7月1日掲載



江戸時代から続く老舗(しにせ)盆栽園「清香園(せいこうえん)」の一人娘として生まれ、幼少時より盆栽に囲まれた環境で育った山田香織さん(2000年経済学部経済学科卒)。現在は五代目として伝統を守りつつ、「盆栽=中高年の渋い趣味」というイメージを打ち破り、若い女性や外国の方にも気軽に楽しめる手法を、盆栽教室の開催、TV番組への出演や著作を通じて提案している。
「実は高校生くらいまで、家業が嫌で仕方がありませんでした。古くさいことをしているなとしか思えなくて・・・。それが変わったのは、18歳のときに父が連れて行ってくれた“超一流旅行”とも言えるフランスへの旅。ホテルをはじめ、観るものもすべて本物を体験させてもらいました。フランスの風土に根付いている豊かな感性や高い芸術性に打たれ、カルチャーショックを受けましたが、同時に、日本で18年間、盆栽の世界と接してきた私にも私なりの蓄積があるのではないかと気づかされたんです。大学時代は就職活動もして、民間企業から内定も頂いていたのですが、まだ男性社会の盆栽の世界で私が五代目にあたって女に生まれたのは、老若男女問わず、広い層が楽しめる盆栽を提案する使命があるのではないかと思い至り、跡を継ぐ決意をしました」。
大学時代、有馬賢治教授のゼミで学んだマーケティング理論が役に立っていると聞くが、具体的にはどのように生かしていったのだろうか。
「90年代の後半から、世の中の流れがガーデニングと、日本回帰の和ブームになっていたんですね。これは盆栽を広く売り込む絶好のチャンスだと思いました。まず『おじいちゃんの趣味』というイメージを覆すため、逆のベクトルとして若い女性をターゲットとして考えたんです。そのためには、自分が1歳でも若いうちに始めたほうがインパクトがあると思い、在学中の4年次に『彩花(さいか)盆栽教室』を始めました。『彩花盆栽』というのは、父の考案した新しい盆栽のスタイルで、枝ものと草ものを寄せ植えしてひとつの景色を表します。NHKさんや雑誌などに取り上げてもらったことでメディアの影響力の強さを実感しましたね。プロモーション意識は高く持つべきだと、売り込める機会はないか、常にアンテナを張るように心がけています」。
明確な経営戦略で新たな道を模索し続ける山田さんに、将来の目標を聞いてみた。
「日本にはさまざまな伝統工芸があります。盆栽だけにこだわるのではなく、そういったものとコラボレートして、次世代〜22世紀の床の間といった新しい形を作り込み、足もとをしっかり固めてから、世界へ打って出ようと画策中です」。
古きよきものを新たな感性でアレンジし、日本の原風景、巡る四季を鉢の中で表現する彩花盆栽を多くの人たちに伝えたい。山田さんの時代を見据えたチャレンジは、これからも続いていく。
「立教」第201号掲載