内視鏡下の大腸がん治療
近年、食生活の欧米化などに伴い、わが国においても大腸がんが増加の一途をたどっています。そうした中、早期の大腸がんや大腸ポリープに対する内視鏡治療も進歩しており、以前は開腹手術を要した治療も、内視鏡下に行うことが可能となっています。
大腸内視鏡検査で発見される病変は大腸がんと大腸ポリープに大別されます。ポリープは粘膜の表面から盛り上がっている病変の総称で、明らかにがんと認められるものは除かれ、不明のものは病変切除後の病理学的診断を終えるまで暫定的にポリープと呼ばれます。
粘膜や粘膜下層の浅い部分に生じるがんとポリープは内視鏡的に切除することが可能で、その際に用いられるのが「ポリペクトミー」です。肛門から内視鏡を入れ、先端からスネアと呼ばれる輪状のワイヤーを出してポリープに引っ掛け、その根元を締めて高周波電流で焼き切ります。病変がきわめて小さい場合には、ワイヤーでなく、先端がハサミのようなもので焼き切る「ホットバイオプシー」を、隆起が低いものや陥没した病変には、粘膜下部に生理食塩水を注入し、病変を隆起させてワイヤーで焼き切る「EMR(内視鏡的粘膜切除術)」を用います。これらの内視鏡治療は患者さんの体の負担も少なく、ほとんどの場合で入院の必要もありません。
内視鏡治療が可能なのは、がん細胞が粘膜にとどまっている早期がんとなります。がんが粘膜下層にまで浸潤している場合、軽度・中等度・高度と分けられ、内視鏡治療が適用できるのは、リンパ節への転移がほとんど見られない軽度までと考えられます。
早期のがん発見のためにも、大腸がんの罹患率の高まる40歳を過ぎたら、定期的な大腸内視鏡検査の受診をお勧めします。
佐竹 儀治(さたけ よしはる)
田坂記念クリニック 院長
昭和大学医学部客員教授。
2000年より田坂記念クリニック院長に就任。
胃・大腸の内視鏡による検査において、これまでに数多くのポリープ、
がんの発見・治療を手がけている。