大学新潮流2008

人と地球の未来を担う総合科学

進化する工学部

工学部という言葉には「科学技術立国・日本の競争力の源泉」というイメージがある一方、どこか無機質でメカニカルに感じとる人もいるだろう。しかし、その本質は、意外にも私たち人間に非常に密接なところにある。生活を支え、暮らしの隅々にまで貢献するだけでなく、地球規模の課題の解決にもその領域を広げているのが21世紀の工学だ。大学における工学部の現状と魅力、展望について、各界の第一線で活躍する方々に話を聞いた。
工学に入れば本質がつかめる
 工学部というと、子供のころから手先が器用で、プラモデルが好きだった、そういう連中ばかりのように思うじゃない。
 ところが僕の場合は、工作より祖母がしてくれるおとぎ話が好きでね。おとぎ話から昔のことが知りたくなって、歴史ものや偉人伝を片っ端から読むようになった。本のムシだったわけですよ。
 それで偉人にあこがれを感じるようになってね。高校生になると、人間てのはなんて面白いものなんだろうと考えるようになったわけさ。
 そのうち、人間とは何かを知りたいとか、ものごとの本質をつかみたいとか、興味がそちらの方へ向いたんだね。
 となると、文系の学部じゃ物足りないような気がして、工学部に行くしかない、と思ったんだよ。
 学生時代、レーシングドライバーを夢見たことがあってさ。F1のジム・クラークという天才ドライバーに憧れてねえ。そうしたらオートバイメーカーのホンダがF1に挑戦して、メキシコ・グランプリで勝った。快挙ですよ。この会社に入ろうと思ったわけ。
むずかしいほどやり甲斐がある
 入社したら、社長の本田宗一郎さんが技術畑の新人を集めて、「ホンダが新しい技術や商品を開発する会社だと思ったら間違いだ。うちは人間を研究する会社だ。人間がわからん者に技術開発はできない。商品は作れない」と言った。
 人間を研究する会社だと言われて、我が意を得たりと思ったね。だって、僕の考えは間違ってなかったってことだもの。
 たとえばロボットを研究するなら、人間とは何かを考えておかなければダメでしょ。要するに、技術は人間の幸福のために使うんだってことを、いつも心に刻んでおけばいいのさ。数学や物理ができるかどうかは、二の次なのよ。
 本田さんは、真実は権力より強いとも言われた。実験でわかった事実、真実はどんな権力にも屈しませんと、工学の世界では胸を張って言うことができるんだよ。
 CVCCエンジンにしろF1のコンストラクターズ・チャンピオンにしろ、工学の世界ではだれもやらなかったことに挑戦することが許されるのさ。日本人には優れた職人の芸や技のDNAに加えて、極めて繊細な自然観があるわけでしょう。これは強いですよ。
 それを工学部で勉強して、科学技術化する。21世紀、日本人の出番は多いと思うよ。
株式会社レーシング・クラブ・インターナショナル代表 桜井淑敏
さくらい・よしとし 大学で工学を学んだ後、1967年本田技研工業(株)に入社。70年、世界初の無公害エンジンCVCCの開発に成功。その後、本田技術研究所のリーダーとして、数々の新エンジンや新型車の開発にあたる。84年、ホンダF1チームの総監督に就任。86年、87年、2年連続チャンピオンを獲得した後、総監督を勇退。88年、同社取締役を辞任し、現職に就く。
人、社会、環境の総合科学を学ぶ
 私が建築家になることを夢見て工学部で勉強していた時代、極端な言い方をすれば、工学部はモノ創りの研究に専念していればよかった。工学部はすなわちモノ創り、と言っても過言ではなかった。
 しかし時代は変わった。
 私は、工学部とは何をするところですか?  と聞かれれば、
 「人間と社会と環境のための総合科学を学ぶところです」、
 と答えることにしている。
 言い方を換えれば、森羅万象を研究対象とする学問、ということである。
 身近な例を挙げれば、病院がある。正確な診断をし、的確な治療をするためには医療機器、装置は絶対に欠かせない。患部にピンポイントで薬を届けるシステムは工学と医学が手を結んで、はじめてできることである。
 現在、石油文明に支配されている地球は、原油の高騰によって激しく揺さぶられている。石油に代わるエネルギーの研究、開発は、工学に課せられた大きな課題の一つである。同時に砂漠化を防ぎ、緑化を進めなければならない。大気や河川の浄化についても同じである。それも工学の使命だ。
 さらには介護ロボット、高速コンピューター、燃料電池、ナノテクノロジー、宇宙開発……と、工学の守備範囲は、広がる一方である。こうした分野に優れた人材を送り出すことができなければ、この国の未来は暗いものになる。
 温暖化防止策一つをとっても、今ほど、「人間と社会と環境のための総合学部」が求められている時代はない。そう断言することができる。
国立大学法人千葉大学大学院 工学研究科長 工学部長 教授・工学博士 野口博氏
自身と誇りのある人生への第一歩
   にもかかわらず子供たちの理科離れ、若者の科学嫌いが進行している。
 それを食い止めるべく、大学の工学部は十分な努力をしてきただろうか?  と問われれば、反省せざるをえない。
 各大学の工学部は、それぞれに地域性や独自性を生かし続けているが、一大学としての対策には限界があった。
 そこで、国立大学工学部系学部長会議を開催し、協力関係のもと工学部の魅力や社会的役割の情報発信を進めていく体制を作った。
 理科や科学の面白さ、楽しさは実験にあるが、小、中、高生の好奇心を満足させるような実験が行われているのだろうか。工学部の学生や院生、ときには教官も参加すれば、子供たちが目を輝かせるような実験が、安全にできるはずである。そうして機会あるごとに工学への理解を深めてもらう必要がある。
 工学を学ぶことは人の役に立つ仕事につながり、この国を支え、誇りと自信の持てる人生への第一歩であると、私たちは考える。
