屈折異常で起こる近視・遠視・乱視
遠くのものの映像が、網膜よりも手前にピントを結んでしまう状態を近視といいます。近視の方は近くの物がはっきり見えますが、遠くの物はぼんやりとしか見ることができません。逆に遠視は、網膜に達するまでにピントを結べない状態をいい、近くも遠くにもピントが合っていないことになります。角膜がゆがんでいると、光が強く曲がる部分と弱く曲がる部分が生じ、映像のピントが合う位置が場所によって異なり、網膜にはぼやけた像やだぶった像が映し出されます。この状態を乱視といい、近視・遠視・乱視をまとめて屈折異常と呼びます。
エキシマレーザーと視力回復
手術で屈折異常の治療を行うことを屈折矯正手術といい、現在最もポピュラーな方法はレーシックを中心としたレーザー手術です。レーザー屈折矯正手術にはエキシマレーザーという紫外線レーザーを用います。2006年、数社のエキシマレーザー装置を用いてレーシックを行うことが国の薬事・食品衛生審議会の部会で承認され、正式に本術式が国に認められました。
手術は、マイクロケラトームとよばれる精密な装置で角膜のフラップ(ふた)を作ります。フラップを裏返したあとで露出した角膜をエキシマレーザーで正確に削り、再びフラップを元の位置に戻して終了です。目薬の麻酔のみで片眼10分ほどで終了し、手術終了後に帰宅できます。視力の回復が早く両眼の同時手術も可能です。ほとんどの場合、術後早期からの社会復帰ができ、多くの方は眼鏡やコンタクトレンズなしで生活できるようになります。
ただし、特殊な眼の病気や、重度の全身の病気、妊娠・授乳中の方、特殊なライセンスが関与する場合などは受けられないことがあります。また、本手術は安全性の高い術式ですが、手術である以上は合併症が発生する可能性があります。しかし、そのほとんどは早期に適切な治療を行うことにより、症状を抑えることが可能です。従って、手術翌日だけ診察を行うのみではなく、その後も責任を持って自施設にて診察を行っている医療施設を選択すべきです。
日本眼科学会からエキシマレーザー屈折矯正手術のガイドラインが出されていて、ここに手術の適応や禁忌などが詳しく定められています。一般の方でも下記のアドレスから確認することが可能ですので、手術をお受けになる際には一読され、不明点については主治医に確認されることをお勧めします。
*http://www.nichigan.or.jp/member/guideline/laser.jsp
柴 琢也 (しば たくや)
東京慈恵会医科大学眼科学教室 講師
日本眼内レンズ屈折手術学会 理事
医学博士
1994年 東京慈恵会医科大学卒業。
国立東京第二病院(現独立行政法人国立病院機構東京医療センター)を経て
1996年 東京慈恵会医科大学眼科学教室。
2002~2003年、フランス国立眼科病院Quinze-Vingtsに留学。
現在、東京慈恵会医科大学附属病院 眼科屈折矯正外来担当、
日本眼内レンズ屈折手術学会理事・編集委員。