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事業が国際協力に直結するビジネスの現場そこで生きてくる青年海外協力隊での経験

 自社の利益のみを追わず、事業を通じて広く社会に貢献するという企業理念を持つ住友化学。同社はこれまで40年以上にもわたって青年海外協力隊経験者を採用してきた。なかでも、マラリア予防のために開発した蚊帳「オリセットネット」の普及事業を行うベクターコントロール事業部には、現在若き日に青年海外協力隊を経験した6名が集結しているという。同事業部マーケティング部長の松下敏明氏と同技術開発部チームリーダーの中西健一氏に、青年海外協力隊での経験やそれが現在の仕事に活きている点についてお話いただくととともに、お二人の上司である事業部長の水野達男氏には青年海外協力隊経験者の実際のビジネスの現場での活躍の様子についてお話をうかがった。

一度日本を離れて外から見てみたかった

松下敏明氏

松下敏明氏

中西健一氏

中西健一氏

―最初に、青年海外協力隊への参加を決意された理由について教えてください。

松下氏 私は小さい頃から「とにかく海外に出たい、一度日本を離れて外から見てみたい」と思っていました。そしてどうしたらお金をかけずに海外に行けるのかと考えていたところ、高校生の時に青年海外協力隊の存在を知り、大学卒業後すぐに応募しました。

中西氏 私は大学時代に海外農業研究会というサークルに入っていたのですが、そこの先輩に参加を強く勧められたのがきっかけです。当初は大学院に進む予定だったのですが、駄目で元々という気持ちで青年海外協力隊の試験を受けたところ、合格。「せっかくだから、これは行った方がいい」と思い、参加することにしたわけです。

―青年海外協力隊での具体的な活動内容は。

松下氏 私は1979年から「土壌肥料」の職種でタンザニアに派遣されました。ところが、実際の仕事は土壌肥料ではなく、ビクトリア湖の湖畔の灌漑のプロジェクトにおける稲作指導でした。当初は2年間の予定でしたが、水路が完成するまで2年以上は稲作を始めることが出来ませんでした。ですから水路ができるまでは同じプロジェクトで活動していた農業土木隊員を手伝い、期間を延長してやっと稲作指導をすることができました。結局、滞在期間は3年9カ月となりましたが、時間がかかっただけに初めてお米が収穫できた時は本当にうれしかったですね。

中西氏 私も同じく「土壌肥料」で1981年から2年間ケニアに行きました。業務内容は日本の援助で作った工学と農学の単科大学で講師をするという任務であったため、あわてて出発を3カ月遅らせて土壌肥料学について大阪農林技術センターで研修を受けてから参加したのですが、その程度の準備では講師としての任務には全く十分ではありませんでした(笑)。また、授業では英語に自信がなかったため、目で見てわかりやすい化学実験を取り入れたところ、生徒の興味を引き付けることができました。私よりも年上の生徒が多かったためか、指示が不十分でもこちらの意図を理解して作業を行なってくれ、例えば土中の温度の変化を測る実習では、深夜まできちんと測定するなど熱心に取り組んでくれた生徒もいました。指導と言うより、逆に私の方がたくさんのことを教えてもらいました。

―青年海外協力隊の活動を通じて学んだことは。

松下氏 現地ではほとんどが電気や水道のないテント生活で、周囲に受け入れられるまでに時間はかかりましたが、現地の人と食料を分け合い、助け合いながら生活することの心地よさを実感できたことは大きな財産です。その国の人たちと同じような生活をすることによって、平和で豊かな日本はかなり特別な国であると感じるようになりました。

中西氏 国際協力という現場において、いかに自分が無力な存在かということを痛感しました。でも、自分の中でもっと勉強しなくてはいけないという強い問題意識が芽生えたのは収穫と言えば収穫だったと思います。

マラリア闘病体験までもが現在の仕事に活きている

オリセット ネット

オリセット ネット

―帰国後、住友化学に入社された経緯は。

松下氏 将来については帰国してからゆっくり考えようと、特に何の展望もないまま帰国したのですが、幸い青年海外協力隊事務局の当時の指導相談課で就職先についての情報収集を行い、縁あって入社できた次第です。

中西氏 私は大学時代のサークル、海外農業研究会の先輩で、青年海外協力隊のOBで、住友化学に勤めていた方から連絡をいただき、入社試験を受けたところ、採用されたのです。本当に運に恵まれていたと思いますね。

―青年海外協力隊での経験が仕事に活きている点は。

松下氏 実は、私はタンザニアにいる時にマラリアを6回も発症したのですが、その経験があったせいか、入社してからマラリア防除用殺虫剤を海外に普及する仕事を任されました。現地で生きてこられたという体験が買われたのか、タイやスーダンの田舎で殺虫剤の適正な使用法を指導する仕事でした。そして、現在従事しているオリセットの普及事業もマラリア防除に関わる仕事です。自らの経験が大いに活かせるとともに国際社会に貢献できる仕事に携わることができ、大きな充実感を感じています。
 また、社内には青年海外協力隊OBのネットワークや農薬業界でのOB会もありますので、お互い協力し合うことができていることもありますね。

中西氏 実は私もマラリア発症経験者で、ケニアにいる時に強烈な寒気と40度以上の高熱で大いに苦しみました。現在のオリセットの普及活動事業を行っていく上で、マラリアとアフリカを知っているかいないかは非常に大きいと思いますので、その意味では青年海外協力隊での経験が活かされていると言えると思います。

―最後に、今後の夢や若い人へ向けたメッセージをお聞かせください。

松下氏 現在は非常にやりがいのある仕事を任されていますので、当面は仕事に注力し、定年後にはタンザニアで一緒に活動した青年海外協力隊の仲間たちと昔の現場を訪れてみたいという夢を持っています。
 会社や社会が大きく変わろうとしている今、若い人にとっては青年海外協力隊の経験は必ず活きてくると思いますので、思い切ってチャレンジしてみてほしいですね。

中西氏 私もビジネスを通じて国際協力にもつながるオリセット普及事業を成功させたいと強く思っています。そして定年後はシニア海外ボランティアに参加したいですね。
 我々の時代に比べて、現在は国際協力の現場での活動経験を企業も評価するようになってきていると思います。特に海外で事業展開している企業では経験を活かすことができるでしょう。その意味でも青年海外協力隊での活動は意義あるものになると思います。

春募集 青年海外協力隊シニア海外ボランティア