食生活を始めとした生活様式の欧米化と人口の高齢化によって、前立腺がんは増加率では男性のがん死の第1位です。わが国で前立腺がんを発症した患者さんは、2000年には約2万3000人、2020年には7万8000人以上となり、肺がんに次いで男性のがんのうち、2番目の罹患数になると予測されています。
一方で、前立腺特異抗原(PSA)検診の普及の結果、早期発見が可能になるとともに、従来の開腹手術に比較して安全な低侵襲手術の必要性が提唱され、わが国でも急速に普及しつつあります。それが、高密度焦点式超音波(high-intensity focused u1trasound:HIFU)で、通常の超音波をより強力にして、かつ虫眼鏡のように凹面のレンズから一定距離のある一点に集中させることができ、その焦点部分の温度を90度以上まで上昇させることができます。
治療は、全身麻酔または腰椎麻酔(下半身麻酔)のもと、治療器具(プローブ)を肛門から挿入し、前立腺全体を約2時間で照射し、治療を終了いたします。通常は、3泊4日程度の入院期間で治療が可能です。
防衛医科大学校病院およびその関連施設では、2002年から現在までに150人以上の限局性前立腺がんの患者さんがHIFU治療を受けられました。PSA値別に術後5年後の治療効果を集計したところ、10ng/ml以下の方では82%、10~20ng/mlの方では58%、20~30ng/mlの方では50%と、特にPSA値が低い方の治療成績は、従来の開腹手術や放射線療法とほぼ同等の成績が得られております。
HIFU治療の最大のメリットは、「がんを切らずに治す」という概念です。現状では、治療効果が不十分になってしまうさまざまな要因もあり、すべての前立腺がんの患者さんが適応になる治療法ではありません。しかしながら、HIFU治療は(1)患者さんへの苦痛、合併症が少ない、(2)入院期間が短い、(3)外科的切除と同等の治療成績が期待できるといった条件を満たす可能性を持った治療法の一つです。
欠点としては、(1)前立腺体積が50ml以上、前立腺に大きな石灰化、プローブが挿入できないほどの肛門狭窄がある患者さんには施行できない、(2)術後の前立腺がむくみを起こすことによる排尿障害が認められるため、通常は尿道カテーテルを約2週間留置する必要があることなどが挙げられます。HIFU治療前または直後に経尿道的前立腺切除術を併用することにより、カテーテルの留置期間は5日以内に短縮されますが、併用療法を行っているのは防衛医科大学校関連病院を含めた一部の施設のみです。
治療機器の改良を含め、治療技術の改善がなされていくことで、開腹手術を受ける体力がない方でも比較的楽に治療を受けられるような低侵襲治療法の一つとして定着していくことを願っております。
住友 誠(すみとも まこと)
防衛医科大学校病院 泌尿器科
1991年慶應義塾大学医学部 卒業
2004年防衛医科大学校 泌尿器科学講座 講師
日本泌尿器科学会専門医






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