関節軟骨の磨耗を原因とする変形性股関節症などの関節疾患に対して、人工関節置換術は人工関節を埋めこむことで痛みを取り除いて可動域を回復させる。この手技において、辻整形外科クリニックの辻俊一理事長は、負担の少ない最小侵襲手術に早期から着目し、現在ではほとんどの症例に対して行っている。
筋肉を傷つけないことで早期の回復を可能に
辻理事長は、2007年1~12月に股関節と膝関節の合計で121例の人工関節置換術を行った。同手術を始めてから現在までの症例数は3000例に近い。現在では、ほとんどの症例において、手術の際にできる傷の小さい手術を行っているという。これは、一般的にMIS(最小侵襲手術)と呼ばれる手法で、術後の痛みや外見への影響を抑えられるという利点がある。
しかし、「MISの本質は筋肉を傷つけずに手術するということにあります。傷を小さくする限度は、治療効果を最大にする範囲にとどめるべきなので、実際には極小侵襲手術と呼ぶのが正しいでしょう」と辻理事長は述べ、筋肉を傷つけないことを重視した手法を工夫し、実行している。筋肉を傷つけなければ、早ければ手術翌日に歩くことも可能。股関節疾患に対しては2002年ごろからほぼ全例をMISで行い、その有用性が確認できてから膝関節疾患に対しても行うようになったという。
より正確に行うために全手術を目視で直接行う
こうした手術は厳密な処置が求められるため、辻理事長は直接目視下で行うことを重視している。例えば、人工股関節置換術は、股関節の前方もしくは後方から切開するが、辻理事長はすべての手術を前方からの切開で行う。「股関節は体の前方を向いているため、前方から行わなければすべてを目視できません」。前方からの手術は、手術創が股関節の曲がる方向と反対にあるため、合併症の脱臼が起こりにくいという利点も併せ持つ。
さらに、目視下ならば手術において細かい調整も可能。個人個人の生活パターンによって関節の曲げ方や使用頻度は大きく異なるため、それに適するように向きなどを変えて人工関節を埋め込む。
「現在では適切な手術を受ければ、人工関節を20年保たせることも期待できます」と辻理事長。そのためにも、患者に合わせた人工関節や手法を適切に選び、正確な手術を心がけている。
【取材/鈴木 健太】
辻 俊一(つじ しゅんいち)
医療法人社団 辻整形外科クリニック 理事長
1975年に金沢大学附属高校、81年に金沢大学医学部を卒業し、
同大学付属病院整形外科に入局。
86年に米ミネソタ大学整形外科へ人工股関節と人工膝関節の臨床留学。
88年に金沢大学大学院卒業、医学博士号取得。
93年に辻整形外科クリニック開院。
病院ホームページにて手術に関する情報を詳細にまとめている。








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