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コンセプト
2003年の東京証券取引所の売買高は、バブル期の1988年を上回り、過去最高を記録した。外国人投資家に加えて、ネット証券を通じた個人投資家の活発な取引が記録に大きく貢献した。
 では、これから株式のネット取引を始めようと考えている個人投資家は、どのような基準で証券会社を選び、どういう戦略で投資をしていけばよいのか、自らトレードを行い有効な投資戦略を研究するマーケット・ジャーナリストの阿部智沙子さんにお話をうかがった。
資金管理は「負けない投資家」の必須アイテム

質問:トム・クルーズ主演の「ラスト・サムライ」は明治維新直後の日本を描きました。農民出身者が訓練を受け近代兵器を使い、熟練した侍たちを圧倒していく姿が印象的でした。ネット取引は、個人投資家にとって、「明治維新」ではないでしょうか。
阿部:つい6、7年前まで、機関投資家と個人投資家との間には、機関銃と竹やりほどの格差がありました。個人投資家は証券会社の担当者と電話でやり取りをして、関心のある銘柄が今どのような気配かを聞き、最終的に売買するかどうかを決めていました。

今日ではパソコンの画面を見ていればリアルタイムで株価や気配値がわかり、クリックすれば注文できてしまう。しかも、「負けない投資家」になるための必須アイテムともいえる資金管理やリスク管理をバックアップするシステムも充実しています。

ネット証券が手数料の安さを実現


質問:ところで、これからネット取引をしようと考えている人は、どのような基準で証券会社を選んだらよいのでしょうか。
阿部:1990年代後半にネット証券が登場し、株式売買手数料の自由化が進められる中で、各社が競い合う形でそのサービス機能を高めていきました。ネット証券の大きなメリットは、店舗で営業している店頭で営業している証券会社に注文を出すのに比べて、株式売買委託手数料が安くなったことです。手数料が安いということは、それだけコストが安い、すなわち利益が得やすくなるということでもありますし、また、機動的な売買ができるということでもあります。
 ただ、「安い」といっても、ネット証券各社で手数料体系はだいぶ違います。たとえば、約定金額に対して「何パーセント」という定率の手数料体系のところもあれば、「1回の売買ごとにいくら」という定額制のところもある、「1日何回売買しても、合計の約定金額がいくらまでなら3000円」というような体系のところもある、といった具合です。そうすると、どういう目的、頻度で売り買いするかによって、「有利な手数料」になる証券会社も違ってきます。デイ・トレーダーのように1日に何度も売り買いする人にとっては「1日いくら」という体系が有利になるケースが多いでしょうし、1回買ったら数日間は持つ、という人なら、「1回のトレードごとにいくら」というほうが安いでしょう。1回に1万株買って、何日かに分けて千株づつ売っていくというやり方をする人などにとっては、「1日いくら」の体系はかえって手数料が割高になる可能性もあるわけです。

忙しい人が取引しやすい環境を提供するカブドットコム証券

質問:そのほかに、ネット取引のメリットは何でしょうか。
阿部:当初、ネット取引は、一日中、取引に集中できる時間に余裕がある人がやるものだと思われてきましたが、日中忙しい人でも思った通りの売買ができるようなサービスが拡大しています。例えば、カブドットコム証券は、日中忙しい人でも取引しやすい環境を作らなければ本当のネット証券とは言えないというスタンスで、予め「株価がこういう状況になったら、こういう注文を発動する」という条件注文とか、メールで株価や約定結果などを知らせるサービスを充実させています。このような機能が手軽に利用できるのもネット証券のメリットといえると思います。

信用取引で実現できる100%の「株の売買」

質問:ネット取引では、信用取引も注目されていますね。
阿部:現物取引は単純に「買って、売る」取引しか、売買益を得る方法はありません。これに加えて、信用取引では、「売ってから、買い戻す」という取引方があります。「売買」というのは読んで字のごとく、売りがあって買いがあります。その意味では、売って、買い戻すこともできてこそ、100%の「株の売買」と言えるでしょう。もちろん、信用取引ではお金や株券を借りて売買するわけですから、注意は必要です。とくに資金の管理が現物取引以上に重要になりますが、ネット証券なら資金管理も日々リアルタイムでできますから、面倒なことはありません。「信用取引は危ない」というイメージで捉えられていますが、結局、資金管理がきちんとできない人にとっては危ない、という話だろうと思います。

