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チャプレンの言葉

恵み深いコネクション 立教大学チャプレン マーク シュタール

2013年12月9日掲載

西洋の大学は伝統的に教会と深いつながりがありました。世界最古の大学は、牧師を養成する目的で教会によって設立されました。そして長い年月を経て、関連分野の学問が生まれていったのです。初期にはラテン語やギリシャ語を中心に教えていたのが、何世紀かの時間をかけて、数学、自然科学、社会学、そして商業にまでその教育分野が広まっていったのです。著名なオックスフォード、ケンブリッジ、ハーバード、プリンストンなどの大学も元々は伝統的な教会関連の分野を学ぶところでした。従って、これらの大学は少なくとも一つはチャペルを持ち、そのチャペルは、中心的な役割を果たしていました。これらの歴史ある大学を訪ねると大抵、今日も建設当時のままのチャペルを見ることができます。例えば、ハーバード大学には、1744年に建設されたホールデン・チャペルが現存します。もはや主たるチャペルとして利用するには小さすぎますが、今でも大学の聖歌隊のリハーサルなどで利用されています。

この伝統に則って建てられた最後のチャペルが、1911年にオハイオ州クリーブランドのケース・ウェスタン・リザーブ大学に建てられたアマサ・ストーン・チャペルです。偶然にも私の母校であり、私は学生時代、14世紀英国ゴシック様式で建てられたこの大きなチャペルの前をいつも通っていました。大学は建設時には当然、これらの時代を意識していたと考えられます。オックスフォードやケンブリッジ、ハーバードなどが大切にした伝統に倣いたかったのでしょう。おそらく、大学としては、学生に先人達の学問に対する姿勢を踏襲してほしかったのではないでしょうか。

このアマサ・ストーン・チャペルは主としてクリーブランドの有名な慈善団体(Flora Stone Mather Center for Women)からの寄付を元に建てられました。団体名になっている、フローラ・ストーン・マーザーという女性の父、アマサは、鉄道や橋の建設計画に投資し、巨額の富を蓄えました。そして彼女に、自分のコミュニティーが必要としていることに目を配り、家族の富を教会や教育の援助のために使うように教えていました。彼女は、同じような考えを持つサミュエル・マーザーという男性と結婚し、二人の長男サミュエル・リビングストン・マーザーもその伝統を受け継ぎ、富を蓄えるだけでなく、教会や教育のために自分たちの財産を差し出しました。

私が学生だったとき、マーザーの名はあちこちで使われていました。チャペルの名前だけでなく、学内のカレッジ名にもなっており、さまざまな建物にもその名を冠した名前がついていました(フローラ・ストーン・マーザー・カレッジ、マーザー・ハウスなど)。しかし、いつもそれは "mæˈðɚ"(マーザー)と発音し、"meɪˈðɚ"(メーザー)ではなかったので、私が立教に着任した2013年4月にあるものを見たとき、特にピンときませんでした。しかし、仮チャペルとして使われていた建物の2階に続く踊り場のプレートに「サミュエル・リビングストン・マーザーの長年に渡る海外宣教の支援を覚えて(英語表記)」とあるのを見て、にわかに興味を持ちました。このMather(メーザー)と私の母校のMather(マーザー)と何か関連があるのだろうかと思いめぐらしました。そして、やがてそこには関連があることが分かったのです。私の母校のチャペルの建設に最も資金援助をした女性フローラ・ストーン・マーザーの息子、サミュエル・リビングストン・マーザーは、立教大学のメーザーライブラリーの建設に資金援助をしていたのです。数多くの著名な大学の豊かな伝統は、ここ立教でも息づいているということです。立教大学の建築物を含めたキャンパス全体がその遺産を受け継いでいるといえるでしょう。そして、その遺産を次世代へと受け継ぐ使命を私たちは背負っているのです。

雑誌『立教』第227号より