北海道洞爺湖サミット開催記念 特別座談会 採録
先駆する温暖化対策
NEDO
環境
今日7日、北海道洞爺湖でわが国主催のG8サミットが開幕する。
最大の議題は、地球温暖化をはじめとする環境問題だ。
温暖化問題にそれぞれの立場から取り組んでいる4氏にお集まりいただき、
問題の現状、対策と展望、日本の果たすべき役割などについて語っていただいた。
進行は福島敦子氏。

分岐点に立つ人類


木本昌秀氏
東京大学気候システム研究センター 教授
1980年京都大学理学部地球物理学科卒。94年東京大学気候研究システム研究センター助教授を経て2001年同大学教授となる。2004年日本気象学会賞を受賞。

福島 サミットでも話し合われる地球温暖化対策ビジョンについて、いろいろな角度から掘り下げていただきたいと思います。まず科学的に見た温暖化の現状と将来の予測について……。

木本 昨年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、人間の活動によって温暖化が引き起こされていること、それが今後も進行していくことを事実上断定しました。しかも今後20年ほどは、人間の行動いかんにかかわらず気温上昇が続くと考えられています。温暖化の影響については、予測が難しい不確実な要素も多く、だからこそ人類が初めて直面する危機として対策を講じる必要性がある。
 現在、人間が排出しているCO2の約半分を植物や海洋が吸収すると考えられています。おおざっぱに言うと、CO2排出量を50%削減すれば大気中のCO2の増加が止まる計算。その実現が遅れれば遅れるほど気温が高い状態になります。


竹内敬二
朝日新聞社編集委員
京都大学工学部修士課程修了。1980年朝日新聞社に。和歌山支局、科学部、ロンドン特派員、論説委員など。90年ごろから温暖化の国際交渉を取材。

竹内 温暖化の議論が盛んに行われるようになったのは、ここ20年ほど。その短い期間で、IPCCの努力もあって科学的知見への信頼が高まり、人々の認識は大きく変わった。そして温暖化の深刻さを理解し、その対策に伴う様々な課題が見えてきた今、私たちは勇気を持って次のステップへ踏み出すか、あきらめて今のままの生活を続けるか、人類は分岐点に立っていると思います。

日下 わが国は、環境問題において先駆者となるべく、昨年「クールアース50」を提唱。それに基づき、「低炭素革命」ともいうべき日本のイニシアチブを「福田ビジョン」で発表しました。
 低炭素社会への移行を新たな成長の機会としてとらえ、社会の仕組みも変えていこうということです。
 60%から80%の削減を目指す目標の達成は、既存の技術だけでは不可能。さらなる技術開発はもちろん、政治、経済、教育などあらゆる分野の力を結集した総合的な取り組みを進める必要があります。

福島 新技術についてはNEDOが大きな役割を……。

村田 NEDOは、オイルショックをきっかけに、石油に代わる新しいエネルギーの開発、実証、普及まで幅広い研究を続けてきました。その結果わが国は、太陽光発電をはじめ、この分野で世界最高水準の技術となっています。
 温暖化対策という困難な問題を、むしろチャンスととらえて技術をテコに将来を切り開いていくべきです。NEDOも引き続きその中心的な役割を担っていく覚悟です。

木本「温暖化進行は科学的事実」
竹内「今人類は大きな分岐点に」

具体的な対策を


村田成二氏
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 理事長
1968年東京大学法学部卒、通商産業省(現経済産業省)入省。97年大臣官房長、99年産業政策局長、2002年経済産業事務次官。日本生命特別顧問を経て07年10月から現職。

福島 対策を具体化するためには、優れた技術を生かす社会システムが重要ですね。

竹内 昨年の太陽光発電の導入実績を見ると、ドイツは日本の6倍。コストの高い太陽光発電による電力を高く買い上げるという制度により普及を促進している。
 わが国に必要なのは、国内市場を大きくする仕組み。メーカーの競争力強化にもつながります。電力会社自身が太陽光発電の導入を進めるような仕組みが欲しい。

村田 また、自然災害などへの対応も考えると、家庭などで小規模な施設を普及させて、分散型のシステムを作ることも重要です。従来の設置補助の制度はより効果的な形に見直し、需要面から対応することも必要です。

福島 「福田ビジョン」には「排出量取引」の導入も盛り込まれましたね。


日下一正氏
内閣官房参与
1970年東京大学法学部卒、通商産業省入省。工業技術院サンシャイン計画本部、IEA(国際エネルギー機関)省エネ部長、経済産業省産業技術環境局長、資源エネルギー庁長官、経済産業審議官を経て電通顧問。

日下 この仕組みは、現在EUが試行錯誤しながら進めているもので、まだ課題もあります。ただ日本はほかの地域の実績を見ながら、石橋をたたいて渡るわけにはいかない。自ら新たな仕組みを工夫し、試し、その結果を世界に発信すべき立場にあるのです。

村田 「排出量取引」は、産業界にとっては確かにマイナスの側面もありますが、根本的に価値観を変える必要があります。制度の作り方にもよりますが、技術革新のインセンティブにもなり得ます。

竹内 一般消費者については環境税など、税制面の措置も有効。ガソリンなどは価格効果があまり期待できないと言われていましたが、近年の価格上昇で消費量は減っている。価格効果はあります。

