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特集記事: 2009年2月12日 [ 『いい病院 2009』 2009年2月12日 掲載 ]

いい歯科2009

【監修】日本歯科大学 生命歯学部長 住友 雅人


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歯科医院では、口腔内の問題を解決するために多くの治療を行っている。歯を失わないために虫歯や歯周病の予防及び治療を行うほか、インプラント治療や優れた入れ歯により、歯を失っても本来の咀嚼(そしゃく)機能に近づけることが可能だ。咀嚼機能を回復させるだけでなく、歯並びや見た目を整える治療も行っている。

多くの歯を保つことが健康の維持にも重要

虫歯や歯周病などで歯を失うと、食事を楽しむことが難しくなるだけでなく、よくかめなくなることで全身の健康にも悪影響が出るといわれている。ほとんどの食物をかみ砕くために必要な歯の本数は20本とされる。20本の歯を有する人の割合は40歳代までは9割を越すが、年齢に伴って減少し、80歳以上では2割以下になる(厚生労働省「平成17年度歯科疾患実態調査」)。

厚生労働省と日本歯科医師会では「8020運動」を展開し、80歳になっても自分の歯を20本保つことを呼びかけている。その実現には、虫歯と歯周病の治療や、予防のための定期的な歯科検診が必要だ。また、歯を1本でも失った場合、満足な咀嚼が難しいだけでなく、残っている歯が空いた箇所に倒れて不正咬合になるなどの悪影響が生じるため、何らかの手段で失った歯を補う必要がある。

歯を失わないために歯周病の治療と予防を

歯を失う最大の原因とされる疾患が歯周病だ。歯垢と、歯垢が固まった歯石の中の細菌によって発症し、歯の周辺組織に炎症を引き起こす。初期の段階では歯肉にとどまるが、症状が進むと歯を支えている歯槽骨まで破壊され、最終的には歯が抜けてしまう。また、歯周病は歯だけではなく、肩こりや胃腸障害など、口腔以外に悪影響を及ぼす可能性も指摘されている。

歯周病は自然に治ることがないため、歯科医師による治療が必要だ。初期の段階なら歯垢と歯石の除去で治療できるが、進行して歯周ポケット(歯と歯肉の隙間)が深くなったり、骨の破壊が進んだりしている場合には外科手術を要する。手術では歯肉を切開し、奥深い歯石や感染部分を除去することで歯周組織の回復を図る。破壊の程度によっては歯周組織の再生治療を行う場合もある。

しかし、歯周病は自覚症状の少ない早期に発見できない限り、歯周組織を発病前の状態まで回復させることが難しいため、予防が何よりも大切になる。予防には歯垢や歯石の徹底的な除去が最も効果的で、日頃から正しい歯磨きを行いながら定期的に歯科医院を受診し、歯磨きでは除去しきれない部分の歯垢や歯石の除去を受けることが重要だ。歯科医院ではPMTCという歯のクリーニングが受けられる。PMTCでは専用機器を用いた歯垢および歯石の除去、研磨剤を用いた色素やヤニによる着色の除去、虫歯予防のためのフッ素塗布などを行う。

また、歯科医院では正しい歯磨きの指導も受けられる。隅々まで歯を磨けていると自分で思っていても、実際には十分磨けていないことが多い。歯科医師や歯科衛生士の指導を受けることで、歯の形や生え方に合わせた効果的な歯磨きを身につけることができる。正しい歯磨きを続けながら定期的にPMTCを受けることで、歯周病と虫歯の発生をほぼ抑えることが可能だ。

歯周病の過程:歯は、健康な状態だと歯肉がピンク色で引き締まっているが、歯周病にかかると次第に歯肉が腫れて出血や膿が見られるようになる。症状が進むと歯周ポケットが深くなっていき、歯槽骨が溶けて歯がぐらついてくる

インプラント治療で本来の歯に近い状態に

失った歯を補う手段の一つとして注目されているのが、人工歯根をあごの骨に埋め込み、それを土台にして人工歯を固定するインプラント治療である。

人工歯根の材料として一般的に用いられているチタンには骨と強く結合する性質がある。そのため、人工歯根はあごの骨にしっかり固定され、本来の歯と同じような感覚で食事を楽しむことができる。また、両隣の歯を支えにしたり、削って土台にしたりすることもないため、健全な歯に対する影響も抑えられる。

