

15年先の未来に後戻りのできない危ない地球環境をつくりださないために
太陽からほど良い位置に誕生した地球は、偶然のバランスが生んだ奇跡の星ともいわれます。気象学の勉強はそんな地球を宇宙から眺めることから始まる、という石原さん。気象予報士の使命とともに、市民として、自らの脱冷暖房生活の経験から「できることを無理せず誇りを持って続けることが大切」と語ります。第2部のつボイノリオさんとのトークショーは、石原家の人々や、つかこうへい劇団についても話が弾む、楽しいひとときとなりました。
気象現象は太陽と地球と空気と水、この4つがあるから起こります。他の太陽系惑星と地球との一番の違いは、水の存在です。海水、淡水、氷を除いた0・001%の水が、空気中に水蒸気として存在しています。空気は太陽の熱によって動き、それに伴って水蒸気が集まって雲ができます。だから雨や雪が降るわけです。こんな具合に、気象学の第一歩は宇宙から地球を見ることからはじまるんですね。
ぼくは気象予報士の使命は三つあると思います。第一は、気象情報を分かりやすく正確に伝えること。だから、最初はテレビで天気予報をするつもりはありませんでした。俳優のぼくが天気予報をやると、視聴者の勘違いが起こるかもしれない。でも、某テレビ局から「気象の楽しさを視聴者に伝えてくれませんか」と声をかけられました。海や山へ、自然を求めていつも出かけられるわけではない。でも、空はどこにでもある一番身近な自然です。その空を見る楽しさを知ってもらえるかもしれない、とはじめたわけです。
第二は、気象の怖さを伝えること。自然は楽しい反面、怖くもあるんですね。それが最近、少し忘れられているような気がします。天気予報はよく見るけど、自分で空を見ないという方も多いですね。いまにも雨が降りそうなのに「予報では降らない」と傘を持たずに出かけられたりする。やはり、天気予報だけでなく、実際の空と見比べてほしいですね。空模様から自分で予想する、いろいろ発見する、それが空を見る楽しさだと思います。
第三の使命、それは地球温暖化を伝えていくことだと思います。昨年8月16日、岐阜県多治見市と埼玉県熊谷市で40・9℃という、日本観測史上の最高気温を記録しました。多治見は自然のフェーン現象ですが、熊谷の場合は違います。夏の南西風に乗り、東京都心からヒートアイランドの熱が熊谷へ吹き込んだのです。つまり、人間活動による人工的な現象が、日本最高気温を74年ぶりに更新させたと言えるんですね。
地球温暖化も人間活動が引き起こしたと言われています。いまだ「温暖化などない」という人もいますが、むずかしい話は別にして、日々の暮らしの中で最近の気象を「昔と違う」「何か変だ」、と感じておられる方は多いと思います。
「不都合な真実」という環境映画の中に「気候ターゲット2℃」という言葉が出てきます。産業革命以前の平均気温から2℃上昇すると、後戻りできない状態になるというのですね。IPCCは『2℃上昇は最短で2026年』と報告しています。もし3℃上昇すると、地球上の全動植物の内100万種が絶滅するそうです。2026年というと、ぼくの子どもがやっと成人する頃です。100年後と言われると雲をつかむようですが、15年後となると現実的に想像できる未来の話になってきます。地球の誕生以来「生命の大シャッフル」が5回あったそうです。直近では、6500万年前の恐竜の絶滅ですね。6回目のシャッフルは人間が引き起こすのでは、と漠然とした不安を覚えることもあります。
いま、原油高と原料不足からいろいろな物が値上がりしています。たとえば小麦。オーストラリアは昨年、一昨年と連続して大干ばつの異常気象です。一方、アメリカでは小麦畑を次々とトウモロコシ畑にしてバイオ燃料の原料にしています。その方が儲かるからです。温暖化問題は経済をからめて食糧問題、エネルギー問題に直結しています。日本の食糧自給率は40%を切り、エネルギー自給率は約4%。そうした話を聞くと、ぼくは「先進国の飢餓」みたいなものを感じます。だから、何かしなければならない。そういった差し迫った状況まで来ているような気がします。
では、市民に何ができるのか。実は10年ほど前、冷暖房のない暮らしに1年間チャレンジしたことがあります。はっきり言って、これは早死にすると思いました。とくに夏はつらい、都会では窓を開けると熱風しか入ってきません。分かったことは、現代人は空調に守られて暮らしているということ。だから、ムリをしないでやれることをやる、これだと思います。また、自分はきちんとやっているのに、やってくれない人がいる。腹の立つこともあります。でも、まず「やる」と決めた人が誇りを持ってやる。気がついた人からはじめ、そういう人たちが増えていく、それを願うしかありません。「なぜ自分だけが」という損得ではなく、やらなくてはならないと思います。温暖化からエネルギー、食糧、地球規模の問題の中で、我々はもう一昔前のようには生活できなくなっています。だから、現実を見ながら適応していかなければならないし、生活スタイルを変えていかなければなりません。サマータイムや暑い国の習慣を採り入れるのもいいと思います。もはや日本の夏の気候は、亜熱帯と言ってもいいのですから。
現代人は何かにつけて損得に振り回されがちです。情報は人の暮らしを豊かにしてくれるはずでした。でも、あまりにもあふれすぎて人を近視眼的にしている気がします。何でも他人と比べる、損得で考える、そうしないと落ち着かない。情報が逆にストレスになっている。だから、1日1回は空を見てみましょう。地球の未来を考える気持ちにもなれるし、ストレスの発散にもなります。みなさん、ぜひ空を見上げてみてください。(談)
愛知大学のOBであり、タレント・CBCラジオパーソナリティーとして活躍するつボイノリオさんを第2部に迎え、石原さんとのトークショーを行いました。つボイさんは1972年の卒業。石原さんの父・慎太郎氏、叔父の裕次郎氏に強い影響を受けて育った世代だけに、何かと石原家の人々のことが気になる様子でした。話は気象予報士と天気予報士の違い、いろいろな雲や気象、ゴア元アメリカ副大統領のつくった映画「不都合な真実」を巡って展開。「ほんとに気候変動が起こると思いますか」というつボイさんの質問に、「分からないことはたくさんあります。でも『いままで大丈夫だったんだから』という考え方は危ないと思います。『何かが起こりそうだ』と目を向ける姿勢が大切ではないですか」と応じる石原さん。「市民にできることは」という質問には「限られているし、そのすべてがうまく行くとは思わないけど、一人ひとりの工夫は大事ですよね」と答える石原さんでした。

プロフィル/いしはら・よしずみ
1962年、神奈川県生まれ。82年『凶弾』でデビュー。舞台、映画、テレビドラマ、そして、バラエティー番組に活躍。97年気象予報士合格。「FNNスーパーニュース」のお天気キャスターを務める。また、「北区つかこうへい劇団」入団。主な主演作、99年「熱海殺人事件」、2003年「ストリッパー物語」。地球環境を守るための講演が多い。「石原家の人びと」はベストセラーに。現在、週刊新潮に好評連載中。主なレギュラー番組、「スーパーニュース」「笑っていいとも!」フジテレビ、「ぴったんこカン・カン」TBS、「素敵な宇宙船地球号」テレビ朝日、「中井正広のブラックバラエティ」日本テレビ等、多数出演。官公庁、地方自治体、電力会社等の環境講演会、シンポジウムに多数出演。