ミニマルインターベンションとは「最小限の外科処置」という治療概念だ。最近、インプラント治療においてさまざまな『患者にやさしい』新しい治療方法が開発され、注目を集めている。インプラント治療の最前線で活躍する名医として知られる5人の先生(舘山佳季先生(札幌)、下尾嘉昭先生(東京)、西村眞先生(大阪)、高橋啓先生(愛媛)、木村勝彦先生(北九州))に最新情報を聞いた。
司会 日本においてミニマルインターベンション(MI)インプラント治療に早くから取り組まれ、普及にも努めておられる先生方にまずお聞きしたいことがあります。この治療法は、最近になってなぜこれほどまでに注目されるようになったのでしょうか?
館山 私は、随分前からMI治療を行ってきているのですが最近、患者さんからの問い合わせが突然多くなり、正直いって少し驚いています(笑)。MI治療について少し誤解されているところがあるので、まずご説明いたしますが、MIインプラント治療は、単にひとつの治療法を指すのではありません。これまでのインプラント治療は、患者さんにとっては、手術の痛みや腫れを我慢し、歯が入るまで長い時間を要するものでした。しかし、多くの歯科医師は、それを仕方がないものと思っていたんです。しかし、患者さんの訴えにもう少し耳を傾け、最新の医療技術の集大成により、手術を最小限にして、治療期間を驚異的に短縮することが可能になったのです。この治療概念こそが、MIなんです。
司会 なるほど。患者さんの立場に立った治療方法ということですが、具体的にはどんな治療方法なのでしょうか
下尾 たくさんありますよ。大がかりな骨移植手術を避けるグラフトレス手術、歯茎を切らずに、わずか数ミリの穴を開けるだけでインプラントを入れるフラップレス手術、インプラントを入れたその日に歯が入るイミディエートローディング(即時荷重)法などがあり、さらにこれらを集大成して開発された術式として、オールオン4が挙げられます。私は、このオールオン4を開発したパウロ・マローという先生に直接指導を受けたのですが、やはり欧米は、患者さん中心の医療という考え方が徹底していると思いました。痛みもなく、すぐに歯が入るというのは、患者さんの願いなのですが、それを斬新な発想と技術革新で可能にしてしまったのがオールオン4です。
司会 オールオン4は骨移植をせずに即日に歯が入る画期的なインプラント術式として注目されているようです。しかし、一部の臨床医には、この術式に慎重な意見もあるようですが皆さんいかがですか?
西村 確かに従来の術前診断の精度では、オールオン4のような術式は困難でリスクもありました。しかし、CT撮影を行いコンピュータで術前解析を行い、狙い通りにインプラント手術が実施できるシステムが開発されたことにより、状況は全く違ってしまいました。MI治療がよりスムーズに行うことが可能になったのです。
司会 画像診断とITの進歩が非常に大きなファクターということですね。
西村 その通りです。もちろん、画像診断だけでなく、MI治療を勉強し精通した経験豊かな歯科医師でないと対応困難な術式でもあります。
司会 MI治療を実施できる医療機関は、限られているということですね。ここでまた、否定的な意見を述べさせていただき恐縮ですが、欧米で開発された術式のオールオン4が日本人でもうまくいくのかという意見もあるようですが?
高橋 この本に載っている最新治療であっても、鵜呑みにせず疑問を持つのは良いことです(笑)。確かにアジア系人種は、欧米人に較べ顎の骨が薄くて弱いといわれています。だから、オールオン4は欧米人にはうまくいっても日本人にはうまくいかないんじゃないかという意見も聞きますが、それは違うと思います。なぜなら我々の症例を分析してみると、今のところ欧米の施設並みかそれ以上の臨床成績をおさめています。確かに欧米に較べ、日本の場合、非常に難しい症例が多いことは事実でしょう。しかし、我々も、日本人の患者さんで多くの経験を積んで、ノウハウも熟知していますし、大学病院との連携も取りながら、お互いに情報交換も行っています。
司会 最後に、MI治療を受ける患者さんに、どなたかアドバイスをお願いします。
木村 まず、MI治療に対応できる医療機関を選ぶことです。本やインターネットなどを参考に探してみてください。良い先生が見つかったら、治療に関する要望について、遠慮なく相談してみてください。そして、十分に納得してから治療を始めてください。誤解のないようにしてほしいのですが、MI治療は、常に同じように可能なわけではなく、患者さん個々によって条件は異なります。骨移植がどうしても必要な場合もありますし、治療期間がどうしても長くなることもあります。大切なのは、患者さんご自身が、どうすればハッピーになれるかということです。大がかりな手術や骨移植を避けるばかりでなく、そのような手術にも柔軟に対応できるのが、本当の意味でのMI治療対応の医療機関です。MI治療は、可能な限り低侵襲でスムーズなインプラント治療によって、患者さんを幸せにし、QOLの向上を図ることを目指しています。
司会 よくわかりました。まずは良い医療機関選びからということですね。本日は、お忙しいところお集まりいただき、誠にありがとうございました。

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【北海道】 舘山 佳季
札幌中央区歯科 |
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【東京】 下尾 嘉昭
岸病院附属十条岸クリニック |
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【大阪】 西村 眞 LiCCA 心斎橋 インプラントセンター 院長 |
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【愛媛】 高橋 啓 たかはし歯科 院長 |
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【福岡】 木村 勝彦 あべやま歯科クリニック 副院長 |