症状が出ないのが糖尿病の恐ろしさ
当院は開院から31周年を迎えました。多くの糖尿病の患者さんを診療し、あらためて「早期発見」「早期治療」「早期生活習慣改善」の大切さを痛感しています。糖尿病は初期のうちは、症状がまったくでな い「サイレントキラー(沈黙の暗殺者)」です。症状を自覚する頃には糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害のいわゆる三大合併症を引き起こしていたり、最悪の場合、狭心症、心筋梗塞、脳 梗塞などを発症して手遅れになる場合もあります。早期であるかどうかが患者さんの明 暗を分けますので、検診で血糖値の高さを指摘された方はもちろん、不安のある方は早 めに受診してください。
64列マルチスライスCT検査で治療の方向性が迅速にわかる
糖尿病の患者さんの病状をより細密に把握するため、当院では冠動脈撮影に64列マルチスライスCTを使用しています。拍動によって常に動いているため、従来のCTでは鮮明な画像が撮影しにくかった冠動脈の状態を診るためにはとくに有効だからです。64列マルチスライスCTなら1回転するだけで、さまざまな角度からきれいな断層画像が最大64枚撮れるので、糖尿病の症状が進むと起こりうる血管の狭窄やプラークの性状把握が可能です。検査前の処置も造影剤の静脈注射のみで、検査時間も短いため、高齢の方や運動負荷に耐えられない方も検査可能です。現在まで500例ほど検査を実施しています。ただし、腎機能(濾過能力)の指標となるクレアチニンの血中濃度値が成人で1.5mg/dl以上だと、腎機能に悪影響を及ぼす造影剤が使えないので、CTは活用できません。
早く、正確な検査結果が出るということは、患者さんの病変の進行度に合わせた治療方針を迅速に決定できるうえ、生活習慣のアドバイスもすぐ提示できるメリットがあります。そういった点においても、64列マルチスライスCTの存在意義は大きく、今後もますます需要が高まってくると思います。
制度確立と良質な治療で合併症ゼロを目指したい
血糖値が正常とも糖尿病ともいえないグレーゾーンの範囲のことを「境界型(または耐糖能障害)」といいますが、厚生労働省の2006年発表のデータによると、推計1200万人がこの境界型といわ れています。将来、この範囲の方たちが糖尿病になり、合併症を引き起こすか引き起こさないかが重要です。最近の傾向としては、太り気味で動脈硬化の気がある40~50代の男性、いわゆる働き盛りの 年代にこの境界型が増えています。
もし働き盛りの方々が糖尿病の合併症を発症し、病に倒れてしまったらどうなるでしょうか。家族のためにも自身の健康管理には万全を期しておいてもらいたいですし、国力の問題としても軽視できないと思います。境界型の人数を考えれば、決して大げさな心配とはいえないと危惧されます。忙しくて病院に行く時間がなく、自分の体調管理がおろそかになりがちな働き盛りの方々にも、気軽に治療を受けられるような社会制度も望まれます。
前述した64列マルチスライスCTなど、先進機器の導入、優秀なスタッフによるチーム医療、患者さんの心情への理解。当院では、今後も心をこめた良質の糖尿病治療を提供していき、患者さんのQOLを保ちながら、合併症ゼロを目指して、糖尿病のある幸福な人生のために、日々邁進していきたいと考えています。
陣内 秀昭(じんのうち ひであき)
医療法人社団陣内会 陣内病院 院長
1988年3月熊本大学医学部卒業。
国立熊本病院内科勤務、水俣市立総合医療センター循環器科医長を経て
97年5月に陣内病院副院長就任。
07年4月に陣内病院院長就任。
日本糖尿病学会認定糖尿病専門医






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