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特集記事: 2009年2月12日 [ 『いい病院 2009』 2009年2月12日 掲載 ]

正しい診断と治療が症状を改善 うつ病治療の現在

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30代以上の働き盛りをじわじわ蝕む心の病

現代社会は多くのストレスを抱えている。そのストレスにさらされ続け、気持ちが落ち込む、眠れない、食欲がない、何もしたくないといった症状を訴える人がいる。これこそがうつ病の典型的症状で、最近、働き盛りの患者がとくに急増している。

WHO(世界保健機関)の診断基準によると、うつ病は躁(そう)うつ病や躁病とともに気分障害と呼ばれ、統合失調症など他の精神疾患とは区別されている。うつ病になると前出のような症状のほかに、あらゆる物事に対する興味を失う、気力や意欲の低下、人間関係の拒絶、絶望感などの症状が挙げられる。こうした症状が2週間以上続くと要注意といわれるが、患者によって症状や程度、経過はさまざまだ。

うつ病になりやすいのは、まじめで責任感の強い人に多いといわれる。男性より女性に多いのは、思春期、妊娠・出産、更年期と女性ホルモンによる体の変化と関係しているといわれている。また最近では、企業内における人間関係やトラブル、リストラなど、職場環境の急速な悪化により、男女を問わず、働き盛りの世代にうつ病が急増している。

職場での強いストレスは、心身の健康に悪影響となる。それでも無理をしていると、うつ病を発症してしまい、治療しないまま進行すると重症化し、自殺に結びつく可能性もある。

増える自殺死亡者の90%に精神疾患の傾向

日本人の自殺死亡者は年間約3万人を数え、死亡原因全体の第6位を占めるようになった。年齢別に見ると、20~39歳では自殺は死因順位の第1位となっている。そのほかの年代も、自殺の占める割合が高く、15~44歳の範囲では20%を超えている。(2007年厚生労働省「人口動態統計」自殺対策白書)。

自殺死亡者の90%以上がなんらかの精神疾患にかかっていると推定されており、とくに高い年齢層の自殺者の多くは、うつ病がその背景にあると考えられている。うつ病は特別な人がかかるわけでなく、だれでもかかる可能性があり、決して珍しい病気ではない。

うつ病患者に対し、企業側も対策に乗り出している。企業全体の生産性を向上させるために、EAP(従業員支援プログラム)を導入し、社員のメンタル面の対策や休職者への復帰支援を行っているところもある。

うつ病治療の基本は抗うつ剤による薬物療法

うつ病は、脳内の神経伝達物質が欠乏することにより生じるという説が最も有力である。1千億以上の脳内神経細胞は、シナプスと呼ばれる連結部を通して情報を伝達している。このとき、神経細胞から神経細胞への情報の受け渡しに用いられているのが、モノアミン類(セロトニンやノルアドレナリンなど)と呼ばれる神経伝達物質だ。これらの成分が、精神の安定や心の動きに作用しているといわれている。

治療は薬物療法で、抗うつ薬を中心に抗不安薬や睡眠薬を併用していく。抗うつ薬の種類は多く、中等症までのうつ病に対してはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが有効だが、十分でない場合は、三環系などの薬を使用することもある。薬による治療を根気よく続けていけば、約半数以上の患者が治るといわれている。

電気刺激のECT療法と認知行動療法の有効性

薬が効かない人や高齢で薬の副作用が強い人、重篤なうつ症状の人は、脳に電気刺激を与えるECT療法(無けいれん通電療法)が効果的だ。ECT療法は麻酔薬と筋弛緩(しかん)薬を投与して、こめかみに張り付けた電極から電気刺激を加える。けいれんも起きず、苦痛なく治療でき、約80%の患者に効果がある。

認知行動療法は、行動療法と認知療法が融合して成立した心理療法だ。何度も行われるカウンセリングのなかで、患者の物事の認知や行動を変えることによって、否定的な感情や行動を修正していく。認知行動療法は、うつ病に限らず、パニック障害、対人恐怖に対しても効果が実証されている代表的な心理療法である。

うつ病患者が静養できるストレスケア病棟

ストレスケア病棟とは、うつ病患者がゆったり静養しながら治療できる専門施設のことだ。通院での薬物療法で治らないと診断されれば、これまでは精神科病棟に入院することが多かった。従来の精神科病棟では、あらゆる精神疾患の患者が一緒に入院しており、ストレス性疾患の一つであるうつ病の患者はゆっくり休めない。ストレスケア病棟は、心の病気は心身ともに十分な休養が必要で、癒されてこそ治るものであるという考えから作られた。

ストレスケア病棟では薬物療法だけに頼ることなく、音楽や心理、栄養の各療法など、多くのプログラムが用意されている。施設によっては、患者の身の回りのめんどうを見る世話役を配置するなど、患者が快適に過ごせるような環境を整えているところもある。今後も増加が予想されるうつ病患者に比例して、ストレスケア病棟も増えていくだろう。

重くならないうちに専門医への早期受診を

うつ病治療の診療科は、精神科、心療内科などだ。気分が落ち込んだり、怒りっぽくなったりと、感情の起伏が激しいときは軽症うつ病の兆候であることも多い。また、頭痛や腹痛など体の症状がたびたびあり、1カ月以上続くのであれば、仮面うつ病である可能性が高い。時間が経てば心の症状も出てくる場合が多いので、どちらにしてもひどくならないうちに、早めに専門医の診察を受けることが大切だ。

【文/飛鳥 漣】


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