森林ビジネスの支援 森業・山業創出支援総合対策事業…詳しくは、http://www.mori-yama.net
 
都市と山村の交流支援 山村力誘発モデル事業…詳しくは、http://www.yamajikara.com
 
お問い合わせ 事務局 財団法人都市農山漁村交流活性化機構…mori-yama@kouryu.or.jp

 
都会と山村の交流が日本を豊かにする
 



岩手大学農学部准教授
山本信次さん




クラブツーリズム(株)国内旅行部
津上俊治さん




進行 キャスター
山岡三子さん


  立松 故郷の栃木で、地方自治体と一緒にIターンをすすめNPOをやっています。昔は帰農など本格的な移住が多かったのですが、最近は二地域居住やパートタイムの田舎暮らしなど、都市と田舎の両方に生活基盤をもつ、より柔軟な生活スタイルを望む人が増えてきました。都会の人には都会の人にしかできない田舎での役割があるので、何も本物の田舎の人間になる必要はない。むしろ今、地方が一番求めているのは、商品開発力や企画力、流通に対するセンスをもったプロデューサー、コーディネーター的な人です。NPOでも、そのような仕事をされていた方に、ぜひ定年後は田舎に来てくださいと呼びかけています。

山本 新潟ではIターンした人が地域のグループを組織立てて、地元の資源をアピールするさまざまな試みを行っています。日本橋へ雪灯籠をもってきて飾ったり、山の上から下まで信濃川沿いに花火をあげる計画を立てるなど、発想もユニークです。

山岡 ここまでのお話を伺って、山村の活性化のポイントは、新しい産業の創出と都市との交流にあることがよくわかりました。国や林野庁では、どのような政策を進めているのですか。

佐藤 林野庁では、森林・林業基本計画に基づき、森林の維持、持続的発展を目指す施策を進めています。その大きな柱となるのが、豊かな自然や文化、伝統など山村ならではの資源を活用した新たな産業の創出と、都市と山村の交流です。林野庁では、そのような取り組みを支援する「森業・山業創出支援総合対策事業」と「山村力誘発モデル事業」、さらにその一環である「山村力コンクール」を実施しています。応募や選定された事業を見ると、農山村のみなさんが地域活性化のために、実に様々な試みや努力をされていることがわかります。

山村が抱えている問題をプラスに転換すれば資源に(山本)

山本 和歌山県のかつらぎ町では、大阪の守口市の商店街との交流事業を行っています。商店街にアンテナショップをつくり、情報発信したり、農産物を販売したところ好評で、かつらぎ町の知名度が大いにあがった。大阪からかつらぎ町を訪れる観光客も増えています。

立松 徳島県の上勝町では、刺し身などの料理の飾りに使う枝や葉を「つまもの」として全国の料亭などに販売し、年間販売額2億円を超すビジネスになっています。80歳を超えるおばあちゃんが年収1,000万円稼いでいたりする。お金儲けは頭を使うので、ぼけ防止になり、病気にもならないそうです。

内野 原材料は野山に生えている樹木の枝葉ですが、そこに付加価値をつけ、ITを駆使して生産や出荷をきめ細かく管理しているのが成功の要因です。

佐藤 北杜市のあるNPO団体では、空き家となった古民家を改修して都市と山村の交流拠点として使う事業を展開しています。また北杜市では、豊かな地域資源を生かした長期滞在型の観光地を目指し、「リトリートの杜づくり事業」を展開しています。つまり、山林には既存の観光資源はもとより、農林業をはじめとする幅広い分野において、新たな可能性を秘めた山林地域特有の資源「宝」がたくさんあると考えています。

