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特集記事: 2009年2月12日 [ 『いい病院 2009』 2009年2月12日 掲載 ]

ホルモン異常がつらい症状を引き起こす 甲状腺疾患の診断と治療
高見  博

【特別寄稿】

日本甲状腺学会 理事

高見  博 (たかみ ひろし)

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甲状腺ホルモンの働き

甲状腺ホルモンの量を適度に保つよう調節をしているのが脳の視床下部と下垂体です(図1)。

図1

下垂体は甲状腺ホルモンの合成・分泌を促す甲状腺刺激ホルモン(TSH)を出しています。甲状腺ホルモン量が多いと、TSHは減少し、甲状腺ホルモンが少ないときは反対に増加します。この甲状腺ホルモンにはサイロキシン(T4)、トリヨードサイロニン(T3)があり、体の成長に不可欠で、全身の臓器の働きの調節や、たんぱく質・脂質などのエネルギーの調節を行っています。このホルモンバランスが崩れると、全身にいろいろな症状が現れてきます。

甲状腺疾患が疑われる症状

症状として現れる主な甲状腺の病気はバセドウ病(甲状腺機能亢進症)と橋本病(慢性甲状腺炎)です。両者とも甲状腺の腫大はありますが、バセドウ病が機能亢進であるのに対し、橋本病は反対に機能低下であり、逆の症状が出てきます。診断のポイントは、必ず甲状腺を触る、皮膚は甲状腺の機能を反映する、不整脈・頻脈・遅脈には注意する、原因不明の心不全では甲状腺の病気も考える、原因不明の体重減少はバセドウ病も考える、バセドウ病特有の眼に注意するなどです。

●バセドウ病(甲状腺機能亢進症)

20~30歳代の女性に多く、甲状腺の腫大、頻脈、動悸、眼球突出などのほか、手の振るえ、発汗、体重減少、下痢、倦怠感、いらいらなどの多彩な症状が出ます。また、合併症には、心房細動、バセドウ病眼症、周期性四肢まひ、などがあります。血液検査で、甲状腺ホルモン値が高く、自己抗体(TSH受容体抗体)が陽性であればバセドウ病と診断できます。治療には抗甲状腺薬による薬物治療、放射性ヨード療法(アイソトープ治療)、手術がありますが、どんな方でも最初は薬物療法から始め、治癒しない方、再発を繰り返す方にはアイソトープ治療、手術を行います。日常生活はストレスのかからない規則正しい生活が重要で、食事は普通の量の昆布などの海藻類でしたらまったく問題ありません。

●橋本病(慢性甲状腺炎)

中年女性に多く、甲状腺の慢性の炎症により甲状腺が腫大したり、進行すると機能低下になりますが、現実には約3分の2の患者さんでは甲状腺機能は正常です。甲状腺の表面は硬くなり、進行すると機能亢進の反対の症状、すなわち倦怠感、気力の低下、手足のむくみ、冷え、便秘、皮膚のかさかさ、などがみられます。自己抗体異常による病気ですので、抗サイログロブリン抗体、抗TPO抗体が陽性であれば本症と診断できます。甲状腺機能低下の方は甲状腺ホルモン剤を服用します。これはかなり長期にわたり必要です。本症はヨードを作る働きが弱いため、海藻類のとりすぎは避けた方がよいです。

●甲状腺腫瘍

良性腫瘍(濾胞[ろほう]腺腫、腺腫様甲状腺腫)と悪性腫瘍(多くは乳頭がん)があり、進行しない限り症状は出ません。健診などの超音波検査で検出されることが多く(図2)、良悪性の鑑別は針を用いて腫瘍細胞を採取する穿刺吸引細胞診で行います。

図2

良性では甲状腺ホルモン剤を内服することで腫瘍が縮小することがありますが、手術はできるだけ避けてください。良性腫瘍からがん化することはまずなく、手術により甲状腺機能低下になったりすることがあります。悪性(がん)ではごく小さいものを除いて、手術を行います。甲状腺のがんはたちの良いもの(予後良好)なものが多く、そのようなときには、「低侵襲性甲状腺切除術」を行います。切開創が小さく、手術後の首の不定愁訴が少ない手術です。多くの方は半年もすればほとんど切開創が分からなくなります(図3)。

図3

高見  博(たかみ ひろし)

日本甲状腺学会 理事

1970年慶應義塾大学医学部 卒業
帝京大学外科 主任教授
東京大学大学院外科 講師(非常勤)
日本甲状腺外科学会 理事長
日本内分泌外科学会 理事長
日本外科学会 理事
日本内分泌学会 理事
国際内分泌外科学会 理事
日本甲状腺学会専門医

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