三億円事件の謎に、大胆な仮説を交えて迫る衝撃の問題作『ロストクライム–閃光–』の公開に合わせて、ジャーナリストの鳥越俊太郎さんに、この事件について聞いた。5回集中連載の最終回は、事件が迷宮入りに終わった謎に肉薄する。

億円事件の発生から間もなく、捜査にあたる刑事・滝口は、先輩の高村とともに一軒の家を訪ねる。しかし目的の人物は不在だと告げられ、不審に思いながらもその場を去る2人。悲劇はその夜起こった。彼らが会おうとした少年は、青酸カリをあおって自殺。実行犯と目されていた最重要容疑者は、永遠に姿を消した。映画『ロストクライム–閃光–』の一場面だ。
 作中では、その後長い年月を経て、滝口(奥田瑛二)が高村(原田芳雄)に会いにいく姿が描かれる。「お前、本気でこのヤマのフタを開けるつもりか」。高村のそんな問いかけと呼応するように、事件を追うジャーナリスト宮本(武田真治)もいう。「警察は三億円事件にフタをしておきたい。それをこじ開けようとするあなたたちは、ただじゃすみませんよ」

越さんは「警察は犯人に迫っていたが、ある『闇』がすべてをストップさせた」と語る。その闇とは、宮本がいうように警察そのものなのか。滝口は相棒の片桐(渡辺大)に、三億円事件の裏側には警察の信頼失墜につながる重大な事実が絡んでいたことを告げる。
 「信頼がなければ警察は市民から情報を得られないし、まともな捜査もできなくなる。だから警察は、信頼を失うことをとても恐れています。それは事実です」。鳥越さんはそう説明する。「警察だって人間の集団ですから、一人ひとり欲もあれば面子もある。なかには不祥事を起こす人間がいても不思議ではありません。しかし、問題が起こったとき率直に謝罪するより、隠せるものなら隠そうとするのは、警察に限らず巨大な組織の性でしょうね」

画や小説、ドラマの世界で、三億円事件はこれまでもたびたび題材とされてきた。しかし鳥越さんは、映画『ロストクライム–閃光–』では、動機と犯人像を事件が起こった時代性と強く結びつけた点が斬新だったと語る。「実際に取材をし、事件の像というものを自分のなかに持っていた僕でも、この映画には驚きました。そうか、こういう見方もあったのかと」
 犯人は誰か。動機は何か。奪われた現金の行方は。いまだ多くの謎が残る事件も、今年で発生から42年。犯人をはじめ、事件の裏側を知る人間たちが存命なのかどうかさえ定かではない。それでも、と鳥越さんはいう。「警察のなかでは、真相は今もひそかに語り継がれているんじゃないでしょうか」
 明日、映画『ロストクライム–閃光–』解禁。スクリーンの前で、あなたはどんな「真相」を目にするだろうか——。

バックナンバー
第一回
第二回
第三回
第四回

asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
サイトポリシー | 個人情報 | 著作権 | リンク | 広告掲載 | お問い合わせ・ヘルプ