東京湾景を走り抜けるJR京葉線。海、工場、公園、マンション群、そしてまた海、車窓を流れる湾景は、朝、夕、季節や気候によっても様々にその表情を変える。夜の湾景は悲しいほどに美しい。
金属とガラスの高層ビル群で光り輝く「幕張新都心」が東京湾景の中にその姿を現すのは、東京駅から京葉線に乗り30分くらい過ぎた頃だ。その都市景観は、20世紀のはじめに近代建築の巨匠ル・コルビジェが夢想した『輝く都市』を髣髴とさせる。
あふれんばかりの太陽と緑のなかに光り輝く超高層ビル群が林立し、立体的に歩車分離された高架道路が変化自在に街中を走る。住宅街とオフィス街は、広大な公園によって明確に分離(ゾーニング)され、生活空間は効率よく機能的にネットワーク化される。街に無駄なスペースは一切ない。「住宅は住むための機械である」というル・コルビジェの思想が具現化された街、それが『輝く都市』だ。
京葉線「海浜幕張駅」を降り、街なかを歩けば、幕張新都心が『輝く都市』そのものであることをますます実感するに違いない。大企業のオフィスビルが林立する業務エリア、ホテルや商業施設群が集中するショッピング・エリア、博覧会やイベントが年中開催されているメッセ・エリア。それらは、駅前ロータリーを中心に明確にゾーニングされながらも中空歩道でネットワーク化されている。
そして、広大な「幕張海浜公園」を緑の緩衝帯にして、居住エリア「幕張ベイタウン」は海に向かってひろがる。このマンション街を歩いていると、一瞬ここが日本であることを忘れてしまう。それほどに街並はデザイン性豊かで、メルヘンチックで百花繚乱、異国情緒にあふれている。でも、外国人には、コンテンポラリーな無国籍の街並に見えるかもしれない。それはもうデザナーズ・マンション群のおもちゃ箱のなかを歩いているかのようだ。
この街には、赤提灯がぶらさがった一杯飲み屋も屋台も無ければ、ホームレスもいない。お洒落なオープンカフェはある。パチンコ屋も場末もなく、本来的に都市がもっている都市の暗部やいかがわしさは一切ない。「光」だけがあって「影」がない。
幕張新都心は、もともと海を埋め立ててできた街だ。20世紀の近代科学技術が生んだ海上都市といってもいいかもしれない。埋め立て工事は1973年に始まり、1980年に完成している。幕張海浜公園のオープンは1987年。まさにできたてのほやほや、机上に描かれた理想の近代都市がそのまま忽然と出現したかのようだ。これから「光」も「影」もある本当の街づくりが始まるのだろう。
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