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国際協力とは? 国際協力というキャリア

途上国の抱える諸問題が深刻化している現在、日本が国際社会で果たすべき役割はますます大きくなっています。「国際協力のプロ」育成の必要性を主張して活動している、NPO法人・宇宙船地球号事務局長の山本敏晴さんにお話をうかがいました。

国際協力のプロへの道

――国際協力活動、特に、プロとしてそれにかかわる「国際協力師」という仕事について、啓発活動を続けていらっしゃいますね。
最近は、紛争、貧困、病気など、さまざまな問題に苦しむ地域や人々がマスコミでも頻繁に紹介されるようになり、私も微力ながら、著作や講演、写真展などを通じてそのお手伝いをしています。その結果、国際協力に関心を持ち、自分も何らかの形で貢献したいと考える人は増えているのではないでしょうか。でも、その思いを形にできる職業がある、つまり、きちんと収入を得ながら一生国際協力にかかわっていく道があることを知っている人は、まだまだ少ないのです。
私は世界各地で、医療、教育を始め数々の国際協力活動に直接かかわってきました。その中で痛感したのは、一人の人間、一つの団体にできることには限界があるということ。こうした活動に、専門的知識をもって従事する優秀な人材を、どんどん育てていかなければならない。そこで10年ほど前から、子どもたちを含む若い世代を対象に、プロとして収入を得ながら国際協力を行う「国際協力師」に興味を持ってもらうためのいろいろな取り組みを行っているのです。これは、私が主宰するNPO法人「宇宙船地球号」の活動の柱の一つでもあります。
――「国際協力師」は、具体的にどのような仕事を行うのでしょうか?
国際協力活動というと、多くの方は、水不足の地域に井戸を掘ったり、学校に行けない子どもたちに勉強を教えたり、といったボランティア活動をイメージされると思います。こうした取り組みはもちろん必要ですが、ただこの場合、ボランティアが引き上げると、後には何も残らないというケースが多いのです。
「魚を釣ってやるより、釣り方を教えるほうが大事」という言葉がある通り、国際協力で大切なのは、有益な取り組みを現地のスタッフで継続していけるような仕組みを作ることです。
そこで重要となるのが、現地の政府、地方自治体などと交渉し、事業が円滑に進められるよう「人・物・金」をコーディネートすること。国際協力師が担うのは主にこうした仕事で、たとえば「国際協力機構(JICA)」の職員、あるいは国連職員などがこれにあたります。
また、実際の現場で、きわめて高度な専門知識や技術を生かして活躍する「JICA専門家」(技術協力専門家)なども、プロの国際協力師に含まれます。
――「国際協力師」の仕事に興味を持った人は、どうすればよいのでしょうか。
高い専門性を要求される国際協力師になることは、実はそれほど簡単ではありません。一定レベルの英語力、大学院修士課程終了もしくはそれと同等の専門性の証明、2年間以上の海外での活動経験が必要となります。
ですから、国際協力に興味を持ったのなら、まず実際に海外に出かけて行って、自分自身で現場を体験してみる。その上で、それを一生の仕事にするかどうか、ゆっくり考えてみることを、私はお勧めします。
――外務省が「国際協力士」を国家資格とすることを検討しているようですが。
私の言う国際協力「師」とは別物で、海外での活動経験を国が資格として認定し、就職時の付加価値のひとつにしようというもの。むろん、方向性自体は望ましいと思います。
ただ、現在の案では、JICAの「青年海外協力隊経験者」に限定される点で不公平感がありますし、海外経験だけで採用企業に高い評価を期待するのは難しいかと。「国際協力師」の条件に近い、英語力・専門性・経験の三つを含めた総合的な能力を認定する形で検討すべきではないかと、私は考えています。

メリットのある青年海外協力隊

――国際協力師を目指すなら、実際に海外に出てみることが大切というお話ですが、それにはどのような方法がありますか?
まず情報を集めることです。インターネット上には、JICAをはじめ、関連する多くの団体・組織のホームページがあり、国際協力に関するメールマガジンも多数発行されています。それらを利用するのが手っ取り早いでしょう。
とりあえず短期間、ボランティアを体験してみたいという人には、各団体が「スタディツアー」「ワークキャンプ」などの名で、海外の協力事業の現場の見学や活動体験を組み込んだツアーを提供しています。
――もっと本格的な活動に参加したいとなると、やはり「青年海外協力隊」が代表的ですね。
協力隊は2年間ですから、国際協力師になるための条件の一つを満たせることになります。また、協力隊の場合、無給休職または無職で参加する人には、帰国後に就職・進学など次のステップに移るまでの生活資金として一定額が「国内積立金」として支給されます。他にも、帰国した隊員が国際協力分野でキャリアを積むための「JOCV枠UNV制度」「帰国ボランティアのためのNGO活動支援制度」といった制度もある青年海外協力隊には、大きなメリットがあるといえるでしょう。
協力隊以外には、国連ボランティア、各NPO・NGOの海外インターンなどがあります。前者はほぼ協力隊と同様な条件ですが、後者は原則として無給です。
なお、国際協力師に求められる修士レベルの専門性を身につけるのは確かにハードルが高いのですが、その点では、JICAの「海外長期研修」「ジュニア専門員」「国内長期研修」などの制度を活用して、国内外で修士号を取得したり、国際協力の実務能力を磨くのもいいですね。
もちろん、これらの制度や奨学金は必ず受けられるわけではありませんから、その場合は自分で学費を準備して、大学院に通わなければなりません。その意味でも、まず国際協力の実際を自分の目で確かめてから、将来の計画を練ることが大切だと思うのです。
将来どんな道に進むにしても、海外での体験から得られるものは少なくありません。その学びを、それぞれの人生に生かしてほしい。同時に、国際協力への関心を持ち続けてほしい。そしてできれば、国際協力師として、世界を舞台に活躍してほしいと思います。

山本 敏晴(やまもと としはる)

1965年生。医師・写真家・国際協力師。78年、南アフリカにて人種差別問題に衝撃を受ける。中学校の頃から数十か国を撮影。「本当に意味のある国際協力」について考え続ける。

90年医師免許取得。96年医学博士取得。
2000年より数々の国際協力団体に所属、アフリカや中東で医療援助活動を行う。
04年、都庁からNPO法人の認証を受け、「宇宙船地球号」を創設。
「持続可能な世界」の実現を目指し、世界に目を向ける人の育成を行う。

写真絵本(国際協力の初心者向け)
シエラレオネ(2003年 アートン)
彼女の夢みたアフガニスタン(2004年 マガジンハウス)
あなたのたいせつなものはなんですか?(2005年 小学館)
地球温暖化、しずみゆく楽園ツバル(2008年 小学館)
著書(国際協力のプロになりたい人向け)
世界で一番いのちの短い国(2002年 白水社)
アフガニスタンに住む彼女からあなたへ(2004年 白水社)
世界と恋するおしごと 国際協力のトビラ(2006年 小学館)
国際協力師になるために(2007年 白水社)

「NPO法人・宇宙船地球号」のサイト http://www.ets-org.jp/
「未来の国際協力師たちへ」のサイト http://www.ets-org.jp/mirai/


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