シニア海外ボランティア体験談
写真
金子 信一さん

シニアの余裕と経験を生かして国際交流の架け橋に

合気道(モロッコ) 金子 信一さん

 小柄で穏やかな印象の金子さん。とても「合気道」でモロッコにボランティアに行ったという経験をお持ちには見えない。しかし、人生のさまざまな経験を経たシニアの金子さんには、ゆったりした余裕と温かさが感じられる。人を包み込む温かな人柄。語学や技術よりもそんな資質が、シニア海外ボランティアには一番大切なものなのかもしれない。


年をとっても、張り合いのある人生を送りたい

 私がシニア海外ボランティアに参加して、モロッコに行ったのは58歳の時のことです。行く前に、仕事は既に辞めていました。もともとは、電機メーカーに勤務して普通のサラリーマン生活を送っていましたが、54歳の時に早期退職して、神奈川県の研究財団の仕事をしていたんです。シニア海外ボランティアには、財団に勤めている頃に一度行こうと挑戦したことがあったんですが、仕事の都合で駄目になってしまったので、二度目の応募の時には発表の前に仕事を辞めて、いつでも行ける準備をしていました。

 私の初ボランティア体験は、「合気道」を教えるために、短期派遣で9ヵ月間モロッコに滞在するというものでした。合気道は、大学時代にやっていたものを40代後半になってから趣味として再開して、大学時代の合気道仲間がいる道場に出かけたり、会社で同好会を立ち上げたりしてわりと熱心にやっていたんです。シニア海外ボランティア事業に参加することになったのは、大学時代の合気道の先輩の活動に触発されたことがきっかけです。先輩が、シニア海外ボランティアでカンボジアに合気道を教えに行っていた時に、現地に遊びに行ったことがあって、それで興味を持つようになったんです。ほかにも同じ活動でラオスに行った知り合いがいたりと、私の周囲にはシニア海外ボランティアに参加した人が多く、その活動ぶりにもとても刺激を受けていましたし。そのうちに、好きな合気道を世界に広めながら、いろんな国の人と交流を深められたらいいなと考えるようになったんです。あとは、これから年をとっても張り合いのある人生を送りたいという思いもありました。ぬれ落ち葉みたいになって、家族にいやがられたくないですから(笑)。

 海外在住経験は、モロッコが初めてです。でも、事前にカンボジアの先輩のところに何回か遊びに行って現地の人たちとも稽古していたので、参加することにそんなに抵抗はなかったですよ。妻も以前のカンボジア行きに同行して事情をよく知っていたんで、特に反対もしませんでした。それに、モロッコ派遣の日本人は、私1人きりというわけじゃなかったんです。先に1人、合気道で派遣された方がいるところに、応援で行くという形だったうえに、同じモロッコにほかの職種で来ているシニア海外ボランティアが何人もいましたから。まあ、自分の仲間がやれてるんだから、なんとかなるだろうって感じでしたね。JICAの職員の方が、アパート探しを手伝ってくれるなど、とてもよく面倒を見てくださったのも心強かった。私は、モロッコの首都のラバトというところに滞在していたんですが、ここは都会ですし、教える場所も市内のちゃんとしたスポーツジムや体育館でした。シニアは若い青年海外協力隊の人たちと違って、途上国といってもすごい田舎ではなくて、都市部に派遣されることがほとんどなんですよ。まあ、だから治安の悪い途上国に、1人で単身乗り込む、というようなイメージとはかなり違いますね。

トラブル体験を乗り越えた経験が、後で一番の思い出になる

写真

 滞在中のトラブル? そうですね、言葉の問題はちょっとありましたね。モロッコは、アラビア語が公用語なんですが、フランス語もよく使われています。しかし私は英語しか話せず、やっぱり多少不便な思いをしましたし、細かいニュアンスが伝わらなくてフラストレーションがたまりました。行く前にもっとフランス語をやっておけばよかったなんて後で思ったりして。

 それから、合気道を教えるにあたっても、意外なトラブルがあったんです。モロッコ人はとても親日家だし、モロッコの合気道は既に40年もの歴史があって3000人以上愛好家がいます。だから、一から立ち上げる苦労というのはなかったんですけど、モロッコの合気道関係者の間でもめごとがあったりして、私自身もちょっとイヤな目にあったことがありました。まあ、後に問題は解決されましたけど、言葉もうまく通じないところで、こういう目に遭うとけっこう悩むものです。でも、そんなことを知らない現地の生徒たちが、トラブルの影響で道場に来られなかった私を心待ちにして集まってくれていたのを後から知って、もうそういうことは気にしないでやっていこうと気持ちを切り替えました。組織のごたごたとは関係なく、生徒たちはとても練習熱心だし、私を慕ってくれていましたからね、がんばろうと。それに、JICAの職員の方もこの件については、いろいろサポートしてくださったので助かりました。でもこういうトラブルを一つひとつ乗り越えた経験が、後から考えるとすごくいい思い出になっているんですよ。日本の暮らしにない大変な経験だからこそ、強い印象となって後々まで自分の中に残るんでしょうね。これがボランティアのだいご味なんだと思います。

自分の世界が広がることで、気持ちに余裕が生まれた

 私自身が経験した海外ボランティアは、技術やノウハウの指導などで行かれた方たちとは、少し目的が違うかもしれません。合気道は、勝ち負けを争わない武道であり、健康維持や自己鍛錬のため、趣味として日々の稽古を楽しみたい人がほとんどですからね。だから私は、「合気道でボランティア」の一番の目的は、「合気道という日本の文化」を通じてお互いの国と国とを理解して、交流を深めていくというものだと思っています。そしてその活動が実際に現地で大きな役割を果たしていることを実感したモロッコ体験は、本当に素晴らしいものでした。モロッコ人の生徒たちが、合気道や日本について深く理解しようと一生懸命な様子もうれしかったですし、私の方も人間的やさしさにあふれるモロッコの人たちの気質に触れて、強く感じるものがありました。もちろん、時間におおらかな(笑)ところとかいろいろ面食らうこともありましたけど、そういうことも含めてモロッコの文化を深く理解し、受けとめることができたんです。普通の旅行とは違うレベルの理解でしょう。今でもメールなどで彼らと連絡をとっていますし、私の友達と現地の人たちとの交流の輪も広がったりしています。まさに草の根の国際交流ですよね。

 また行ってみたいかと聞かれたら、もちろん!という感じ。実は、次回の派遣も決まっているんです。今度はカンボジアに2年間、合気道を教えに行きます。短期派遣では、3日間だけだった事前研修も、長期派遣では2ヵ月間。新しい体験にまたわくわくしています。こうして自分の世界が広がることで、何か気持ちに余裕が生まれるんですよね。いくつになっても新しい体験は、人を成長させてくれるものだと思います。シニア海外ボランティア参加に興味があるのに迷っているという方は、ぜひ短期派遣からでも第一歩を踏み出してみてください。

シニア海外ボランティア 体験談&説明会はこちら
シニア海外ボランティアホームページはこちら