カブドットコム証券は、条件注文が充実

質問:でも、信用取引に不安もありますね。リスクを回避するにはどうすれば良いのですか?
阿部:一番大切なのは含み損を拡大させないことです。そのためには、事前に「含み損がいくら以上なったら損切りをする」というルールを決めて、それを確実に実行する必要があります。この機動的な損切りというのが簡単そうに見えてなかなか難しいものなのですが、「逆指値」という条件注文が使えるとかなり便利です。予め「株価がいくらになったら売る(あるいは買い戻す)」という予約注文を入れておけば、株価が指定した値段になった瞬間に損切りの注文が発動されます。これなら、日中株価の動きを見ていなくとも、機械的に損失の拡大を食い止められる。この逆指値のほかにも、W指値であるとか、「この注文が約定したら、次にこの注文を出す」というリレー注文、「この注文が約定したら、いくらで反対売買の注文を出す」というようなUターン注文など、条件注文をうまく利用することによって、損失は抑えながら利益を伸ばしていくことも可能になると思います。こうした条件注文はカブドットコム証券が充実しています。

損益管理も証券会社選びの重要ポイント

質問:便利な機能があるんですね。このような機能を使って、うまくネット取引を利用するコツなどあれば教えてください。
阿部:事前に、相場状況によって、「こうなったら買い」、「こうなったら売る」という作戦を練っておくことだと思っています。これは画面で株価の動きを追うよりも大切です。まず、シナリオを作る。次にシナリオ通りに売り買いを実行する。最後にもうかっているか、損をしているかという損益管理を確実に把握しておく。この3つを確実に抑えておけば、大損をすることもないと思います。この3つが行いやすいようなサービスを提供しているかどうか、という点も、先ほどの手数料体系とともに、取引する証券会社を選ぶうえで重要なポイントになるでしょう。

個人投資家が市場の動向を左右する時代へ

質問:最後に、阿部さんにとって株式市場とはどういうものなのですか?
阿部:力関係ですね。需要と供給の拮抗に他ならないのですが、叩く力と持ち上げる力の攻防というイメージを持っています。現在株式を保有している大口の株主の中には、持ち株を売却しなければならない状況にある人も多いのですが、これを上回る「買う力」が出てこないと株価はなかなか上がりません。株を売った人がその売却した資金で別の株を買っても市場全体のパイは変わりませんし、株を売った資金が株式市場から出て行ってしまえば、市場全体は縮小していきます。保有している株を売却して市場から出ていった資金額より多くの資金が市場に入ってくれば市場が拡大する、つまり株価も上がるわけです。これまで長い間、機関投資家をはじめ大口の株主が市場で大きな影響力を持ってきましたが、とくに2002年後半頃から、個人投資家の動きが活発になっているように感じます。そう遠くないうちに個人投資家が株式市場の動向を左右する時代が来るかもしれませんね。

阿部智沙子(あべ・ちさこ)
 財団法人・日本システム開発研究所で金融専門紙記者として勤務後、1992年に独立。マネー雑誌、経済雑誌などを中心に執筆中。
 1997年、大手証券の債券トレーダーの経験を持つご主人とともに、有限会社なでしこインベストメントを設立。ご自身もトレードをしながら、個人投資家の視点で株式市場をウォッチしている。金融ジャーナリストの中で、実践的で深みのある執筆活動で定評があり、「マーケット・ジャーナリスト」という専門分野を確立している。
 「オンライン投資家のための30万円からはじめる「信用取引」の本」(東洋経済新報社、2002年)、「超やさしい株価チャートがスラスラ読める本―売り時・買い時をつかむ!」(中経出版、2001年)などの著書のほか、「株の自動売買でラクラク儲ける方法 口座が勝手に稼いでくれる!」(ダイヤモンド社、2004年)の制作にも協力。

 

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