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チャプレンの言葉

「陰口を気にすると、心穏やかではなくなり、平穏に暮らすことはできなくなる。」 
(旧約聖書続編シラ書28章16節) 立教大学チャプレン 香山 洋人

2010年8月2日掲載

聖書だからといって信仰に関する高尚な教えばかりが書かれているわけではない。特に旧約、旧約続編には歴史物語、詩、生活の知恵が多く記されている。陰口を気にすると心穏やかでないのは古今東西万人の共通感覚だからわざわざ聖書から引用する必要はないが、むかしの人もそうだったのかと親しみが持てて面白い。

この前後には、うわさや陰口についての言葉が並ぶ。しかし「シラ書」はなぜか現実的な解決方法しか示さない。鞭は肉を裂き舌は骨まで砕く、とか、戦争の死者より陰口で殺された人の方が多い、などと列挙しながら、結局、うわさを聞いても飲み込んでおけ、そして、うわさの渦中の人物に一度だけ真偽を問え、うわさ好きの餌食にならないよう注意せよ、と教えるだけだ。

けれども凡人はこれではすまない。なぜ人は陰口をたたくのかと嘆きつつも、誰が言ったなぜ言った、と詮索せずにはおさまらない。いやいや、だからやめておけ、と聖書は言ったのだ。それはもう一つの陰口となり、舌戦と舌禍を招くだけで、それでは平穏な暮らしを取り戻せないのだと。もちろんこれも聖書を引くまでもない。だれもが知っているはずのことに過ぎないのだが。

「チャプレンからの今週の言葉」2010年6月28日号より