治療は一般的に、カウンセリングや診断などを基に治療計画を立てることから始まる。診断の際にはレントゲン撮影などにより、あごの骨の量や質、形などを確認する。続いて、治療計画に従って人工歯根を埋め込む手術を行う。手術は歯肉を切り開いてあごの骨に穴を開け、人工歯根を埋め込んで歯肉を縫合するという流れで進む。必要であれば、手術前に歯周病の治療や修復不可能な歯の抜歯を行う場合もある。

人工歯根と骨が結合するまで、下あごは3~4カ月、上あごは半年ほどの期間を要するため、手術後は仮歯として取り外し式の入れ歯などを装着する。そして、人工歯根と骨が結合してから再度手術を行い、人工歯根に土台を取り付け、その上に最終的な人工歯を装着して治療が完了する。治療後、インプラント周囲炎などが原因で人工歯根が抜けてしまうこともあるため、定期的なメンテナンスが必要だ。

こうした通常の治療のほか、近年では治療技術や機器の進歩により、手術当日に仮歯を装着して食事ができる即日インプラントや、4~6本のインプラントで義歯を支えるオールオン4・オールオン6といった治療も行われている。

インプラント治療は保険適用外のため、治療費はすべて自己負担になるが、定期的に正しい手入れを行えば半永久的に使うことができ、何度も通院して治療しなおす必要がない。残った歯に負担を与えることなく治療できることも含めて長期的に考えれば、それに見合った多くの利点が得られるだろう。

インプラントの構造:インプラントはあごの骨の中にネジのような形をしたチタン製の人工歯根を入れ、その上に人工歯を固定する

多様な入れ歯から自分に適したものを

インプラント治療は、外科手術を伴うことから、治療に不安を感じる人や、心臓病などの全身疾患によって手術が難しい人、重い糖尿病で治療の予後が悪いと予測される人などには向かない場合も出てくる。そうした場合には入れ歯でかみ合わせを維持することになる。

入れ歯は天然歯と異なり、かむ力を咀嚼粘膜(歯ぐきの粘膜)で受け止める。本来、粘膜はかむ力を受け止める組織ではないため、あごに合わない入れ歯を用いると、特定の部分だけに力が集中して痛みを感じてしまう。それを防ぐためにも、多様な種類の入れ歯の中から自分にあったものを選ぶことが大切だ。

入れ歯の大きな区分として、保険診療のものと自由診療のものが挙げられる。保険診療では保険の適用範囲から外れる材料や技術は利用できないが、その分、自己負担の費用を抑えられる。一方、自由診療では、費用は高くなるが義歯床や固定方法に多様な材料や技術が使用できる。

例えば、上あごに接する部分は、保険診療の入れ歯ではレジン(プラスチック)しか使用できないために厚くなってしまうが、薄い金属を使用できる自由診療ならば薄くでき、装着時の違和感が少なくなる。さらにレジンと違って食物の温度感覚が伝わりやすくなるため、食事の際に感じる感覚も、より自然に近づく。

入れ歯の固定方法においても、保険診療では金属のばねを残っている歯にかける方法しか選択できない。自由診療では磁石の使用や、残った歯に金属の内冠、入れ歯に金属の外冠を取り付け、茶筒にふたをするように両方を合わせて固定することが可能になる。

入れ歯を作製する際、歯科医師は口元が美しくなる位置や高さ、入れ歯を入れたときの表情や顔の形なども考慮する。優れた入れ歯を使って天然歯と同じように食事を楽しむためには、患者もきちんと歯科医師に相談し、共に治療に取り組んでいく姿勢が望まれる。

保険適用外の主な入れ歯:磁性アタッチメント/コーヌスクローネ/ノンクラスプデンチャー/シリコーン義歯

選択肢の広がる矯正治療

歯並びが乱れていると見た目が悪いだけでなく、歯磨きが難しいことで虫歯や歯周病を発症させる可能性も高まる。さらに、かみ合わせにも悪影響を及ぼして歯全体に均等に力をかけることができず、一部の歯に過度の負担をかけて消耗を招く。頭痛や肩こりなど全身にも悪影響が生じるため、適切な治療が求められる。

