リウマチへの新治療
関節のつらい痛みや腫れに悩まされる関節リウマチ。進行すると、関節の変形にも苦しめられる厄介な病気です。従来の薬物療法では、症状の進行そのものを食い止めるのではなく、骨や関節の破壊を3年間遅らせるといった防御的な治療しかできませんでした。
そうした中、最近の研究から、サイトカインは種々の病気を引き起こしたり、症状の進行に関わったりするタンパク質であることがわかってきています。その中でもTNFと称されるサイトカインは、リウマチの炎症に関わる数多くのサイトカインを誘導し、関節の腫れや骨破壊に直接関わっていることが明らかにされました。
こういったTNFの役割に注目して、それらを標的とした抗体治療としてインフリキシマブが、さらにTNFが標的とする細胞上にある受容体を標的としたエタネルセプトという2種類の薬剤がここ10年近くの間に相次いで欧米において関節リウマチの患者さんに対して用いられるようになってきました。これが抗サイトカイン療法です。
日本でもようやくここ数年の間にこの2つの薬剤の使用が承認され、多くの患者さんに福音をもたらしています。
さらに今年になってトリシズマブという新しい生物学的製剤が認可され、現在のところ優れた効果を確認しています。このように関節リウマチの治療は著しく進歩しました。
治療の現状と今後の展望
従来の考え方では、抗サイトカイン療法を用いる患者さんの多くは、これまでのリウマチ治療剤に対して効果が低い方や、どちらかといえば進行してしまった患者さんに用いるというのが一般的でした。しかし、多くの患者さんは発症して1年以内に、足が腫れたり痛みが非常に強くなってきたりします。この早期の段階から抗サイトカイン療法を行うことは非常に効果的であることが、欧米の多くの臨床研究で明らかにされています。
また私たちの経験でも、発症してから特に2年以内の患者さんに抗サイトカイン療法を行うことは、非常に効果的で、早い時期に症状が収束でき、患者さんからQOLが著しく向上したという多くの声を聞くと、やはり優れた効果があると実感しています。
抗サイトカイン療法の画期的な治療法が日本でも数多くの患者さんに用いられてきてはいますが、メソトレキサートという抗リウマチ剤との併用療法がその基本をなします。
今後、より安全性の高い、なおかつ患者さんに負担をかけないリウマチ診療の構築も急務でしょう。
西岡 久寿樹(にしおか くすき)
聖マリアンナ医科大学
難病治療研究センター長
1968年、三重大学医学部卒業。
カリフォルニア大学サンディエゴ校リウマチ科研究員などを経て
91年から聖マリアンナ医科大学教授。
99年から現職を兼任