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特集記事: 2008年6月17日 [ 週刊朝日 2008年6月27日号 掲載 ]

睡眠時無呼吸症候群(SAS)
赤柴 恒人

【特別寄稿】

日本大学医学部
内科学系睡眠学分野教授

赤柴 恒人(あかしば つねと)

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SASは睡眠中に上気道(咽頭部・いんとうぶ)が詰まり、呼吸が停止してしまう病態である。その結果、低酸素の状態が続いて、心臓や脳などに大きな影響を及ぼす。同時に睡眠も障害されるため、充分な睡眠を得ることができなくなるので、日中に異常な眠気が現れてくる。

睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome; SAS)の症状と予防

2003年に起こった山陽新幹線運転士の居眠り事件は大きな社会問題となったが、この異常な眠気は交通事故の頻発、仕事中の居眠りなど社会生活に大きな影響をもたらす。

しかし、SASはただ昼間眠くなるという単純な病気ではない。睡眠中の呼吸停止→低酸素状態の影響は、高血圧、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)、脳卒中、心不全などの原因となることが明らかになっている。重症のSAS患者を無治療で放置すると、図に示すように死亡率が有意に高くなることが証明されている。

SASの特徴は睡眠時のひどいいびきと日中の異常な眠気であり、それに肥満が加わるとSASである可能性が高くなる。肥満はSASの最大のリスクファクターであるが、日本人では約1/4が肥満を伴っていないのが特徴である。壮年~中年の男性でいびきがひどく、日中に眠気があるような人は早めに専門施設でSASの検査(睡眠検査)を受けたほうがよい。

致命的心血管イベントの発症率

CPAP療法とは

SASに対して特効的な治療法がCPAP(持続陽圧呼吸)である。就寝時に鼻マスクを装着し、マスクから空気を吸入しながら睡眠をとる。空気の圧力が上気道の閉塞を防止するため無呼吸は起こらず、充分な睡眠をとることができる。その効果は劇的で治療翌朝から熟眠感を得ることができる。

また、図に示すように、長期にCPAP治療を継続すると、死亡率が低下し、ほぼ健常者と同等にまで生存率は上昇する。ただし、この治療法は対症療法であり根治治療ではないため、ある意味でほぼ永続的に続けていかなければならない。しかし、現時点では最良の治療法がCPAPであることは疑いがなく、特に、重症例で有効性が高い。わが国では1時間当たりの無呼吸と低呼吸の和が20回以上の場合には、健康保険で使うことができる。

口腔内装具

CPAPに比べ比較的簡便で安価な治療法として口腔内装具が用いられる場合もある。これは一種のマウスピースで、就寝時にこれを口腔内に装着して下顎を前方にひきだす。そうすると、睡眠時に上気道が広がるため閉塞(無呼吸)が起こりにくくなる。軽症例には有効で、特に無呼吸の回数は少ないがいびきがひどい例には有用である。健康保険の適用も最近認められ、使用が増加しつつある。本装置は、経験のある歯科医に作成してもらう必要がある。

メタボリックシンドローム(メタボ)とSASの関係

SAS患者の多くは肥満を伴っているため、メタボを合併している確率は高く、実際、SAS患者の約半数はメタボを合併している。メタボは、肥満と耐糖能異常にもとづく病態であるが、睡眠が障害されると耐糖能が低下し、糖尿病になりやすいことが最近の研究で明らかになっている。SASは睡眠を障害させる代表的な疾患であるため、メタボの発症に密接にかかわっている可能性が高い。

減量はメタボだけでなくSASの治療においても重要な治療法であるが、現実には早期に有効な減量を成功させるには難しいことが多い。従って、SAS治療には、重症度に従って、CPAPや口腔内装具を用いて治療し、同時に減量も指導していくことが最良の方法であろう。

赤柴 恒人

日本大学医学部
内科学系睡眠学分野教授

1949年 新潟市に出生
1975年 日本大学医学部卒業
1985-86年 米国ワシントン大学医学部留学
1997年 日本大学呼吸器内科助教授
2007年 日本大学医学部睡眠学教授、附属板橋病院睡眠センター長

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