包丁がまな板の上を乱れ飛び、鍋や皿が宙を舞う、迫力のキッチンパフォーマンス「ナンタ」。
2000年の日本初上陸以来、世界各国で大反響を巻き起こしてきたこの韓国生まれのミュージカルが
日韓国民交流年の今年、よりバージョンアップして日本にやってきます。
放送タレントの永 六輔さんに「ナンタ」の魅力をうかがいました。
 「ナンタ」は文句なく、楽しく、明るく、おもしろい舞台です。出演者の技術は、掛け値なしのエンターテイナー。そんな彼らがショーアップされたステージを繰り広げるのですから、世界各国で注目を集めているというのも当然です。特に若い人にとっては、現代風にアレンジされた「サムルノリ」のビートが小気味よく響くだろうし、笑いを誘う演出が、ちょっとやぼなところがあるだけにどこか親しみやすく、韓国という国をぐっと身近に感じることになるのではないか。「ナンタ」というドアからたくさんの若い人が、韓国へ入っていく、それは素晴らしいことだと思います。

 ただ、世界に受け入れられるものへと年々進化してゆく中で、朝鮮半島らしさ、韓国らしさというものが、薄れてしまっているように感じられます。韓国の優れたアーティストの方は、みなどこか民族的なものを残していると思うんです。だから、「ナンタ」にも、そんな要素をどうしても求めてしまう。「サムルノリ」のベースになっているのは、豊作を祈願する庶民の音楽である「農楽」です。たとえば包丁の扱いかたひとつに、農楽の伝統を生かした動作をほんの一部分でも取り入れたら、より奥行きの増したものになると思うんですが、どうでしょうか。

 小言の多い世代に属する僕としては、食べ物を切り刻んで散らかすことに、舞台とはいえちょっと抵抗があるのですが、考えてみれば韓国の食べ物は、チゲでもビビンバでも、何でも食べる前にかき回してしまう。いろいろなものを混ぜ合わせることで生まれる、韓国の食文化独特のエネルギーをそこに感じます。それが舞台からあふれ出てきたら素晴らしいですよね。

 包丁で物を刻む音というのは、共通体験としてだれもが共有している懐かしい音です。それがショーアップされるのですから、こんなに気持ちのよい舞台はない。きっと世界にまだまだファンを増やしてゆくことでしょう。でも、その次のステップとして、民族らしさも垣間見せてほしいな、と、舞台を繰り返し楽しませてもらった1人として思います。