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山村の資源を活用して継続的に稼げる仕組みを
 



作家
立松和平さん




林野庁森林整備部計画課
森林総合利用・山村振興室指導係長
佐藤康弘さん




同志社大学商学部准教授
内野雅之さん


  山岡 まずは現在の森林や山村の現状について聞かせてください。

立松 今、山村部では目を覆うばかりの過疎化が進んでいます。先日、立ち寄った徳島県のある集落では、かつて33戸だった家が6戸に減っていました。地場のたばこ産業が衰退し、若い人は仕事がないので村を出て行ってしまう。元気なのはイノシシだけ、といった状態です。このような状況は、その町に限りません。今、日本の「ふるさと」がどんどん消えています。

佐藤 現在、山村では65歳以上の高齢者が半分以上となり、コミュニティーや共同体としての存続が危ぶまれる地域が増えています。林業の衰退、過疎や高齢化により、適切に管理されず、放置されたままの森林も見受けられます。私たちにさまざまな恩恵をもたらしてくれる貴重な緑の資源が、荒れつつあります。

山本 山村は年々、人が暮らしづらい状況になっています。地方でも都市部に人が集中し、農山村から人がどんどん減っています。過疎化が進むことで病院や学校が維持できなくなり、ますます暮らしづらくなっていく。今や一部の山村では、憲法で保障されている健康で文化的な最低限の暮らしすらできなくなりつつあります。

山岡 山村の荒廃の最大の原因は、林業や農業の衰退ですね。

日本の山村はすばらしい宝をたくさん持っている(立松)

立松 経済のグローバル化により、コストの高い日本の木が使われなくなり、林業が衰退した。日本の農業も海外からの安い農産物に押され、本当に苦しんでいます。

山本 誤解している人が多いのですが、山村の生活は、昔から自給自足ではありません。江戸時代の山村でも、塩や道具などは町から買っていました。江戸の町が火事になると木材需要が増えてもうかるという話があるように、山村は昔から町と商業的なやり取りがあり、それによって維持されてきました。町の人が材木を買ってくれるから村の人は木を植え、森を育ててきた。日本の山村の自然は、何百年にもわたる村と町の関係によってつくられたものなのです。ところが工業化やグローバル化で、このつながりが切れてしまった。都会の人が農山村からではなく、海外から木材や農産物を買うようになった。都市との交流が途絶えてしまったことが、山村の衰退の大きな原因です。構造的な問題なので、個人の工夫や努力だけで解決することはできません。



山岡 それでは山村を活性化するためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。

立松 農山村の置かれている状況は大変厳しく、簡単に解決はできません。根本的には林業、農業を立て直すことが重要です。他には、ツーリズムの発展に期待しています。とにかくみんなで力を合わせて、あらゆる知恵を絞っていくしかない。まずは都会の人が、なるべく山村のものや国産品を買うライフスタイルに変える必要がある。学校給食に地元のものを使うなど、地産地消をもっと進めるべきです。

都会が持つノウハウで幅広く山村を活性化(佐藤)

佐藤 林野庁では、国産材の使用を呼びかける「木づかい運動」を推進しています。木づかい運動のロゴマーク「3.9GREENSTYLE(サンキューグリーンスタイル)」には、京都議定書で定められた「森林による1,300万トン(削減目標6%の約3分の2に当たる3.8%)の二酸化炭素吸収」の目標達成のために、森林への感謝の気持ちとともに国産材を使ってほしいとの願いを込めています。また、国民にもっと森のことを知ってもらい、森づくりに参加してもらうための「美しい森林づくり推進国民運動」も展開しています。国民のみなさんには、今よりもっと、森に興味をもち、行動を起こしていただきたいと思います。

山本 今や村に住む人自体が、山村の資源を生業として使わなくなってきています。山村で暮らす人々が、従来の林業の枠にとどまらず地元の資源で稼げる仕組みをつくる必要があります。

付加価値を付けるためのマーケティング戦略が重要(内野)

内野 山村で暮らす個々の人々は、ものすごく努力しています。村おこしや山村の資源を使ったビジネスなど、良いアイデアや発想はたくさんある。でもそれらを、経済活動として継続させる仕組みにするのが難しいのです。生産者の多くは、山村のすばらしい素材に付加価値をつけることはできても、広くアピールする術を知りません。マーケティングやPRにまで考えが及ばない。また生産者は、基本的に孤立して作業をしています。彼らをネットワークでつなぐことができれば、お互いの刺激となり、新しい発想も生まれるのではないでしょうか。また山村の情報が、都市で暮らす人へきちんと届いていません。アンテナショップで野菜を見ても、調理法や食べ方がわからなかったりします。山村と都市を、もっと効率的に結ぶ仕組みや人材が必要です。

津上 最近は、団塊世代のリタイヤ後の居住地として、山村のニーズが高まっています。ストレスの多い現代社会で、山村がもつ癒やし効果の価値はますます高まっています。森や山にはまだまだたくさんの宝があるはずですが、そこにきちんと光が当たっていない気がします。観光を切り口に、今までとは違うかたちで山村に光を当て、山村の良さをもう一度見直せないか、山村と町の交流をより深める旅行のサービスをつくれないか、と日々考えています。昨年、観光立国推進基本法が全会一致で可決されましたが、観光を機軸にした村おこしに期待が集まっています。山村の暮らし自体を観光の対象にした、滞在型や体験型の旅行ニーズも増えています。波及効果の大きいツーリズム産業は、山村活性化の鍵を握っているといえるでしょう。



立松 日本は南北に長く、気候風土の幅も広いので、旅をしていても本当に楽しいですね。山に登れば景色は美しいし、心も洗われます。最近、山登りをする若者が減っていることはとても残念です。もっと多くの人に、山村へ目を向けていただきたいですね。観光でも、必ずしも山村の良いところばかりを見せる必要はありません。鉱山開発によってハゲ山となった足尾銅山などは、環境教育には理想的な場所だと思います。

津上 日本人のアイデンティティーは、山や川などの自然によって育まれてきました。観光立国のキーワードは、「美しい日本」です。美しい日本の原風景を、ぜひ日本人一人ひとりが再認識していただきたい。ツーリズム産業として、ぜひそのお手伝いをさせていただきたいと思っています。都会の人には大いに田舎に出かけ、田舎の人たちと交流していただきたい。そして五感で山村や田舎の良さを感じてほしい。そのための旅行商品を、積極的に提供していきたいと考えています。

佐藤 私は山梨県北杜市役所から林野庁に出向しています。国の施策に地方の声を反映させ、地方自治体の取り組みを活性化させるうえで、このような交流人事はとても有効だと思います。平日東京で働き、土日に北杜市に帰ると感じるのが、田舎では20〜40代の働きざかりの人手が足りないこと。また活性化のアイデア、ノウハウがあっても、それを活用し、幅広く展開することが苦手なのです。都会の人には、田舎の何げないものが「宝」に見えることがあります。都会の人がもつノウハウを生かすことは、山村の活性化には欠かせません。

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