工学の社会的役割
優れた人材を育成する大学を積極的に支援
文部科学省は、優秀な理工系人材の養成を大きな課題としてとらえ、「モノから人へ」というキャッチフレーズのもとでさまざまな政策を展開しています。
各大学の取り組みや計画を吟味して競争的に補助金を配分していることもその一つです。国立大学の法人化以降は年1%ずつ交付金が減りますが、一方で、弾力的な運営が可能になりました。今後は優秀な人材の育成や高い将来性の見込まれる研究を積極的に推し進める大学に対して、より力強く支援していきます。
文部科学省は、経済産業省と連携して「産学人材育成パートナーシップ」を創設しました。人材育成について大学と産業界の関係を強化するため、双方に求められる課題を中・長期的な視点から幅広く議論する場を設け、産学が共通認識を持った上で具体的な行動につなげていく考えです。
地域社会との連携強化や、大学からの積極的な情報発信も含め、これからの大学にはより開かれた存在として社会への貢献に期待が寄せられています。 
工学部を目指す学生にとって、さらに魅力的な環境が整備されつつあると言えるでしょう。(談)
文部科学省高等教育局 専門教育課 課長 藤原章夫氏
秋田大学工学資源学部
資源系と工学系が融合した世界にも類のない学部で、国際的な資源開発や新産業の創出を担う人材を養成するために、「創造工房実習」や「ロケットガール養成講座」等の特色ある教育を実践しています。
住所:〒010-8502 秋田市手形学園町1-1 電話:018-889-2305
http://www.eng.akita-u.ac.jp/
茨城大学工学部
関東圏では最大規模を誇る総合工学系として幅広い充実した教育と研究を提供し、かつ学生の、学生による、学生のための「学生主体国際会議」を唯一国内で開催して世界に羽ばたく学生の育成を目指します。
住所:〒316-8511 茨城県日立市中成沢町4-12-1 電話:0294-38-5004
http://www.eng.ibaraki.ac.jp/
岩手大学工学部
めざすのは、真のものづくり専門家「マイスター」を育てること。いま求められているのは、限りある地球資源に配慮した人と環境にやさしい工学「ソフトパス・エンジニアリング」の実践者です。
住所:〒020-8551 岩手県盛岡市上田四丁目3-5 電話:019-621-6064
http://www.eng.iwate-u.ac.jp/
宇都宮大学工学部
きっと、一人ひとりのものづくりへの想いと、新しいことへの好奇心が見たことのない未来を創る。   「学ぶ」、「考える」、「創る」
住所:〒321-8585 栃木県宇都宮市陽東7-1-2 電話:028-689-6005
http://www.eng.utsunomiya-u.ac.jp/koukou/
群馬大学工学部
新しいことに挑戦することが好き! 誰も手がけたことのない独創的な研究に取り組みたい! その思いを世界水準で実現できる環境が本工学部にはあります。楽しい研究を一緒にはじめてみませんか?
住所:〒376-8515 群馬県桐生市天神町1-5-1 電話:0277-30-1111
http://www.tech.gunma-u.ac.jp/
埼玉大学工学部
埼玉大学工学部では、環境共生学科を新設し、世界規模で深刻化する環境問題を正面からとらえて持続可能社会の形成に貢献する人材を育成するなど、新しい工学の展開を目指す教育研究を行います。
住所:〒338-8570 さいたま市桜区下大久保255 電話:工学部学務係 048-858-3429
http://www.saitama-u.ac.jp/
信州大学繊維学部
「細くて長い形態をもつ材料;ファイバー(繊維)」を中心に生命から宇宙まで幅広い分野の先端基盤技術に関する教育・研究を展開し、グローバルCOEプログラムに採択された総合科学技術拠点。
住所:〒386-8567 長野県上田市常田3-15-1 電話:0268-21-5300(代表)
http://www.tex.shinshu-u.ac.jp/
静岡大学工学部
「自由啓発」の理念のもと、ものづくりを基盤とした「基礎力と実践力を備えた人材育成」「地域とともに世界へ羽ばたく研究」「地域社会・産業への貢献」を通し、「社会から期待される学部」を目指しています。
住所:〒432-8561  静岡県浜松市中区城北三丁目5-1 電話:053-478-1004
http://www.eng.shizuoka.ac.jp/
千葉大学工学部
学ぶ力を育み、創る力を鍛える教育を目指し、建築、機械、電気電子、応用化学の基幹工学と都市環境、デザイン、メディカル、ナノ、画像、情報の複合・新領域を結ぶ10学科に平成20年4月から生まれ変わります。
住所:〒263-8522 千葉市稲毛区弥生町1-33 電話:043-290-3034
http://www.eng.chiba-u.ac.jp/
電気通信大学電気通信学部
情報・通信を太い縦糸としつつ、基礎から応用までの広範な理工学分野の教育と研究を行っています。層の厚い教授陣による教育は産業界から高く評価されており、抜群の就職実績を上げています。
住所:〒182-8585 東京都調布市調布ヶ丘1-5-1 電話:042-443-5103
http://www.uec.ac.jp/
東京海洋大学海洋工学部
技術立国・貿易立国の日本を支えるため、実践的な工学の知識と技術を身につけ、リーダーシップを備えた高度専門技術者を養成し、海運、海事、機械、電子、流通、情報などの産業界に人材を送り出しています。
住所:〒135-8533 東京都江東区越中島2-1-6 海事システム工学科、海洋電子機械工学科、流通情報工学科
電話:03-5245-7300

