設立1周年を迎えた日本先進インプラント医療学会
2008年1月、日本先進インプラント医療学会(Japanese Society for Advanced Implant Medicine : AIM)が発足し、同年8月24日に東京商工会議所で第1回総会・学術大会を、その前夜に学会設立記念祝賀会を開催しました。学術大会は「歯科医療の新時代を開く」をメインテーマに、国内有数の研究者、臨床家を講師に迎え、レベルの高い講演、シンポジウムが続き、第1回学術大会にふさわしい内容の濃い大会になりました。
インプラント医療を広く国民に提供するために
本学会はこの10年間継続したIAI研究会を発展的に解消し、学会として立ち上げたもので、歯科医療におけるインプラント医療の地位をさらに確実なものとし、学際的にも発展させることを目標としています。現時点で会員数は1200名を数え、積極的な学会活動を開始しました。
近年、インプラント医療は飛躍的に発展し、その材質も埋入技術も、さらにこれらと関連する補綴や歯周処置もさまざまな問題を解決し、もはや21世紀は義歯の時代からインプラント医療の時代へと変貌した感があります。ただし、現状ではさらに克服しなければならない事柄がいくつか積み残されており、国民の皆様に良質で安全な医療を提供するために、学会としても早急な解決を図る必要があります。
歯科医師の研鑽のための学術的・学際的な場の創設
近年にいたっても、インプラント埋入時の医療事故に出遭うことがあります。また、高齢社会の急速な到来により、インプラント医療も基礎疾患への対応が急務となっています。このため、歯科医師に求められる知識はかつてに比較して飛躍的に増加し、インプラント技術のみならず、全身の評価も重要となってきました。しかし、このような医療技術や知識を確実なものとする臨床研修の機会や場は必ずしも充分とはいえないのが現状です。
学会のさらなる発展と活動強化を目指して
以上のような背景を踏まえ、学会では全国各地に学会支部を創設し、学会主催の研鑽の場を提供することにしました。そこでは基本的なインプラント埋入技術の習得にとどまらず、その技術を難症例にも発展させるためのアドバンスコースを設ける予定ですが、さらに緊急事態発生時の心肺蘇生(CPR)、自動体外式除細動器(AED)の使用法、異物による気道閉塞の解除法などの一次救命処置(BLS)を学ぶヘルスケアプロバイダーコースも立案中です。これらの研修会を系統立てて開催し、国民の皆様により安全かつ安心なインプラント医療を提供したいと考えております。
インプラント医療を国民の医療に
インプラント医療はともすれば技術偏重になりがちで、治療の根底に「身体に対していかに歯科治療がなされるべきか」という視点と全身評価が見落とされる傾向があります。
今後の歯科治療には「口腔を通して全身を診る」能力がますます求められるでしょう。高齢社会を迎え、インプラント医療が真の国民医療となるために、歯科医師側の意識の変革も重要ですが、学会の活動と責務も限りなく大きいと感じております。
千葉 博茂(ちば ひろしげ)
日本先進インプラント医療学会(AIM) 理事長
東京医科大学口腔外科学講座 主任教授
1972年日本歯科大学歯学部卒業。76年同大学大学院博士課程修了。
同大学講師などを経て83年から西ドイツハンブルグ大学医学部顎顔面外科学教室留学。
帰国後、東京医科大学教授などを経て、95年から同大学主任教授。