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特集記事: 2008年7月29日 [ 週刊朝日 2008年8月8日号 掲載 ]

中高年に多く、放置で嵌頓(かんとん)ヘルニアにも 日帰りによる成人の鼠径(そけい)ヘルニア治療

【監修】医学ジャーナリスト 牧野 賢治

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成人鼠径ヘルニアの症状と原因

いわゆる脱腸と呼ばれる鼠径(そけい)ヘルニアとは、太ももの付け根(鼠径部)の腹壁の筋肉や筋膜が弱くなって起こる。加齢などによって筋膜や筋肉に隙間ができ、そこから腸などの臓器が瘤(こぶ)のように飛び出す病気である。

体の構造上、男性に発症することが多く、成人では筋肉の力が落ちた40代以上の男性で、重いものを持つなど腹圧のかかる仕事や、立ち仕事に従事している人の罹患率が高い。肥満、前立腺肥大、便秘がちの人、女性では妊婦なども発症しやすいといわれる。

3種類に分かれる鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアは、部位によって外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアの3種類に分けられる。お腹の臓器を包んでいる筋膜がゆるむと、鼠径部の近くにある管を突き抜けて、臓器が飛び出てくる。これを外鼠径ヘルニアといい、力んだりするたびに腸などが飛び出したままになる。また腹壁に弱いところがあると、そこから腹膜が伸びて鼠径部近くの管を押しのけ、腹壁を貫通して臓器が飛び出てくるのを内鼠径ヘルニアという。この2つのヘルニアは合併している場合も少なくない。大腿ヘルニアは、鼠径ヘルニアの下にある大腿部の筋肉や筋膜が弱くなって膨らんでくるものをいう。

重症化する場合もある鼠径ヘルニア

成人鼠径ヘルニアは歳を重ねるごとに筋膜や筋肉の隙間が広がり、飛び出している臓器がだんだん大きくなってくる。飛び出た臓器を手で押して元に戻る状態なら、日常生活にあまり支障はない。しかし臓器が戻らなくなる「嵌頓(かんとん)ヘルニア」になると、激しい痛みや吐き気をもよおし、腸閉塞や腹膜炎を起こすなど命にかかわる危険もある。

患部の場所が下腹部のため、異変に気づいても恥ずかしがって医療機関の受診をためらってしまう人も多いが、症状を軽視せず、早めに受診することが肝要だ。

治療法は手術のみだが日帰りが可能な場合も

鼠径ヘルニアは投薬では治せず、手術で根治させるしかない。従来は、ヘルニアの出口の筋膜や筋肉を糸で縛ってふさぐ方法が行われていたが、術後の痛みが強く、約1週間の入院が必要で、再発率も10~15%あった。

しかし最近は局所麻酔で行い、短時間で終了する手術が主流になりつつあり、日帰りも可能になっている。患者の肉体的、精神的、経済的な負担が軽くなる医療技術の進歩は喜ばしいことである。以下にあげる二種類の手術法も、術後、特に問題がなければ当日帰宅できる。

メッシュ&プラグ法

鼠径部を40mmほど切開し、傘の形に似たポリプロピレン製(手術糸などに使われている素材)のメッシュプラグ(栓)を挿入して筋肉の穴をふさぎ、その上から別のメッシュをかぶせて補強する手術法。筋肉の隙間を二重のメッシュでふさぐので、筋肉を引き寄せる必要がなく、患部に無理な力がかからない。

クーゲル法

腹膜と筋肉の間に、形状記憶を持った、ポリプロピレン製楕円形メッシュ(クーゲルパッチ)を入れて、隙間をふさぐ手術法。腹膜を元の場所に戻し、鼠径部を50mmほど切開してメッシュを挿入する。体内に入ると、メッシュが元の形に戻って隙間をふさぐ。腹圧でメッシュは自然と筋肉に固定され安定する。つまり筋肉とメッシュを縫い付ける必要がないので、術後の痛みが少ない。

使用しているメッシュは安全性も高く、体への拒絶反応もない。もちろん保険適用の治療になるので、患者の経済的な負担も軽減される一石二鳥の術式だ。

ただし、すべてのケースで日帰り手術が100%可能というわけではない。患者一人ひとりのヘルニアの状態に応じて、対処法も変わってくる。手術方法に関して、納得できるまで外科医師と話し合うことが必要である。

【文/飛鳥漣】

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