日下 税制措置はCO2に価格を付けることが出来ます。財源確保もさることながら、例えばガソリン車からハイブリッド車へと、より望ましい選択肢を国民に提案する手段。「税制のグリーン化」を打ち出しているところです。

福島 日本が提唱する「セクター別アプローチ」。業界ごとに実現可能な削減量を積み上げるこの方法は、目標設定が甘くなるのでは、という懸念がありますが。

日下 積み上げられた削減量をそのまま目標値とするのではなく、必要な削減量とのギャップを埋める工夫が必要なのです。この方法は分野ごとに、より具体的な対策が立てやすく、政策の進行状況のチェックも容易です。「排出量取引」との二者択一ではなく、様々な選択肢の中で、組み合わせを含めて「ポスト京都」の枠組みを考えていかなければなりません。

木本 未曾有の問題に立ち向かっている以上、科学者の予測にも誤差が生じるのと同様、対策の成果も予想と異なる場合があるのは当然。その都度、調整する必要があると考えるべきです。

日下「日本は先頭を走る責務が」
村田「カギは新技術と強い意志」

日本のイニシアティブ


福島敦子氏
キャスター、進行役
津田塾大学卒業。NHKなどで報道番組を担当。近年は、経済番組、雑誌などで数多くの企業、経営者を取材。今年夏、新刊本『愛が企業を繁栄させる』(仮題)

福島 「ポスト京都」の枠組みについてはどうお考えですか。

日下 この取り組みが有効であるためには「世界全体で」がカギですから、G8に8カ国を加えた16の参加国の間で「クールアース50」構想への共通認識を形成することが大きな課題です。さらにわが国は年末まで議長国として、その成果をフォローアップし、来年のCOP15 (国連気候変動枠組条約第15回締約国会議)につなげる責務を負う。当面の世界経済の低迷への対応に足を取られること無く、将来を見据えてイニシアチブをとり続けたいですね。

竹内 各国の多大な苦労の末にまとめられたのが京都議定書。その長所は、「ポスト京都」の中でもしっかり生かすべき。

村田 議定書に付属する「京都メカニズム」の様々な仕組みは、一つの枠組みの中で生じるゆがみを是正し、途上国を巻き込んだ取り組みを進める上ではかなり有効です。より効果的な活用のため一層の工夫が必要です。

福島 海外への技術協力にあたっては、特許権などの知的財産保護と、国際貢献との間で、いかに折り合いをつけ、双方に利益をもたらす関係を築けるかという問題がありますね。

村田 それは非常に難しいが、重要なポイントです。NEDOの場合、途上国で新しい技術をまず試験的に導入してもらい、ニーズに合えばその国の政府の支援も得て商業ベースで展開するというプロジェクトを数多く手がけ、約130件の普及成果をあげています。

福島 最後にこれからの日本の取り組みへの期待やご意見を一言ずつ。

木本 日本はこの狭い国土の中で、「知恵」によって現在の繁栄を築いてきた。温暖化対策についても、その「知恵」を見せつける意気込みで臨みたいですね。

日下 達成のめどの立たない長期的な数値目標を掲げることには、強い反対もありました。しかし、ゴールを定めずにできることだけを積み重ねていくのでは、国民や産業全体を巻き込む大きな動きは生まれない。最初はゆっくりしたスタートでも、ゴールに向けて徐々に加速してゆけばいい。

竹内 「60〜80%減らす」という福田ビジョンの旗を、下ろさずに振り続けることがまず大切。この数字をまじめに考え続ければ社会も変わる。

村田 総論賛成・各論反対は世の常ですが、温暖化問題についてはもう議論している場合ではありません。国が具体的なビジョンをはっきり提示するとともに、国民も意思決定を早くする必要がある。技術の果たす役割は大きいが、同時に重要なことは、その技術を活用して温暖化を止めようとする強い「ウィル(意志)」です。

福島 新たな価値観に基づいて行動する、わたしたち生活者の覚悟が求められますね。ありがとうございました。

KEY FILE
【クールアース50】
「ポスト京都」の枠組みの方向性として提唱。2050年までに、CO2排出量を全世界で50%削減するという数値目標。

【福田ビジョン】
今年福田首相が発表した温暖化対策の枠組み。CO2排出量削減に関する数値目標を示すとともに、今秋から排出量取引制度を試行的に導入するとうたっている。

地球温暖化を防止し、持続可能な社会への実現に向け、日本はたしかな一歩を踏み出しています。
低炭素社会へ テクノロジーの進化はエコロジーに比例する。

NEDO技術開発機構は、「地球環境問題」の解決に向けて、エネルギー・環境技術の研究開発とその成果普及に取り組んでいます。
北海道洞爺湖サミットにおいても、自然環境にやさしく持続可能な未来を示す、「Cool Earth House」をコンセプトとした近未来型のエコ住宅を世界に提案しています。

「近未来型エコ住宅」

NEDO展示技術

太陽光発電システム

小型風力発電機

家庭用の可搬型リチウム蓄電装置

有機EL照明

高効率ヒートポンプ給湯機

家庭用燃料電池システム

都市ゴミの残渣等を利用したエコセメント

間伐材・廃棄木材利用木質材料

ハイブリッド断熱ボード

自然光を室内に取り込む 光ダクトシステム


212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町1310番 ミューザ川崎セントラルタワー http://www.nedo.go.jp/

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