維持透析患者数は2006年末には約26.5万人であります。この1年間に6708人の増加がみられ、この増加傾向は今後も続くことが予想されています。CKD患者は透析患者数の増加ということから注目を集めていますが、さらに大きな問題はより多くのCKD患者が透析に至るまでに心筋梗塞、心不全、脳卒中などのために死亡しているという点であります。
血液透析、腹膜透析、腎移植とは
末期腎不全となった場合の治療方法として血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの方法があります。
血液透析・・・
腕の血管に針を刺しポンプを使って血液を体の外へ取り出し、透析器に循環させて尿毒素を除去した後、浄化された血液を体に戻します。
腹膜透析・・・
腹膜透析カテーテルより腹腔内に透析液を注入し、一定時間貯留している間に腹膜を介して体内の尿毒素を透析液に移動させます。尿毒素が十分に移動した時点で、透析液を体外に取り出すことにより尿毒素を除去します。
腎移植・・・
両親、兄弟や配偶者から2つの腎臓のうち1つの提供を受ける生体腎移植と、脳死や心臓死になられた方から腎臓の提供を受ける献腎移植の2種類があります。提供された腎臓は下腹部の膀胱近くに移植されます。移植後には拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤を服用します。
腎臓病の早期発見のために
CKDの早期発見に検尿(蛋白尿、血尿)は簡便で有効な方法であり、 蛋白尿患者は末期腎不全および心血管系疾患のハイリスク群であります。蛋白尿・血尿がともに陽性あるいは蛋白尿が多いほど末期腎不全への危険性が高いといわれています。
また腎臓の働きの評価は、血液検査による血清クレアチニン値を基にした推算式を使って行います。
今後の展望と期待
疫学調査をもとに対策を立てることにより、CKD患者の減少やCKD患者の末期腎不全への進行阻止、心血管系疾患による発作や死亡を減少させることが望まれています。
そのためには国民の検診受診による早期発見の重要性の認識を高めること、健診などで指摘を受けた患者の精密検診受診率を向上させること、さらにはかかりつけ医と腎臓専門医との連携により最適な治療が受けられる体制を整えることなどが重要と思われます。
水口 潤(みなくち じゅん)
日本透析医学会 理事
第53回学術集会 会長
川島病院 院長
1977年3月 鹿児島大学医学部卒業
1977年4月 徳島大学第一内科学教室
1982年4月 東京女子医科大学腎臓病総合医療センター助手
1985年7月 川島病院 副院長
2000年1月 川島病院 院長
2002年4月 徳島大学医学部病態情報診断学分野 臨床教授