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シニア海外ボランティア体験談 人とのつながりを大切にしながら、自分なりの目標に向かってチャレンジしよう 零細小企業振興(フィジー諸島共和国)、工場管理(ベトナム)水之江浩之さん

 2004年11月から1年半にわたり、フィジー諸島共和国で零細小企業振興の仕事にたずさわった水之江浩之さん。メーカーの海外事業本部に身を置いていた会社員時代には、世界各国で様々な人の協力を得ながら会社や工場を立ち上げた経験を持つ。水之江さんはこうした現役時代に身につけたノウハウを生かすとともに、各地で力になってくれた若者たちへ何らかの形で恩返しがしたいと考え、シニア海外ボランティアに参加したという。フィジーからの帰国後も、ベトナムに3カ月間赴任。その2カ国での経験から得たボランティア活動の苦労と楽しさ、そしてこれから参加を考える人たちに向けた心構えなどについてお話を伺った。

きっかけは友人からの誘い

インタビュー写真

水之江浩之さん

 私がシニア海外ボランティアを知ったのは、友人からの誘いでした。その頃の私は、ちょうど会社の第一線を退き4年くらい経過した時期で、さすがに何かをしたいと考える頃でした。かつての会社員時代の友人がベトナムでバスを作る事業の手伝いをするといった話が耳に入ってきたこともあって、自分もそろそろ何かを始めてみたいと漠然と思っていましたので、その友人に誘われるままにJICAの説明会に参加しました。それがきっかけとなってその後、「有資格登録制度」という制度を利用してシニア海外ボランティアに応募してみたところ、しばらくして「フィジーで零細小企業振興の担当者を募集していますが行ってみませんか?」という連絡をいただいたのです。

 当時の私はフィジーという国がどこにあるかも知らなかったのですが、せっかくのチャンスを無駄にしたくないという思いから妻とも相談し、一緒に行ってみようと決心しました。実を言うと、私は以前メーカーの海外事業本部の責任者としてシンガポール、タイ、インドネシアなどで工場を4つほど立ち上げた際に現地で助けてくれた若い人たちに恩返ししたいという思いから、もしもシニア海外ボランティアとして赴任するならばアジア方面に行ってみたいと密かに考えていました。人生なかなか思い通りにはいかないものだなあと思いながらも、それ以上に見知らぬ国に行くのが楽しみでもありました。

 私のミッションである零細小企業振興という分野は少しわかりにくいのですが、要は新たに新しいビジネスや企業を立ち上げていくこと、あるいは既存の零細企業が軌道に乗るまで育てていくことに関わる仕事で、「ビジネスインキュベーター(※注)」もその一つと言われています。この分野は私の専門ではなかったものの、さすがに何も知らないんじゃまずいと思い、出発前にインキュベーター協会に出向いて基礎的なことを調べたり、地元の産業振興センターのマネージャーの方に実情を見せて頂き、ご指導を受けながら教えてもらったりしました。

若者にやりがいのある仕事の機会をつくってあげたい

現地写真

ボケーショナルスクールでの蜂蜜の巣箱を作る実習の様子

現地写真

養蜂協会組合長の息子さんの意見を聞いて改良された巣箱

 ところが、現地に着いてみると、せっかく予習したインキュベーターの知識がほとんど役に立たないことが判明しました。そもそもフィジーではインキュベーションにふさわしいビジネスを探すことすら難しい状況だったからです。フィジーは、先住民であるフィジー系の人とイギリスによる植民地時代に入植したインド系の人によって構成されている国です。その人口比率は約半々で現地人が僅かに多いのですが、厳しい環境で生きてきたためか目端がきくインド系の人に比べ、フィジー系の人は豊富な食べ物に囲まれて伸び伸びと生きてきたせいか、貯蓄をするといった概念もなく、当然ビジネスも苦手。性格は明るく素直でとても魅力的なのですが、がむしゃらに仕事に取り組むという姿勢は見られませんでした。このように、現地に行って半年ぐらいの間でこうした現状が徐々に見えてきました。