矯正治療は、上下のあごの位置と働きを考えながら、歯並びやかみ合わせを理想的な状態に導いていく。一般的な治療では、歯の1本1本に小さな金具を取り付け、そこに通した形状記憶合金のワイヤーの力で歯を少しずつ動かしていく。

通常の矯正装置は歯の表側にあり、治療中であることが他人からわかってしまうが、最近では、矯正装置をわかりにくいように装着する治療法も見られるようになった。そのうちの一つが、歯の裏側に金具やワイヤーを取り付け、外から矯正装置が見えないようにする裏側矯正(舌側矯正)だ。矯正装置が見えなくなることで、社会生活上において受ける精神的なストレスからも解放される。

他に、ワイヤーを使わないワイヤーレス矯正(マウスピース矯正)といわれるものもある。マウスピースの形をした透明なプラスチック製の装置を歯列に被せて矯正治療を行うため、治療中であることが他人からわかりにくい。さらに、食事や歯磨きなどの際に取り外せるので、口内も清潔に保てる。

一般的な治療法と異なる原理を持つのが、入れ歯に似た装置を使う床矯正治療だ。これは、広さをネジで調整できる装置を口内に装着し、歯を動かすと同時にあごを正しい位置に変化させることで歯並びを矯正する。通常の治療と異なり、歯を抜かずに行えるなどの利点を持つ。

矯正治療は、それぞれの治療法にメリットとデメリット、適応症例の違いがあるほか、費用も治療次第で多岐に分かれる。そのため、歯並びやかみ合わせが気になった際には、矯正を専門に行う歯科医師を受診し、治療について詳しく話を聞くのがよいだろう。

ワイヤーを表面につける通常の矯正治療。 前後のずれのような大きな乱れも矯正できる

白い歯を手に入れるホワイトニング

歯は、加齢による黄ばみ、コーヒーやたばこなどの嗜好品、食品に含まれる着色物質によって変色が進む。コーヒーやたばこなどの着色物質による変色は、PMTCを行うことである程度までは改善が可能だ。しかし、エナメル質の奥深くまで着色物質が沈着している場合や、加齢によって黄ばんだ場合などはPMTCでは改善できず、ホワイトニングと呼ばれる治療が必要になる。

ホワイトニングは歯科医院で行われるオフィスホワイトニングと、患者自身が自宅で行うホームホワイトニングに分けられる。ホームホワイトニングは薬剤のみを用いた治療で、専用のマウスピースを作ってその中に薬剤を入れ、毎日一定の時間装着する。効果が現れるまでに日数がかかるが、元の色に戻りにくい。

一方、オフィスホワイトニングは、プラズマライトなどの特殊な光も薬剤に併せて使用する。薬剤を塗った上で、光を当てて歯の色素を分解することにより、短期間で歯を白くすることが可能になるが、ホームホワイトニングに比べて元の色に戻りやすいのが難点だ。また、両方の治療を併用するコンビネーションホワイトニングで、より効果を高めることもできる。

歯の形を整えるセラミック治療

歯の外見を整える手段として、ホワイトニング以外に、セラミックを歯に貼り付けたり、被せたりする治療がある。セラミックは見た目が美しく、ほとんど磨耗しない素材で、人体への親和性が高いために歯ぐきを痛める心配が少ない。

代表的な治療には歯の表面を0.5mm程度削って薄いつけ歯を貼り付けるラミネートベニアがある。神経のない歯など、ホワイトニングでは白くするのが難しい歯にも行えるほか、歯並びのわずかなずれも補正が可能。大きい変形などのある歯は、表面全体を削ってクラウン(冠、被せもの)を被せるセラミッククラウンで修復できる。その一種のオールセラミッククラウンは、土台や裏側に金属を一切使わないため、非常に透明感があり、天然の歯とほとんど見分けがつかない。

