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フォーカス立教

書棚から広がる世界 1988年経済学部卒業 フリーカメラマン 薈田 純一

2013年12月9日掲載

650ページの分厚い本の約三分の一を占める書棚の写真。この一冊に作家・立花隆氏の蔵書約10万冊が収められている。一見、書棚をそのまま撮ったように見えるが、一段ごとにレーザー墨出し器を使って精密に撮影し、コンピューターで元の書棚のようにつなげていくという過程を経ている。切ったシャッターの数は1万回以上。一冊一冊、背表紙の文字までくっきりと読み取ることができるのは、この気の遠くなるような作業の結果だ。写真家の薈田純一さんは、「書棚の地図を作っているような感覚です。棚ごとに“遠近”が設定された写真をフォトモンタージュするようにまとめています」という。

  • 『立花隆の書棚』より
    「階段一階 東西南北と東棚」

新聞記者を目指していた学生時代、報道写真に興味を持ち、通信社にカメラマンとして勤務した。言われたものを撮るだけではなく、“撮りたいものを撮るため”に数年で独立。「ずっと気に掛かっていた題材がありました。“偶景”と呼ばれていますが、例えば僕は鉄棒を触った手の匂いを嗅ぐと、小学生のころのことを思い出します。当時の校庭の風景、楽しかった休み時間のことなど…。偶景となる物や景色は人それぞれですし、そのものを撮影することはできないのですが、忘れていた記憶を呼び起こすような写真が撮りたい」。書棚に関心を持ったのも、その延長だという。「書棚は本を並べるためだけのものではありません。見せると同時に隠す場所でもある。本の間からへそくりが見つかったりしますよね。それから、本を読んだ当時の気持ちなども隠れているんです。他人の書棚に自分も持っている本を見つけて、さまざまな記憶がよみがえったりもする。書棚は、偶景につながる端緒なんです」。また、書棚は所有者のことを雄弁に語るという。「書棚には、仕事の本や趣味の本などいろいろなものが納まっているので、その人の公の顔もプライベートの顔も見せてくれるんです」。薈田さんが書棚から受け取るイメージは無限大。薈田さんの世界も無限に広がっていく。

雑誌『立教』第227号より

『立花隆の書棚』

著/立花隆 写真/薈田純一
中央公論新社/3,150円(税込)
650ページ
ISBN 978-4-12-004437-3

薈田 純一(わいだ・じゅんいち)
1988年経済学部卒業、フリーカメラマン

1988年 立教大学経済学部経営学科卒業
1989年 外国通信社に勤務
1994年 フリーカメラマンとして独立
2005年 第25回新風舎出版賞 ビジュアル部門優秀賞「サンクチュアリ」受賞