世界で8台のうちアジア割当て1台
千葉西総合病院では、日本で初めて256列マルチスライスCTを導入することになりました。世界中で8台しか導入されていない心臓専用CTともいえる256列マルチスライスCTは、世界で有数のCT導入率を誇る日本での心臓マルチスライスCT検査のあり方に、今後、多大な影響を及ぼすものと思われます。

注目されている256列CT検査
従来、虚血性心疾患の診断方法では、局所麻酔後に手首や大腿部のつけ根の動脈からカテーテルという細い管を入れて心臓まで進めていき、造影剤を冠動脈に注入するカテーテル検査が、主流でした。しかし、血圧の高い動脈に針を刺すことによって検査後の止血処置が困難な場合や、カテーテルを動脈から入れることが原因となる脳梗塞などの合併症を起こす場合があり、極力、このようなリスクを回避できることが望ましいと考えられてきました。
近年、注目されているマルチスライスCTでは、動脈に全く触れることなく、採血や点滴で使う皮膚の静脈から造影剤を注入する従来のCT検査と同様の方法で、心臓カテーテル検査に匹敵する画像を得ることができ、心臓カテーテル検査特有の合併症もないのです。
さらに今回、導入される256列CTの検査が、64列CTの検査と比較して性能すべてが向上している中で、費用面での変更はないことは、患者さんにやさしい医療への前進といえます。

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事前投薬なし、10分で鮮明画像が得られる
この256列CTは、検査時間が3秒以内で、64列CTでの10秒以内と比較して、検査時間の大幅な短縮が特長の一つといえます。この時間短縮は、被曝量が少なくなることに結びつくとともに、息を止めて静止している時間の短縮として考えると、患者さんの立場からみた場合、画期的な進歩といって良いのです。しかも緊急の場合においても検査後の解析時間が現像まで10分という短時間のため、より迅速な対応が可能になっています。
さらに、検査時間が超高速であっても64列CTと比較して画像の質は向上しており、体格の大きな患者さんにおいても、その画質が劣化することはなく、最新状態の鮮明な画像を得られます。
検査にあたっては事前に薬の投与が必要なく、薬の投与が必要な不整脈の患者さんの場合にも対応しています。さらに造影剤がなくてもある程度、冠動脈の状態が把握できるため、病変の有無の判断には造影剤を用いない単純CTとしても使用できるのは、造影剤アレルギーをもつ患者にも対応できる利点をもつのです。

カテーテル治療方針での選択決定にも有用
CT検査では、どのような病変によって狭窄や閉塞が起こり、冠動脈がつまった状態であるかがわかります。非常に石灰化して硬くなった病変は、キラキラとした光を帯び、血の塊(血栓)が充満している病変は少し暗いのです。あらかじめ、このような情報がわかっていれば、それは治療法の選択に直接結びつきます。もし硬い石灰化であれば、カテーテルで治療する場合は、やわらかい風船(バルーン)では対応が困難となります。このような場合、ダイヤモンドのドリルで石灰化を砕くロータブレーターが有効なのです。逆にやわらかい血栓の場合は、血栓を下流に押し込んでしまうバルーンよりも、病変部へレーザーを照射することによって、血栓を速やかに蒸散させるエキシマレーザが有効といえます。

このように治療法を選択するのにCT検査を実施できれば、以後の治療を合理的に進めることができるでしょう。
【取材/相原 美和】
三角 和雄(みすみ かずお)
千葉西総合病院 病院長
1982年、東京医科歯科大学医学部卒。
同年、東京医科歯科大学医学部第三内科入局。
1985年、イリノイ大学シカゴ校にて心臓血管病理を研究後、ニューヨーク医科大学、カリフォルニア大学、ピッツバーグ大学にて内科レジデント研修、循環器臨床フェロー研修修了。
UCLAグッド・サマリタン病院にて2年半の心血管カテーテル治療専門フェロー研修修了。
1996年よりハワイ大学臨床助教授。
1998年より千葉西総合病院心臓センター長・研修委員長。
2000年より同副院長。
2003年より東京医科歯科大学臨床教授。
2004年より千葉西総合病院病院長。