http://www.kaiyodai.ac.jp/
東京農工大学工学部
東京農工大学工学部は、常に独創性に満ちた先鋭の教育研究を目指し、最新鋭の設備の下で優れた教育と研究を提供しています。その結果、多くの卒業生は企業等から極めて高い評価を受け、第一線で活躍しています。
住所:〒184-8588 東京都小金井市中町2-24-16 電話:042-388-7003
http://www.tuat.ac.jp/
新潟大学工学部
最先端の科学技術を目指し、高い志の「ものづくり」精神を養い、知識と技術のバランスがとれた「工学力」を習得できる教育と研究を行っています。本州日本海側唯一の政令指定都市新潟で学びませんか。
住所:〒950-2181 新潟県新潟市西区五十嵐2の町8050 新潟大学自然科学系学務課学務第三係(工学部担当)
電話:025-262-6709

http://www.eng.niigata-u.ac.jp/
弘前大学理工学部
弘前大学理工学部は、皆さんの将来やりたいことを実現させるための専門基礎をしっかり身に着けさせる教育を重点的に行います。
住所:〒036-8561 青森県弘前市文京町3番地 電話:0172-36-2111(大代表)
弘前大学 http://www.hirosaki-u.ac.jp/index.html
理工学部 http://www.st.hirosaki-u.ac.jp/
山形大学工学部
前期日程試験を米沢会場に加え、名古屋会場でも実施します。 ◆名古屋試験会場;河合塾名駅キャンパス(JR名古屋駅近く)
◇試験日:2月25日〜26日 ◇出願期間:1月28日〜2月6日
住所:〒992-8510 山形県米沢市城南4-3-16 電話:0238-26-3013
http://www.yz.yamagata-u.ac.jp/
山梨大学工学部
「未来世代を思いやるテクノロジー教育」を目標に、21世紀の人類に課せられた“地球と人にやさしい工学”を学びます。みどり豊かな山梨大学で、私たちと一緒に最先端工学技術を学びましょう。
住所:〒400-8511 山梨県甲府市武田4-3-11 電話:055-220-8046(入試課)055-220-8402(工学部)
http://www.eng.yamanashi.ac.jp/
横浜国立大学工学部
80%もの学部生が大学院へ進学。工学の基礎を学ぶ学部教育と専門性の高い大学院教育とのスムーズな連携が多くの高度な教育・研究成果を発揮、社会に貢献できる人材を多数、輩出しています。
住所:〒240-8501 神奈川県横浜市保土ヶ谷区常盤台79-5 電話:045-339-3821(工学部入試係)
http://www.eng.ynu.ac.jp/ENG/jpn/index.html
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