 私の仕事は、政府内の零細小企業振興のための部署で役人に指導することでした。当初は既存の企業を育てようかと何社か選んでみたのですが、どうもうまくいかない。それならば各産業そのものに入り込むしかないと思い、様々な可能性を探っていく中で出会ったのが、ハチミツ産業でした。誰もが始められ、環境条件も悪くないので、今後伸びる予感がしたのです。調べてみると、ハチミツ作りに必要な巣箱の原材料、部品はニュージーランドからの輸入品に頼っているものの、実はフィジーにも巣箱に適した木材が豊富にあることが判明したことから、巣箱を作るビジネスを思いついたのです。

 私としては若者にやりがいのある仕事の機会をつくってあげたいという思いがありましたので、ボケーショナルスクール(専門学校、職業訓練校又は学校をスピンアウトした若者の受け皿)を訪ね、木工の先生に協力してもらって彼らが卒業後に起業できることをめざしてプランを立てました。私にとっては全く未知であったミツバチの巣箱作りでしたが、インターネットで設計法を調べたり、この分野の専門家である日本の大学研究所の先生にご指導を受けたりして、やっとの思いでサンプルを作成して売り出したところ、評判も上々。大量の契約が取れたのは良かったのですが、油断してさぼる若者が出てきたのには困りました。(笑)でも、独立をめざして一生懸命がんばる子も何人か出てきましたし、政府でも工場を計画したいという話が出てきた時はうれしかったですね。10年後くらいにどうなっているか再度訪れてみたいと思っています。

成功のポイントは現場に入り込み信頼関係を築くこと

インタビュー写真

 実は、私の当初の赴任期間は1年だったのですが、その後短期ボランティアとして、半年間再赴任する機会を得ました。自分なりの目標であった現地の人々に自立のノウハウを持って貰う為に、現場に入り込み、自分の実力を出し切って一緒に考え、現地の役人や若い人たちと仕事をすることができたほか、日本からのSVの仲間、青年協力隊、大使館、WHO及びNGO等の人たち、そして世界各国から来ているボランティアの人たちとの横のつながりができたことが何よりの財産になりました。今でも連絡を取り合って集まったり一緒に旅行に行ったりと、これまで会社関係に限定されていた交友関係が大きく広がり、人生が豊かになった思いです。

 そうしたこともあり、帰国後しばらくして、もう一度、できれば現役時代に関係があった国にボランティアとして行きたいという思いが強まってきました。幸いにもベトナムで工場管理の要請を見つけ、2007年11月から3カ月弱の期間赴任しました。短期でしたが、希望のアジアで工場管理の経験が活かせると快諾。ベトナムのプラスティック工場を日本の下請け工場としてやっていけるような品質の製品を生産できる工場にしていくという仕事に邁進してきました。大きな目標を3カ月で達成するのはとても厳しかったのですが、社長が非常に協力的だったのと、一緒に行った4人のメンバーとともに助け合うことで、なんとか従業員のモチベーションを高めていくことができました。当初は従業員も疑心暗鬼な目で私を見ていましたが、現場をこまめに回って声をかけ、話し合っていくうちに、向こうから相談されるまでの関係を築くことができました。

 これはフィジーとベトナムの2カ国での経験から実感していることなのですが、ボランティア活動が成功するためのポイントは、信頼関係を築くことと、横のつながりを大切にして助け合うことだと思います。また、迷ったり戸惑ったりすることもありますが、何でもいいから積極的に動いていけば、自分も楽しいし、得るものは必ずあります。私は余暇の時間にフィジーで家に50人もの人を呼んでパーティをしたり、現地の仲間を作ってゴルフをしたりしましたが、こうした直接仕事とは関係のない付き合いの中で突破口が開かれることも多々ありました。これからシニア海外ボランティアに参加する方には、人とのつながりを大切にしながら、自分なりの目標に向かってチャレンジしてほしいと思います。

※注:起業家育成、起業化支援のための仕組みを提供すること

春募集 青年海外協力隊シニア海外ボランティア