ラミネートベニア:ラミネートベニアは主に前歯に使われ、治療期間は一般的に2回の施術で7~8日ほどかかる/オールセラミッククラウン:セラミッククラウンは、歯の表面全体を削ってクラウンを被せることで、大きな歯のねじれや悪い歯並びなどを修復できる

子供の口腔内の健康を管理する小児歯科

生後6カ月くらいから生え始める乳歯は、いずれ永久歯へと生え変わっていくため、虫歯ができても治療されずに放置されることがある。しかし、乳歯は永久歯が正しい位置に生えるように導く役割も持つため、正常なかみ合わせや歯並びを将来獲得するためには大切なものだ。それだけではなく、乳歯の虫歯からその下にある永久歯に虫歯菌が伝染し、正しい発育を阻害する可能性も出てくる。こうしたことを考えれば、乳歯の時から子どもの歯の健康を気遣うのが望ましい。

子どもの患者を専門もしくは中心に診療する小児歯科では、子どもの心身の発達に合わせて口腔内の健康を管理し、正常な歯とあごの発達を促していく。口腔内の健康管理のためには、通常の虫歯治療だけではなく、虫歯の予防処置も重要だ。乳歯や生えたばかりの永久歯は、表面のエナメル質が不完全な状態であり、虫歯になりやすい。特に、奥歯の永久歯(六歳臼歯)はかみ合う面の溝が深く、複雑な形をしていることから歯が磨きにくく、汚れが溜まりやすいため、注意を要する。

そのため、小児歯科では奥歯の溝を薄いレジン(プラスチック)でふさいで虫歯を防ぐシーラントや、歯質を強化するフッ素の定期的な塗布といった治療を行っている。さらに、乳歯の歯並びが永久歯の歯並びに影響を与えることや、かみ合わせが全身の健康と関係することから、乳歯の段階より矯正治療を行う歯科医院もある。早期に矯正治療を開始することで、幼児の頃から正しいかみ合わせで食事ができ、全身の健康によい影響を及ぼしたり、全体の治療期間を短くしたりできる。

乳歯の時期から永久歯が生えたばかりまでの時期において口腔内の健康を保つことが、将来的に虫歯に強い歯を持つことにもつながる。子供の口腔内の状況に常に注意を払い、気になる点が見られたら積極的に小児歯科を受診したい。

シーラント:シーラントは歯ブラシの届きにくいような奥歯の溝をプラスチックなどで埋める治療法。時間が経つと欠けたり脱落したりする可能性があるため、定期検診が必要

苦痛や不安を取り除く歯科麻酔科医

現在ではインプラント治療をはじめ、手術を要する歯科治療が数多く行われている。治療中の麻酔は局所麻酔が中心だが、長時間にわたるような手術では全身麻酔が用いられる。そうした麻酔は歯科麻酔科医によって行われる。

歯科麻酔には、専門的な技術と知識が求められる。局所麻酔では、手術の範囲を確実に無痛の状態に保ち続ける特別な配慮が必要になり、全身麻酔と同様に血液の循環や呼吸などの全身状態をモニターしなければならない。

さらに、治療への恐怖心や緊張感を和らげるための麻酔を用いる場合もある。例えば、高血圧症の患者では、治療への緊張感で血圧が上昇した結果、頭痛や吐き気などの症状を誘発する危険性もある。歯科麻酔科医は全身の状態を確認しつつ、笑気ガスの吸入や精神安定薬の静脈注射によって浅い睡眠状態にする精神鎮静法などを用いることで不安を取り除く。歯科治療上問題となる全身疾患を持つ患者に対しても安全に治療が行える。

症状に適した歯科医師を選ぶ

さまざまな面で大きな進歩が見られている歯科治療を適切に受けるためには、各種治療を専門に行っている歯科医師(専門医)を見つけるのが望ましい。自分の症状にきちんと合った治療を専門とする歯科医師なら、さまざまな疑問にも詳しく答えてもらえるため、安心して受診できるだろう。

さらに、長期的な口腔内の健康を維持するためには、自分に合った歯科医師をかかりつけ医にすることが大切だ。定期的な検診を受けて歯を健康に保ち、歯に異常が現れた際にも、早期に適切な治療を受けるよう心がけたい。

【文/鈴木 健太】

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