立松 空き家は、過疎化が進む農山村の大きな資源です。都会の人にとっては、改修すること自体も楽しみですからね。



山本 山村が抱えている問題をうまくプラスに転換できると、それは資源になるのです。地元の人にはやっかいなことでも、都会の人には面白いことだったりする。田舎と都会が、それぞれにないものに対して敬意をもって交流できるようになると、両者の関係は長続きします。岩手県の金ヶ崎町では、牧場跡地で茅を生産し、茅葺き技術者の育成にも取り組んでいます。冬の農閑期に作れるので効率的だし、高齢者の貴重な収入源になっています。

立松 茅はもともと雑草のようなものだから、農山村の人は大して価値を感じていませんでした。でも農山村以外では、茅は不足していて、需要は多いんです。茅葺きは、昔は結いという集落の互助組織で行ったのですが、今は結いが崩壊してしまい、茅を葺けなくなってきている。茅葺きの良さを見直す機運はあっても、農山村にそれを維持する仕組みがなくなってきているのが問題です。

山本 農山村の知恵や技術は、持続可能な社会を築くうえで欠かせないものです。この国の未来のためには、それらをきちんと次代に継承していかなくてはなりません。今、都会の人は田舎の良さを再認識し始め、意識が変わってきています。例えば、都会ではヘルシーな雑穀に人気があります。でも山村の人たちは、そのことをあまり知らない。山村のものが都会の人たちにとって、自分たちが思っている以上に価値があることに気づいていない。その意識を転換する必要があります。都会から農山村へ人がたくさん来て、「ここの暮らしはすばらしい」というポジティブなメッセージをたくさん受け取るようになれば、山村の人々の意識も大きく変わるでしょう。

都会に暮らす私たちにもできることはたくさんある(山岡)

山岡 アスパラクラブのアンケートを見ても、「田舎暮らしやスローライフに興味がある」人が67.5%、「年間に一定期間、里山で生活してみたいと思う」人が57%と、田舎暮らしに関心がある人は多いですね。

内野 それと同時に、「里山にめったに行かない」人が67.6%もいる。関心はとても高いのですが、行動に反映されていないのですね。またいざ田舎暮らしをするとなると、不安を抱えている人も少なくないようです。

立松 都会の人は、田舎や山村への関心やあこがれはあるけれど、きちんとした情報が伝わっていないこともあり、具体的にどうすればいいのかわからないのが現実だと思います。でも興味はあるのだから、山村側から興味に応えられるものをしっかり提示していく必要がありますね。

山村の持つ魅力を見直して暮らし自体を観光の対象に(津上)

津上 山村に住んでいる人と都会の人とでは、価値観がかなり異なります。それをどうマッチングさせていくかが、観光でも産業の創出でも、大きなポイントですね。

山岡 山村を活性化するには、農山村の人々の努力に加え、社会の構造や人々の意識を大きく変えていくことが必要だとのことでしたが、そういった意味では、国や行政の果たすべき役割も大きいですね。

佐藤 山村を活性化するための取り組みは、健康・福祉、教育、観光、環境、バイオマスなどさまざまな分野にわたります。そこで林野庁では、先ほどご紹介した森業・山業創出支援総合対策事業と山村力誘発モデル事業を統合するかたちで、20年度から他省庁や地方公共団体などと連携しながら、山村活性化の取り組みを総合的に支援する「山村再生総合対策事業」を推進していきます。



立松 日本が経済成長のなかで都会にばかり視線を向けているうちに、我々が見失ってしまったものは多いと思います。山村の暮らしや文化が、我々の衣食住や精神の根本にあることを忘れてはなりません。逆に山村の人たちは、自分たちの暮らしや文化、産物にもっと自信をもつべきです。日本の山村は、すばらしい宝をたくさんもっています。私たち一人ひとりが山村にもっと目を向けていけば、そこから新しい産業やツーリズムがきっと生まれてくると思っています。

山岡 農山村で生きる人々、都会に暮らす生活者、NPOや企業、地方自治体や国が、それぞれのレベルで山村活性化のためにできることはまだまだたくさんある。山村のもつ魅力や可能性は、とてつもなく大きいと痛感しました。

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