ラジオ波焼灼療法(RFA)は、正常の肝臓をできるだけ障害することなく、肝臓内にできた癌のみをピンポイントで治療する、肝癌の局所治療と呼ばれる治療法の一つである。以前は主にエタノール注入法(PEIT)のみで行われていた肝癌の局所治療に、RFAはいわば革命的な変革をもたらした。肝癌の予備軍といわれる肝硬変患者さまを、癌の発生がないか定期的に慎重に診察している過程で、たとえ癌が出現しても癌部をRFAによって焼灼し、癌を確実に死滅させることが可能となった。
ラジオ波は電磁波の一種であり、ラジオ波と同様に肝癌治療に利用されているものにマイクロ波凝固療法(MCT)がある。マイクロ波と比べラジオ波は波長が随分長いため、狭い範囲を短時間で強く焼灼するマイクロ波とは対照的に、ラジオ波では広い範囲をゆっくりと焼灼するという違いがある。そのためラジオ波ではマイクロ波と比べ胆管損傷や肝臓隣接臓器損傷といった副作用が少ない利点がある。
我々の施設、香川大学医学部消化器内科においても、1999年全国に先駆けてRFAを肝癌の治療に導入し、これまで多数症例のRFA治療に取り組んできた。1999年6月に香川県で第一例目の肝癌症例にRFAを施行して以来、年間平均約100例の肝癌のRFA治療を行ってきた過程で、肝癌の局所治療に関する臨床研究を積み上げてきた。その結果、1999年初めて行った2cmの肝癌症例の治療に30分以上要したのが、現在では2~3cmの肝癌の治療は約6分で治療を完了できるまでに我々の治療技術も向上してきた。RFAを導入してからこの9年間に治療時間を大幅に短縮することができたことは、患者さまへの治療の負担を大幅に軽減でき、ひいては患者さまにとってより優しい治療の実践につながっているものと我々は考えている。
RFAは肝臓内に3cm以内の肝癌が3個以内の症例が適応となっている。肝癌のRFA治療では、治療後に局所再発をさせないためには、癌部のみを焼灼するのではなく癌の周辺まで含めて焼灼することが大切であると考えられている。そのため1回の治療でできるだけ広範囲を焼灼することが必要であるが、RFA単独治療では焼灼できる範囲が限られていた。そこで我々の施設では、エタノール注入併用ラジオ波焼灼療法(PEI-RFA)を早期より開発し、臨床応用してきた。PEI-RFAはRFA電極と平行にエタノール注入針を腫瘍内に刺入し、まずエタノールを腫瘍内に注入した後、RFA治療を行う治療である(図)。
エタノールはゆっくり腫瘍内に均等に広がるように注入し、注入後数分時間をおいてRFAを行う。エタノール注入をRFAに併用しても、特に副作用はなく安全にしかも短時間で腫瘍の焼灼を行うことが可能である。これまで我々の施設でPEI-RFAと単独RFAの治療効果を比較検討したところ以下のことが明らかとなった。
(1)エタノール注入を併用することにより肝癌の焼灼範囲が拡大する。
(2)PEI-RFAでは単独RFAと比べあまり出力(ワット数)を上げないで治療でき、治療時間も短い。
高出力での治療は治療時に患者さまに痛みを伴い、低出力での治療は痛みの軽減につながる。
(3)PEI-RFAでは単独RFAと比べ治療後の局所再発率が低い。
最近の海外の文献にも我々の治療法が引用され、単独RFA治療と比べエタノール併用ラジオ波治療の方が再発率が少ないと紹介されている。
さらに最近では、エタノールに造影剤であるリピオドールを混ぜたエタノール・リピオドール注入併用ラジオ波焼灼療法(PELIT-RFA)も臨床応用しており、この治療法もさらに治療後の肝癌の再発をおさえることができる治療であることが徐々に明らかとなってきている。
このように我々の施設では、我々独自で開発した、方法を変えたRFA治療を行っているが、この方法は患者さまに与える負担が少なく治療効果を上げることができる治療法であると我々は考え、日々治療の実践を行っている。RFAの登場によって、以前と比べ肝癌を確実に焼灼することが可能となってきたが、依然、肝癌の治療は治療後の肝癌の再発との戦いであることは今でも同じである。今後も負担が少なくしかも治療効果の上げられる治療法を開発するため臨床研究をさらに推進していきたい。








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